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愛を

作者: 朝日奈 雪蒔






死にそうで、だんだんと息が上手くできなくなっていって、


つらそうなのに、しっかり僕の手を握って薄く開いた目で



僕の目を逸らすことなくみつめる。



死ぬ時は、あなたとずっと一緒に過ごしてきた家の中であなたのそばで眠りたい。





と彼女の最後のお願いだった。



「苦しくないわ。」




そう言いながら懸命に、笑顔を作った。




そんな彼女が愛おしい。





誰よりも美しい。




「愛してる。」



君と出会って初めて言葉にした。




彼女にその言葉が届くと、



一瞬時がとまって、




静かに彼女は泣いた。




涙が頬を流れた



「……私もよ。ずっと愛してる。」




静かに途切れ途切れに言う。


今まで一度も思いを伝えなかった僕を許してくれるのだろうか。




「死んでしまうの。」




縋る声で問うた。





「死なないわ。」



そう言うと、握っている手をさらに強く握った。




その言葉に僕が安心できる訳などなかった。




けれど、強く握っていた手から、だんだん力が抜けていくのを感じると、



「そうだよね、死なないよね。」



と自分に言い聞かせるように呟いた。




「…うん。」




目を閉じながら君は言った。



眠るように目を閉じた彼女の手が完全に力を失った。



横になっている彼女の体を起こして、きつく抱きしめて



ひたすら泣いた。


君がついた最初で最後の嘘。



死なないと言った。




けれど、彼女はもうすぐ死にそうだと、きっと感じていた。



彼女は




嘘をついた。



嘘のつぶやきはまるで愛しています。と言っているようだった。





君がいなくなった世界で生きる意味などあるのだろうか。




死んでしまおう。そんなことしか思えない僕だけど






君からの愛を捨ててしまうことができるわけもなく。



思い出の場所へ行ってみたり、




写真を見て最後まで君を想って生きようと決めた。



君の記憶を大切に抱いて




なぞって、辿って生きて行く。



これが君への愛だ。


君へ送るただ一つの愛の形。



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