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魔法と神とそれから人  作者: 穏乃
校内戦編
9/33

9話 石川瑞季

「―――っ」

 二つの銃から撃たれる魔力の弾丸はまっすぐウチの体を目掛けて放たれる。その攻撃をかわせば次の弾丸がウチを襲う。

「くっ―――」

 右腕にはめられた魔導器が強く光り、同時にウチの膝に魔力が集まる。そのまま膝にたまった魔力でみゆみゆの放った弾丸を蹴り弾く。二発、三発と弾はウチに当たることなく消滅する。

「みゆみゆやるなぁ」

「みゆみゆ…?」

 みゆみゆは私の言葉に反応するも、攻撃の手を緩めることはなく私に対して何発も魔力の弾丸を放ってくる。

「泣かしちゃったら、ごめんなさい」




「…」

 動きが読めない。会長は私の放つ弾丸を全て魔力で弾く。ただそれだけで、会長自身は私に対して何もしてこない。まるで、いや様子を見ているとしか思えないほどに。

「だとしたら、少し本気を出すべきかもしれないわね」

 二つの銃からほぼ同時に放たれた二つの弾丸、会長を狙う弾丸の中に混じって会長とは全く別方向にその二つの弾丸を放つ。

「―――っ!?」

 その弾丸のうちの一発は途中で向きを変えて私の銃から放たれている弾丸とは全く別方向から会長の頭を打ち抜く。

「…成る程、それがあなたの魔法なの」

 不意打ちで頭を撃ち抜いたにもかかわらず、会長は笑みを浮かべながらこちらに顔を向けてくる。まるで何事もなかったかのように。だが、えみからも今の攻撃が少しは効いたと思えるような表情は読み取れた。

「やれる―――」

「と思ってるなら甘々だよ?」

「え?」

 ―――有り得ない。私の魔法で撃ちだした弾丸は確かに会長を撃ち抜くはずだった。だがそうする前に弾は消え去っていた。私が会長に対して真っ直ぐ撃っていた弾丸と同じように。

「な…んで」

「みゆみゆの魔法、なかなかに面白いね」

 そういいながらついに会長は攻撃するためか、私に対して走って近づいてくる。私はそれを後づさりながら銃を撃ち続ける。

「そこ…?」

 と言いながら会長は私に向かって拳をふるう。だがそれは私の右手につけていた手袋をかすめる。

「(外した…?)」

 かすめ、手袋が破れるのを確認すれば会長は再び私との距離をとる。

「そっか、Aね」

「あ」

 その言葉で今の攻撃が私を狙うものでなく、私の手袋の中にあるものを確認するために破る行為であったことに気付く。会長の思惑通りなのか私の手の甲にあるそれが露わになる。

「あれって…」

「あの子もなの!?」

 私の右手の甲にあるそれを見て、観客の色んな人が騒ぐ。観客たちががやがやと騒ぐ中で会長は再び手に魔力を宿す。

「びっくり、まさか貴女も聖字(ルーン)を持っていたなんてね…」

 加速(ジ・アクセル)、私の右手の甲に刻まれた『A』の聖字(ルーン)。その魔法はその名の通り加速。自分の肉体の速度を加速させたり体感速度を加速させることができる。この魔法があったからこそ私はさっき、会長めけて弾を撃ちながら気づかれることなく二発弾を撃つことができたのだ。そして一発をずらして撃つことで弾を跳弾させて全く別方向から会長に攻撃することができた。

「成る程成る程、やっぱりか。時間を止めるか加速するかどっちかとは予想してたけど、大当たりっぽいね」

「えっ!?」

 会長は不敵な笑みを浮かべる。

「なんで、想ってることがばれたのって顔してるね?」

 まただ。私の心を見透かされているような発言を会長は繰り返す。

「顔に描いてあるよ」

 そういって会長はついに手袋ではなく私自身に攻撃を仕掛けてきた。蹴り、手刀。とても二つ違うだけの女性とは思えない動きで私に攻撃を繰り返す。私も自分自身の体感速度を加速させることで会長の声撃一つ一つを見極め、銃でガードを繰り返す。

