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脱獄

作者: 尚文産商堂
掲載日:2014/11/30

「いいか、この川が最後だ」

地図を見ながら、親分が俺らに話す。

脱獄してからはや3日目。

警備が厳重という刑務所の、噂では初めての脱獄囚となった俺たちは、散り散りに脱走しつつ、今親分の下にいるのは、俺と親分と、もう一人の3人だけ。

目の前で捕まったというやつはいないが、危なかったのは何度もある。

そんな危ない目にあいつつも、国境を越えるための川へと出てきた。

今は冬。

上流からの流れは少なく、川の底が結構見えている。

「この道だ」

すでに調べていた道を、俺たちは通る予定だ。

だが、この場所に着いたのはまだ日が出ている時。

もうしばらく、もうちょっとの我慢だと言い合いながら、俺らは夜を待った。


そして夜。

真っ暗な闇夜で、月もない。

それに曇り空だ。

これほど好条件はあるまい。

「よし、いくぞ」

親分の合図で俺らは一気に走り出す。

川底は、かなりぬかるんでいるが、走れないほどではない。

バシャバシャという、どうにもならない音を立てつつ、半ばにある中洲まで来た。

「合言葉は」

中州から声がかけられる。

「イグニチュール」

簡単にいえば、意味としては闇夜の徘徊者とでもなろう。

それを聞いて、向こう側は安心したようだ。

「親分、お待ちしていました。ここは危険ですので、早くこちらへ」

彼の後をついて、木の板でできた簡易な橋を渡り、対岸へとたどり着いた。

俺らの脱獄は無事に成功した。


それから分かれた仲間たちも続々と合流した。

何人かは捕まったようだが、致し方ない。

俺らは、再び親分のもとに集い、そして昔からの家業を始めた。

麻薬取引だ。

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