ボスを討伐してみよう。
ポイントを通り抜けた先は、森の中にぽっかりと広がった円形の場所だった。直径は100mくらいだろうか?
奥の方からノシノシと大きな犬がこちらに歩いてくる。
私は、手で待機の指示を出しながらまっすぐ進んでいく。
相対距離10mくらいだろうか。
皆と私の距離は15m位離れている。
怒り状態になったとしても、これだけ離れれば大丈夫だろう。
大きな犬が吠えるモーションをした。
「今のところ、なにも聞こえないぞ!」
皆にわかるように伝える。
周囲から、2匹の犬が出てくる。
多分さっきの遠吠えで呼び出したのだろう。(聞こえない)
運営はなぜウルフと名付けなかったのか疑問だ。
まぁ、そんなことはどうでもいい。呼び出した数が少なかったのが幸いである。
これは、誰のLUKだろうか?私以外は確定である。
この数なら、アスタールと天音で問題なく処理出来るはずだ!
私は手に持っていた剣を地面に突き刺し、素早くボックスの操作をし、鉄の固まりを取り出す。
1個20kgが20個で400㎏
ドカドカと音をたてながら私の周囲に散乱する。
全く聞こえないがな。
全て縄で結んであり、最終的に一本のロープになっているものを私の腰に括りつける。
「VIT特化の底力舐めんな!」
さらに、ボックスの操作をしながら最前線である私に向かってくるグレートドック達へと素手のまま走り出す。
「これで、1ダメージ!」
殴り付けた私の手元にワイヤーが出現する。
爪による攻撃を左手の籠手で受ける私。予想通り1である。
これが崩れたら、戦術が崩壊していたところである。
どうでもいいが、犬は右利きだったらしい。
これがジャブなら左利きか?どうでもいいか。
急所だけは避けなければ!
胸や頭部は結構厳重に守られてるはずである。
私に攻撃してくるボスの首に、ワイヤーを巻き付ける。
ブルードックも攻撃してくるが無視だ!
器用度(DEX)がどんなに低くても1秒あれば首に巻き付けられるように練習して良かった。
キーリングも、物によっては数秒かかるからな!
本格的なカラビナとか、こんな急ぎの場面では使えないしな。
しっかり締めたつもりになっても、油断はならない。
私は様々なステータスがゼロなのだから!
「運良く外せると思うなよ!そんなこと想定済みだ!」
ここまでくるとボックス操作は出来ないと想定してたので、ウェストバッグからキーリングを取り出す。
DEXが低い影響で落としても良いように20個入っている。
犬の手足は縛れないということも想定しながら(運も器用度も無いため)キーリングをあちこちにつけて回る。
たった5箇所止めるだけで13個落とすとは、どれだけ不器用なんだろうか。
そのワイヤーをキーリングで私の体のあちこちに固定していく。
「今だ!私が止めている間に削りきれ!」
まずは周囲のブルードックへと一斉に攻撃を始めるアスタールと天音。
ソルティも魔法で攻撃してるのか?
何か詠唱しているようである。
ほんと、調べなかったから回復職の攻撃がわからん!
こんな、長い間ほっとかれたのは信頼されてる証だと想像しよう。
ワイヤーを腕に巻き付け、引っ張られる痛みを堪えながらグレートを押さえ込む。
まあワイヤーが肉に食い込むので継続ダメージになる以外たいした問題ではない。
どうせ、私のVITはトップだからダメージ1だからな。
ブルードックを片付けたのか、一斉に攻撃を仕掛ける皆。
すまないが、見てる余裕などはない!
「お前は私を見てればいいんだよ!」
地面に刺した剣に手を伸ばし、殴り付ける。
ヘイトがないから、こうして精一杯止める。
なりふり構っていられない!
暴れるグレートドックに引きずられそうになるのを、腰にロープでくくりつけた重りにより食い止める。
400㎏もあるから、そうひょいひょい移動できない。
皆、距離には注意しているようである。
ここまで、想定内だ!
もう少しで咆哮がくるはず!
朦朧としたとしても、全身に巻いたワイヤーにより抜けれないはずだ!
痛みに耐えながら、必死に止める。
初期の頃から、こうしてばかりな気がする。
いつになったら脱却出来るのだろうか。
そんなことを考えていると、グレートドックの雰囲気が変わる。
目の色が赤くなり、体の大きさが少し大きくなった気がする。
怒り状態になったようだ。
「体がでかくなるのは好都合、もっと食い込むからな!」
大きく息を吸い込むのを見た瞬間、来るのがわかった。
「…。」
さっぱり聞こえない。
いや、多少聞こえるが問題ない。
ビリビリとした空気の振動が伝わるから咆哮してるのだろう。
「よし、ハマった!」
これで、完勝出来るはずだ!
心に余裕ができた私は回りを見る。
ソルティや天音は問題ない、元々遠距離だから範囲外だ。
MPポーションを飲んでいるのが目にはいる。
10近くLvが上なのを討伐してるから、MPが足りないのだろう。
アスタールも普通に下がってる。
目が赤くなってから数秒あったから、離れられたのだろう。
STRに多めに振ってるとはいえ、私と違ってまともなAGIだろうからな。
「もう少しでいける!頑張ろう!」
そこからは、問題なく討伐できた。
攻撃力が上がったのか、ダメージが2になった位の変化があったが微々たるものだ。
グレートドックが断末魔の叫びをあげたのだろうが、聞こえない。
その身を横たえたのを確認したあと、私も倒れ伏した。
「もー、無理。こんなんやってられるか!」
どうにかヘルメットやイヤーマフ、耳栓をはずした私の隣に家族が歩いてきた。
「お疲れさま。」
「不格好だけど、カッコ良かったよ。」
「さすが親父。誰もできないことをやってのけるぜ。」
私だってやりたくてやったんじゃない。
だが、家族の笑顔は一番疲れがとれると思った。
笑われるの間違いではないと思いたい。
ちゃんと、討伐できました。
皆様の想像をどれくらい斜め上の回答で答えられたでしょうか?
本日も、まことにありがとうございます。
ちなみに、これが掲載されるとき
7話出来上がっております。
20話位作れたら、一挙10話くらい大放出したいな~
できたらいいな~