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真夜中の内緒話 〜前編〜

「マリア様、私の穴を埋めていただき本当に申し訳なく思います。マリア様は今日は安息日でしたのに……。セシルもありがとう、疲れたでしょう? 今日は大活躍でしたものね」


 私はお二方に、先程焼いた薬膳クッキーを勧めながら労いました。


「いえ、わたしなんてーー!」


「いけませんよ、マリア様」


 私はマリア様を止めました。


「マリア様は『なんて』なんて言葉で貶められていい存在ではありません。たとえ神様が許しても、私が許しません。勿論セシル、あなたもよ。

 ……結局、今日のお努めも全部『平民聖女隊』でしたのね」


「しょーがないですよ。神殿長、ミランダ様とかエスニャ様とかには絶対夜のお努めとかさせないし」


 私が神殿長に申し上げ続けてきた『お努め内容の偏り』のひとつがまさにそれなのです。

 夜のお努めは過酷で、もし朝昼のお当番の方がノルマ(=水晶球満タン)を達成できなければ、夜の方が全力でカバーしなければなりません。この水晶球に満たされた光の魔力こそが、王都を守る結界の素なのです。水晶球が完全に空っぽになれば結界は消滅します。結界が消えれば、今日見た瘴気と魔物の合わせ技が王都を席巻することでしょう。


「神殿長は、高位貴族の聖女様方には過酷な任務は振りませんものね」


「ファティマ様なんか、朝夜お努め5連続とかフツーにありましたもんね、おかしいですよ!」


 正直に申し上げますと、前日夜のお努めからの翌日朝のお努めはなかなかにして厳しいのです。体力的にも、魔力的にも。だったら昼間に休めばいいと神殿長はおっしゃいますが、昼は昼で浄化視察や戦闘サポート、神殿にいても治療の依頼や護符作成、神殿内の雑務等々色々ありまして、おちおち休んでもいられません。


「わたし達には戦闘のサポートとか遠くの街の浄化とかホイホイやらせるのに『貴族聖女隊』には近場で浄化だけとか、ホントやってらんないですよ!」


 最後の夜、ということを抜きにしても、私は言いたい放題のマリア様を止めはしませんでした。ここはいわゆる『聖域』。聖女以外は立ち入れない場所。そして今、私は秘密裏にこの空間に結界を張っております。立ち入りするのは勿論のこと、音声すらも遮断する、内緒話にはうってつけの結界をーー結界は何も『光』の専売特許ではないのです。地魔法もちゃんと行使できています。

 セシルはクッキーをもぐもぐしながら、


「でも、ナターシャさまはやさしいです」


「セシル、お口にものを入れている時はおしゃべりしてはいけませんよ。ごっくんしてからになさいね」


 私はいつもの注意をし、セシルはこくん、と素直に頷きました。


「だよねー! ナターシャ様は戦闘サポートはムリだけど浄化はわたくしに任せてって言ってくれるもんね。ミランダ様だと浄化まで一緒にやらされるもんね!」


 マリア様の言に、セシルがこくん、と頷きます。お口はクッキーで忙しいようです。


「確かにミランダ様は『あなたも一緒に』と瘴気浄化にお誘い下さいますけど……それは『神の娘として平等』ということで『平民聖女隊』にも花を持たせて下さっているのかとーー」


「ファティマ様、甘いです!」


 マリア様は薬膳クッキーを一口で召し上がり(結構な大きさなんですけどね!)ぴっ! と私を指差しました。私は、私よりも年上のマリア様に、セシルに対するように「人を指差してはいけませんよ」と注意すべきかどうか迷いました。


「ナターシャ様はサポートはできないけど浄化は任せて、って言ってくれつつ結界張ってくれたりするじゃないですか!」


「それで、セントウ? が終わったら、おつかれさま、ってゆって、みんなにまほうかけてくれます。あたし、えっと、わたしく? たちにも」


 セシルは疲れておねむなのか、少々たどたどしい口調です。可哀想に、こんな小さな子を夜中まで働かせるなんて……親御さんに顔向けできません。

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