4話 医療科
4月16日、入学式から約一週間たった今日の日は校内戦が行われる日だ。俺、有坂梓とそして屋上での一件以来つるむようになった澪田深雪、凪木修星とともに俺たちは校内戦に参加することを決めた。あの時に生徒会長である石川瑞季に言われたことがずっと頭に残っていて、思い出すたびにイライラして仕方なかった。それだけじゃない、副会長の神木和音。俺の魔法の中でも最大の火力を持つ聖剣ならざぬ焔の翼をいとも簡単に止めやがった。あいつらを絶対に倒すためにも、俺たちは今日の校内戦に全力で挑む。
校内戦はトーナメント形式で行われ、全学年が参加することができる。俺たちは一年訓練科の代表として今回の校内戦に参加するのでトーナメント表には一年訓練科、と表記されている。
「あの人たちって三年訓練科だよね」
澪田は石川瑞季と神木和音のいるであろう三年訓練科をトーナメント表から探していた。
「ふーん」
凪木は一年訓練科の横にある三年訓練科と書かれた文字を指さしながら笑みをこぼす。二回戦。一回勝てばあいつらと戦うことができる。だが驚くべきはそれだけではなかった。一回戦の相手。
「…一年医療科って」
医療科。本来医療科とは医療関係の魔法を学ぶ学科で。学年関係なしに校内戦事態に参加することは滅多にない。にも関わらず、一年生の医療科が校内戦に参加しているということには驚かざる得なかった。俺たち訓練科ですら三人集めれたのが偶然みたいなところがあるのに、医療科が魔法持ちの新入生を三人集めてきたのだ。おそらく参加申請を受け取った学校側も驚いただろう。
「同じ一年か」
「まさか新入生に六人も魔法を持つ奴が入学するなんてな」
凪木の言うとおりだ。このユグドラシル学園に入学する前から魔法を持っている人間はかなり限られている。俺のように聖字を持つ人間か、もしくは魔法の研究機関に所属しているか、誰かから譲ってもらったかだ。
「そういえばお前らの魔法ってどうやって手に入れたんだ?」
澪田と凪木。この二人も魔法持ちだ、つまりどうにかして魔法を手に入れたのだろう。いずれかの手段を用いて。
「俺は…その、貰ったんだよ。知り合いから」
凪木は少し歯切れを悪くしながらも答える。貰い物、というのは使っている魔導器をもらったっということだ。凪木の使う魔法は雷。貰い物にしてもかなり長い間使いこまれているんだろう。俺の炎を防ぐほどのマグネット・フィールドを張ることができるのだ。あれだけのマグネット・フィールドを張れるのだ、基礎魔力もかなり高いんだろうな。あの時聖剣ならざヌ焔の翼神木とかいう副会長に止められていなかったらどうなっていたのだろう。聖剣ならざヌ焔の翼は俺の中では最強の魔法。あの時の凪木はまだ本気を出していなかった。本気を出した凪木ならば、俺の攻撃を受け止められていたのか。そう考え始めるとこいつの戦闘能力が未知数で、恐怖すら感じる。
「澪田はどうなんだ?」
俺の思考を掻き消したのは凪木だった。そうだ、こいつはまだ魔法すら見せていない。本当の意味で未知数なのはこいつなのかもしれない。
「んー。今日の校内戦で分かるよ、きっと」
学校には演習場と呼ばれる魔法の実技をする大きなドームが存在する。そこは魔法障壁が張られており、ドームの外への一切の魔法での鑑賞ができない仕組みになっている。そのためいつも校内戦はここで行われているらしい。校内戦は三人一組で一人ずつ戦い先に二勝した方が次の戦いに進むことのできる勝ち抜き制。オーダーには俺、澪田、凪木と書いておいたためこの順番で出ることになる。
「最初の相手は…」
医療科一年二組、竜宮寺刹那。俺の前に立つ男がそいつの名。演習場には会場席が存在し、多くのギャラリーが集まっている。一年生の魔法持ち同士の戦いだ、自然とギャラリー-が集まるのは当然のことかもしれない。その男なのだが、アホ面という表現以外にできることがない。髪の毛はぼさぼさ、制服はダボダボ、おまけにずっと口を開けたままで今にも鼻水をたらしそうな奴だ。
「あはは、よろしくー」
「…ちっ」
調子が狂う。
「それではこれより校内戦第一試合の第一クオーターを始めます」
始まりの放送が流れた種運管俺版木手に黒い炎をまとわせながら竜宮寺に向けて大地を蹴る。




