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【番外編】或る平凡サラリーマンとキャンディ女王、湾上都市にて。

今回は番外編として、前回でてきた子と佐間くんのお父さんをカップリングしてみました。


俺を生まれる五年前を呼んでみるとより深くわかる仕様。

 ここは湾上都市、東京第二十四区ともいわれる海を臨んだ都市だ。

 

 自慢するわけでもないのだが、ここは技術の発展がめざましく潮の香りと白銀の摩天楼が立ち並ぶ光景はまさしく未来都市の様相を呈している。ここで働く人間もまた学歴社会において競争に勝ち残りせっせかと働いていたのだ。


 そんな安定を手にしているからか、僕は少年のころ誰もが思い描くであろう変化に満ちた刺激的なドラマ。そんなものがほしくて堪らなかった。


 おっと、僕の名前は佐間休助だ。妻は早くに失くしたがそのおかげか、息子は家事において才能を現し、天下のモルモット高校に調理科で推薦合格をしていた。


 しかしそんなことも僕の順風満帆ぶりを誇示し、あるいはこの日常をことさらに退屈にしているようでならない。


 趣味は特に無い。


 スキューバダイビングでもすれば、あるいは宇宙旅行でもすれば、少しはましになるだろうか。


 いつしか僕はこの冒険衝動のことを「ココイチシンドローム」と名づけていた。人は刺激がなければ生きてはいけないのだ。しかし刺激というのも何遍も同じものを摂取し続けたのであればそれはまた退屈に戻る。


 隕石でも降らないか。魔王でも現れないか。


 不謹慎にもそんなことを考えている僕の仕事は、『女王の紅林檎』の研究だ。




「佐間さん、この文章読めますか?」

「ああそこはねぇ、モルモット卿について書かれたところで、女王時代の文章はその二百年。五十二頁後に数行書かれてるだけだよ、それよりこの資料……」


 私は諸星もろほし 重駆しげく。湾上都市に居を構える我らが古文書研究委員会の研究員だ。

 この世界では天使襲来が起きなかった。つまり中国などという国家もこの世には存在せず、ただ変わりに「魔女」や「魔術」などが世界のシステムとして扱われていた。


 この世界で台頭しているのはイギリスと、架空技術と呼ばれる超変態技術ハイパートランスフォーム・テクノロジーを誇る神聖ジパング帝国であった。


 もちろん神聖ジパング帝国というのは便宜的に「日本」という国家を示す言葉だ。


 彼ら「日本人」は日々変態的な技術をもてあまし遠き碧きアトランティスを思うのみだ。


 つまり天皇が対外的な態度として日本の統治を示した形だけのものだ。


 しかしそんなHTFT(ハイパートランスフォーム・テクノロジーを「魔女狩り」に利用する動きが出ていたのだ。


 それはアラブ首長国連邦、本来の歴史において世界の覇権を握るものたちであり、それはアメリカ、総ての陰謀の根源である合衆国の当然の「歴史の修正力」でもあった。


 公星書記には記されている。本当の歴史が。


 しかしそれを知るものも多い。


 例えばそれは「陰陽師」や「巫女」と呼ばれるものたちの超存在からの言伝であったりするわけだが。


 戦争、つまり人間と天使と皇族という三つ巴の戦いが行われなかった今、情報革命はなしえなかった。


 情報を制するのは神職や占い師。英国でいう魔術、魔法といった特殊な公式を持って説明される術者であった。


 さて、この世界に必要ないであろう私は、またの登場を余儀なくされた。


「ここの情報処理をやっておいて、諸星くん」

「ああわかりました佐間さん」


 いや、そんなことはなかったようだ。

 しかし、「情報」なんて言葉を使っている国は日本ぐらいだろう。


「ああ佐間さん、くれぐれも【女王】にはお気をつけて」

「ん? あぁ、そうさせてもらうよ」


 佐間さんはにかっと笑って白い歯を見せた。

 

 たぶんだけれど、佐間さんには私の正体はばれていると思う。ときどきだけれど、佐間さんは「他の世界」を匂わせるような話をしては、屈託無く笑うのであった。


 あぁ、佐間さんに平和あれよ。


 今度こそ僕は退場だ。




「さて、今日はもう帰るか。帰りにブックストアーに寄ろう」


 そんなことを思っていた。僕は羊羹を一かじりする。


「なんじゃぁ? それ」


「わっ!」


 突然話しかけられ、僕は思わず飛びのいた。


 よく見ると、それは西洋によくある、だけれども実にそれは鮮やかな金色の髪の乙女だった。


 高く突き抜ける青空を写したかのような瞳には、僕の顔が映っていた。


「よ、ようかんだよ?」


 なぜか緊張してしまう圧力が脳内に【女王】という言葉を走らせる。


「ふむ。ヨウカンか。まことに不思議なところじゃな。ここは」


「どこからきたの? おじょうさん」


「おじょうさん、などよさぬか! そなたにはわかっているのだろう、私は女王だ」


 やはり【女王】。諸星くんが言っていたのはこのことだった。


「女王さまは、僕をどこに連れて行ってくれるのかな?」


 不意にそんな言葉が口をついて出る。期待、していたのだ。


「女王様も、だめじゃ。その、ヨウカン! ヨウカンと呼ぶがいい!」


「ははは、貴女見たいな人には、キャンディが似合う」


 緊張は解れていた。


「キャンディ、か。 まぁいいだろう」


 そして、【女王】キャンディは僕の期待していた言葉を言う。


「キュースケ・サマ。私と共に来い」


「いいよ」


番外編:佐間休助 続く


See you later

テューハイですこしふらふらする僕って……。


もうお洒はのみません!



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