70連合ダンジョン2
風が吹き雪が舞い散る雪原へと降り立つ。
周囲には何も存在してなく、ただ雪が静かに降り注いでいる。
そんな雪原の真ん中に佇むのは、女王の住まう宮殿。
日差しが差し込めば、キラキラと輝いて見えるだろう。
現在は厚い雲と雪に覆われ、不穏な空気を醸し出している。
「うぅ、寒さに弱いからこれだけで凍える…。」
「中に入れば、風がなくなりますから進みやすいですよ。行きましょうか。」
キリングドールが優しい言葉をかけてくれる。
彼女は、色白で金髪が印象的な人形と見間違えるような女の子。
ファッションは黒ベースのゴシックドレスのような感じだが、その素材はグリフォンの羽や皮・若い龍の皮や鱗をふんだんに使い、防御性能や耐性を高いレベルで実現してるらしい。
名前と違って、仲間にはとても優しい女の子なのだが…。
職業は暗殺者で両手の短剣で苛烈な連撃を仕掛けて、服に隠した暗器で急所を的確に攻撃してくる猛者だ。
経験者は慣れてるのか、さっさと移動していく。
メイン盾として期待されてるので、急ぎ先頭へと走っていく。
室内に入ると、いきなりメールが届いた。
「メール来ましたか?それ、見ないでいいですよ。全員に届きますから。」
キリングドールが声をかけてくる。
「へぇ、どんな内容なの?」
「女王からで、侵入した愚か者を氷の城のオブジェにしてやるって内容です。」
「それ、どこのホラー?」
「メールを確認する隙をついて襲ってきますよ。気をつけて!」
小さな踏み切り音が聞こえた瞬間、上から氷で出来た騎士達が跳び降りてくる。
「そういうことね。」
メールの確認のために、大半の人は利き手を使って操作する。
その隙に攻撃してくるのだろう。
初見殺しだが、2回目以後にはバレてるから大して怖くもないってことか。
手早くヘイトオーラで注意を引き付ける。
周囲は慣れてるのか、降りきる前に遠距離で叩き落としたりしている。
みんな頼もしくなって…おじちゃんは嬉しいよ。
「では、進んでいきましょう。」
先頭には、他の盗賊職が数名。その後ろに私達盾職が並ぶ。
次の部屋に到着したとき、中央にこれ見よがしに宝箱が置いてあった。
「あの宝箱は罠ですが、引っ掛からないと先に進めません。
床が開いて落ちるので、気を付けてください。
落ちた先は、モンスターハウスとなってます。」
手が込んでるな…。
「落下距離は?」
「大体3m位ですね。身体能力が上がってるので、特に問題はない距離だと思います。」
「オッケー、んじゃオーリ。ミニ達と殲滅を頼むわ。」
「了承した!」
リアルなら骨を折ることもありうる高さだが、ゲームなら問題ない。
「では、開けますよ。」
盗賊君が皆に言ってくる。
すぐに床がパカッと開き落下する。
下に居る沢山の騎士や魔術師や弓職が狙ってきているのを視認した瞬間、ヘイトオーラを盾達が入れて仲間の被弾を少しでも下げていく。
ねちっこさが結構上がってきたな。
1秒くらいの落下の最中に、私達のすぐ脇をミニの熱線が通りすぎ殲滅していくが、下からの一斉射撃で傷を負ってしまう。
って、しまった!氷の宮殿だった!
失策を止めることはできず、蒸発した水蒸気によって周囲には深い煙が立ち込める。
「すぐに散らせ!オーリのブレスでも良い!」
ほっといても氷結するのだろうが、オーリのブレスや巻き起こる風によって、周囲の視界が確保される。
着地の直後に脚の痛みに耐えながら体制を調える。
私の失策のせいで数人が脚を挫いてしまったようだが、手慣れているので処理を進めていく。
「すまない、ここではミニの熱線は使えないな…。」
ミニ達もピギャーと鳴いて申し訳なさそうにしている。
「大丈夫です。最初の時に比べたら軽微ですよ。」
初回であんな罠を食らったら致命的だもんな…。
段々とダンジョンに殺意が込められてきたな。
いや、これまでも何回も死んできたが…。ここまで性悪なのは無かったな…。
だが、逆にそういうのが楽しみだと思えるのはゲーマーだからだろうか…。
面白くて顔がにやけてくる。
70ダンジョンは私の想像を上回ってくる。
メールで気を引いて奇襲してくるなんて、想像したこともなかった。
この次はどんなことをしてくるだろうか?
本日も誠にありがとうございます。