第四羽、聖典<公星書記>ハムスターノート、勇者伝説!
ギャグと陰謀と美味しいものが交錯する書いてて腹が減る、捏ねた小ネタを一羽ごとに仕込んだ味噌(野田は千葉県ではありませんからねぇ、えぇ)味の勇者復讐活劇、開幕!!
「あああああああああああああああああああああ!!!」
僕はそこに佇んでいた。ただ、何もできずに薄い、茶けた「紙」と呼ばれる筆記具を束ねた「ノート」を首が固まるほど見上げていた。
「我、神話に名高い因幡の白兎を喰い、月におわした兎を喰い、近所の小学校で飼っていた兎を鳥として喰いしものなり」
「てっめええええええええええええええ! ……ビを……、よくもラビをおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!」
「ラビ? 貴様はそう呼んでいたのか、まぁ人間がつける名称などは我にはもう遠き日々、戻らぬ過去よ……」
「ノート」は自らがその兎を「手羽先」と名づけ佃煮にして喰ったことを胸の内に厳重に鍵をかけてしめた。
「おまえ! 名前はないのか! クソノートめ……」
「我に名前などなかった。が、今決めた。お前の名前はモルモッティ、我はハムスターだ。ハムスターノートだ! 貴様を勇者として世界の支配構造の頭脳、窓際会議を打ち破るのだ」
「窓際……会議……?」
「ああ、そうだ。窓際会議とは千葉県。つまり世界は落花生の殻の中にあると主張するものたちだ」
「千の兎を喰ったお前なら、このふざけた世界を元どうりにできると、そういうことだな?」
「否、我、ハムスターノートと貴様、モルモッティの意思が重なったとき、世界は真実の愛に包まれるのだ」
神暦四千年、フェレット王暦零年が、生まれた瞬間であった。
世界は、崩壊していた。産業革命の喜びの先に世界は、ガイアは怒りの矛先を人間に向けていた。
「なぁ、公星書記、お前は世界の正しさを記録するノートだった。そうだろ?」
「あぁ我が主モルモッティ、否、正しさで記録するべきなら、相=崎・モルモッティ・政一とするべきか」
荒廃した、かつて高層ビルが立ち並んでいたイナンガの街はその硝子を砂漠のように撒き散らし、白骨を地下へ地下へと沈み込ませていた。
「政一か……懐かしい名前もあったもんだな」
懐かしいとは言っているが、やはり元に戻ることはない名だ。
「しかしアイ・ザキ、というのは何だ?」
青年はノート、公星書記<ハムスターノート>に問う。モルモッティ青年が主、ノートは相棒だ。
「……世界を支配し得る金貸しといったとこだろう」
「あまり喋りたくないようだな」
「当然だ。本来、公星書記は公正で平等、絶対でなければいけない。誰か一人のものであってはならない」
「窓際会議、ねぇ。こんな世界で窓際なんてもんが本当に残っているんだとしたら、確かにそいつらはただもんじゃねぇな」
膝をぽんと手のひらで叩くと、青年は立ち上がる。
『フェレット黄金期第二章、王国の再興――』青年が唱える。
『世界の墓標、我此処に立つ。』書記、否、『ガイアの聖典』は応える。
『『フェレット皇太子の血で満たせ、彼の此の大地を!!』』
イナンガの地は黄金に輝く滑らかな穂の大地に、ルビーの宝果をつけた巨木に、還った。
文明は消え去り、過去も消え去った。
此処にあるのはただ聖典にあった、誰も彼もが幸せで等しかった時代だ。
「さて、窓際は、何処だ?」
青年が睨む。どうしたものかとハムスターノートもない首を傾げ、聖典を検索し、助言する。
「むぅ、あれはショウユ、サ行五大調味料の1つの匂いだろう。さとう、しお、せ――」
「ハムスターノート……お前は百科事典じゃないんだぞ……」
今度はまだ見ぬエンサイクロペディアンを睨み、青年は黄金から足を踏み出した。
続く
疲れる文章を読んでいただき幸いです。