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魔法と神とそれから人  作者: 穏乃
校内戦編
25/33

25話 向井和輝

「あのっ!」

「…何?」

 試合が終わったからか、徐々に舞っていた砂は消えていき悪かった視界も良くなりお互いの控室に戻ろうとする最中、深雪はシズに対して声をかける。それに対してシズも返事をしながら振り向く。

「その、3年前の件なんだけど…」

「…」

 シズは表情を曇らせる。

「本当にごめんなさい」

「…そっか、深雪の重みになってたんだね」

「え?」

 意外な反応に深雪は肝を抜かれたような表情を見せる。

「私は確かにAの聖字(ルーン)を受け継げず家を出ていった」

 シズはでもね、と続ける。

「深雪を恨んだことなんて一度もないよ…?」

「…」

 その言葉を聞いて呆然としている深雪に隣りにいた刹那は持っていたハンカチを渡す。

「良かったわね」

「うん」

 深雪はハンカチを受け取り、無意識に流れていた涙を拭く。

「なーにいい話風に終わらせようとしてんだっつーの」

 爆風。それ以外に比喩しようのないほど大きな爆風がさっきまで深雪達の戦っていた会場を飲み込む。

「トレス校の恥さらしめ」

 爆発で砂すらも消滅した更地に、観客席から飛び降りてきたのはトレス校の制服の少年だった。

「…リッター」

「かっ、これだからゴミは。で、おれの対戦相手は誰なんだーーー」

 リッターと呼ばれた男がその後の言葉を紡ぐことはできなかった。爆風で一瞬で更地となった会場は今度は一瞬で一面が氷の世界へと変わってしまったからだ。

「私だ」

 白銀の世界に一人、白銀の少女がそこに立っていた。

「神木和音だ、首を洗って待っていろ」




「リッター・オラージュ、トレス校の一年。データはないけど、見た感じ爆発系の聖字(ルーン)魔法みたいだね」

 控え室に置かれているパソコンを使い琉依はトレス校の選手データを開きながらひたすらキーボードを叩く。

爆撃(ジ・エクスプロード)ってところかね」

 和音は苛立ったような態度を見せながら控室の壁にもたれかかる。

「あれだけの一撃、かのっちょ大丈夫なの?」

 怪我の具合もあるのか、椅子に座り凪木にもたれかかりながら和音の方をちらりと目を傾ける。

「無理だろうな。避けるのも無理、防ぐのも無理」

 和音のその言葉に控え室の空気は一気に重くなる。

「だが、あいつなら…」

「…かずっちょ」

「ああ」

 控え室の時計を確認し、時間なのか和音は控え室を出ようとする。

「和音先輩、頑張ってください!」

「負けたら承知しないですからね…!」

 ベルや刹那の言葉をしっかりと受け止めれば和音はそのまま控え室の扉を締める。会場に続く廊下を歩いていき、会場へと到着する。会場は先ほどとは違い、岩場のような場所に変わっていた。そして反対側の方からリッター・オラージュが会場に入ってくるのが見える。

「へへ、相手が誰だろうとぶっ潰すぜ」

「…そうだな」

 その一瞬で和音の声色が変わった。いや、声色だけでない。白かった髪の色が徐々に暗くなっていき、目つきも先程に比べてかなりきつくなる。

「5分だ、それでこの試合は終わる」

 和音は中指を立てながら何もない空間から剣のような物を生み出す。




「さーて、みんなには話しておいてもいいかなぁ」

 琉依の肩を借りながら瑞季は生徒会のメンバーとともに観客席に足を運んでいた。

「かずっちょって、誰なんですか?和音先輩のことじゃないですよね」

 刹那が話を切り出す。

「うん、かずっちょ。向井(むかい)和輝(かずき)。私やかのっちょ、琉依の同期の魔道士なんだけども3年前のある日彼は大怪我を負ったの」

 瑞季は観客席にゆっくりと腰を下ろせば淡々と話を続けていく。

「怪我はまぁ治ったんだけどね、意識が戻らなかったの。脳の一部が損傷して意識を表に出すことができなくなってしまったらしいんだけども。だからかのっちょはかずっちょの意識を助けるためにかずっちょの意識を自分の中に取り込むことで、かのっちょはかのっちょでありかずっちょでもある二重人格になっちゃったんだよ」

「じゃあ校内戦で見たあれは…」

 梓は校内戦で和音の試合の土壇場で和音の様子が豹変したことを思い出す。

「かのっちょはセプティマ学園ナンバー2、じゃあかずっちょは学園の中で何番でしょう」

 琉依はその質問にくすっと笑いをこぼす。

「答えはね…」




「お前は何者だ」

「俺か?俺はな…」

 加速(ジ・アクセル)を使えるのは澪田深雪だけだ。なのに加速(ジ・アクセル)を使ったかのように目に見えない速度で和音だった彼はリッターに斬りかかる。

リッターは間一髪のところでその攻撃を躱す。

「俺は向井和輝(、、、、)、セプティマのナンバー1だよ」

 リッターは自分の目の前に幾つもの魔力の塊を生み出す。それは形を保てばそのまま向井と名乗った彼に向けて放たれた。無数に放たれ、地面に触れれば爆発する魔力の塊を彼はひたすらに躱していく。

「くそ、どうなってる。俺の魔法をこんな簡単に躱すなんて…」

「それが俺の魔法だからだよ」

 リッターの手から放たれた先ほどとは比べ物にならない大きな魔力が上空から向井に向かって放たれる。向井はその魔力に向かって飛び上がる。その瞬間向井の左目に『K』の文字が浮かび上がる。

瑞王剣(ずいおうけん)!」

 大きな魔力は向井を飲み込むこと無くそのまま真っ二つとなり地面へと降り注ぐ。地面に触れた瞬間爆発するもその爆風はそこまで大きくなかったのか向井はそのまま地面に足をつく。

騎士(ザ・ナイト)、守る想いに比例して術者の肉体を強化する俺の魔法だ…!」


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