「(守ってるだけじゃだめだ)」

「攻めなきゃ…って?」

「くっ」

 また心を読まれる。

「それが貴女の聖字(ルーン)の力ですか…」

 石川瑞季、生徒会会長なだけあって神木和音先輩同様データバンクに全ての情報が記されていた。その記録によると。

「魔法の名前は独心術(ジ・リードリーダー)、心を読む魔法。本当に読まれるまで半信半疑だった?」

 ことごとく会長は私の心中を読み、言葉にしてくる。少し面倒だけど、もうあれしかないみたいだ。

「さて、みゆみゆ。少し取引を―――」

 攻撃を繰り返す会長の攻撃の手が止まる。

「ずるいなぁ、何も考えずに撃つなんて。今のはちょっと、痛かったよ?」

 

「もう、話聞いてる?」


「聞こえてないのかな?」


「あだっ…撃つしか考えてないから軌道読めないんだよね」


「…」


「仕方ないかぁ」


「これならどうかな?」

「なっ!?」

 私は無心でただひたすら弾がどこに当たるのかなど考えずに跳弾をさせていた。それにしびれを切らした会長は私の懐に一気に入る。

「これは―――」

「『心の炎』って言ってね。強さは、使用者の精神によって変化する」

 その刹那、私の視界は赤い炎によって染まってしまった。




「ん…」

 目を覚ますとそこは会場、ではなく学校の第二保健室だった。普通の学校ではなく魔法を訓練する学校なので、保健室は一つでは足りず、そのためにこの学校には保健室が三つ用意されている。

「起きた」

 私が目覚めるのと同時に保健室に入ってきたのは凪木と梓だった。梓も神木先輩との戦いで保健室に運ばれていたのだが、頭に包帯、頬にガーゼを張っている辺り完治はしていないのだろう。

「…試合どうなった?」

「起きていきなりそれか」

 梓はあきれ顔で私の方を見てくる。

「優勝は三年訓練科、俺達の完敗だよ」

 完敗、優勝。私はあれから校内戦が終わるまで寝ていたのかと思うと正直驚いている。私の魔法、加速(ジ・アクセル)はかなりの集中力がいるとはいえ、そんな何時間も寝てしまっていたとは。

「それにしても、お前まで聖字(ルーン)持ちだったなんて聞いてないぞ!」

「え?あ、あぁ…なんというか隠しておきたかったというか…」

 ちょうどそのことを考えていたので少し焦ってしまった。またあの人に心を読まれてしまったのかと。

「そんなにウチ普段から心なんて読んでないよ」

「その発言が読んでるように見えるんだよ」

「瑞季ちゃん天然?」

「天然ってあれか、天然水か?」

「…ベルは黙ってて」

 少し賑やかそうにあとから保健室に入ってきたのは、私が先程対戦した石川瑞季。そして神木和音。それから銀髪の女性と蒼色の髪の女性。

「やっほーみゆみゆ、具合はいかが?」

「…どうも」

「それはよかった」

 今のも心が読まれたのだろうか、会話が成立してしまっている。

「それはそうとみゆみゆ、さっき話しし損ねたんだけどね。お願いがあるの」

「し損ねた…?」

 そういえば無心で銃を撃っている時、会長から何か言われていた気がする。

「えっと…」

「三人とも対校戦に出してあげる」

「っ!?」

 それは私だけでなく凪木や梓までもが驚いていた。当然だ、私たちは負けた側なのに訓練科の人間なら誰もが憧れる対校戦に出してもらえるチャンスがあるのだ。

「取引って言ってましたよね…」

「お、覚えてたみゆみゆ?」

 会長はニコニコとまた読めない表情で口を開く。

「三人が生徒会に入ってくれたらだけどね」

 その瞬間、神木先輩の氷結(ジ・アイス)が発動したのかと思うくらい、空気が凍りついた。


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