脱獄
「いいか、この川が最後だ」
地図を見ながら、親分が俺らに話す。
脱獄してからはや3日目。
警備が厳重という刑務所の、噂では初めての脱獄囚となった俺たちは、散り散りに脱走しつつ、今親分の下にいるのは、俺と親分と、もう一人の3人だけ。
目の前で捕まったというやつはいないが、危なかったのは何度もある。
そんな危ない目にあいつつも、国境を越えるための川へと出てきた。
今は冬。
上流からの流れは少なく、川の底が結構見えている。
「この道だ」
すでに調べていた道を、俺たちは通る予定だ。
だが、この場所に着いたのはまだ日が出ている時。
もうしばらく、もうちょっとの我慢だと言い合いながら、俺らは夜を待った。
そして夜。
真っ暗な闇夜で、月もない。
それに曇り空だ。
これほど好条件はあるまい。
「よし、いくぞ」
親分の合図で俺らは一気に走り出す。
川底は、かなりぬかるんでいるが、走れないほどではない。
バシャバシャという、どうにもならない音を立てつつ、半ばにある中洲まで来た。
「合言葉は」
中州から声がかけられる。
「イグニチュール」
簡単にいえば、意味としては闇夜の徘徊者とでもなろう。
それを聞いて、向こう側は安心したようだ。
「親分、お待ちしていました。ここは危険ですので、早くこちらへ」
彼の後をついて、木の板でできた簡易な橋を渡り、対岸へとたどり着いた。
俺らの脱獄は無事に成功した。
それから分かれた仲間たちも続々と合流した。
何人かは捕まったようだが、致し方ない。
俺らは、再び親分のもとに集い、そして昔からの家業を始めた。
麻薬取引だ。




