表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
白いもふもふ好きの僕が転生したらフェンリルになっていた!!  作者: ろき


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

19/26

【第17話】恐怖の行進と、ただ一人の恍惚

 巨大な白銀の獣――フェンリルの出現により、城壁都市バルドは完全な混乱状態に陥っていた。


 城門は慌ただしく開かれ、兵士たちが叫び声を上げながら人々を下がらせている。


 「み、道を空けろ! 刺激するな!」


 「目を合わせるな! 頭を下げるんだ!」


 恐怖に染まった声が飛び交い、人々は次々と地面に額を擦り付ける。


 その光景を前に、フェンリルは感心していた。


 (おお……すごい統率力だな。先導してる人、たぶん偉いんだろうな)


 (お祭りの練習、しっかりしてるんだぁ)


 みんなの動きがぴたりと揃っていて、思わず感心した。


 どうやら、この街では来客のとき、こうして道を開ける文化らしい。


 そんな中、一人だけ異様なほどテンションが高い存在がいた。


 「さあ、始めましょう! 神獣様への歓迎パレードですわ!!」


 恍惚とした表情で両腕を広げるエルフの女性、セレン。


 彼女の声だけが、恐怖に沈んだ空気を切り裂くように響いていた。


 ――この恐怖の有り様を「歓迎」と称しているのは、この場でただ一人、恍惚とした表情を浮かべるセレンだけだった。


 周囲の人間たちは、誰一人として「歓迎」などという感情はない。


 兵士も市民も、己が「生き延びるため」に命じられるまま動いているだけだ。


 ここにいる全員がそんな決死の思いでいることに、フェンリルはまったく気づいていなかった。


 (おお、このエルフが先導してくれるんだな)


 セレンが前に立ち、腕で進行方向を指し示す。


 フェンリルはそれを「どうぞこちらへ」という意味だと解釈し、大人しく後について歩いていった。


 ――まだこの人たちの言葉は分からない。


 この世界の言語は、音としては認識できるのだが、理解ができない。


 だが、表情や身振り、空気感だけは、なんとなく理解できる。


 ……この勘違いが、この騒ぎの元凶なのだ……。


 「ヒィ……」


 「こっちに来る……!」


 沿道の人々が、恐怖に顔を歪める。


 フェンリルが一歩進むたびに、皆が後退していく。


 (うんうん、ちゃんと道を空けてくれてる。礼儀正しい街だなぁ)


 前足を上げて軽く挨拶すると、悲鳴が上がった。


 「おいっ、こっちに向かって構えはじめたぞっ!」


 「み、見ろ、あの爪っ!?」


 「あの爪でいつでも八つ裂きにできるってことか!?」


 挨拶をされた人々は、威嚇をされたのだと思い、恐怖で震え上がった。


 (……? あれ? 挨拶、違ったかな?)


 一瞬だけ周囲の反応に戸惑ったが、文化の違いだと思って受け流した。


 (よし、失礼のないように堂々としないと)


 モフモフの自慢の胸を張り、堂々と道を歩く。


 その堂々とした姿に、人々はひたすら恐怖を感じ、平伏していた。


 やがて、街の中央へと続く大通りに入る。


 (すごいな……夜なのにこんなに明るい。お祭りって感じだ)


 森では決して味わえなかった光景。


 初めての街で、人の営みの中心を歩いているという感覚にワクワクした。


 その背後で、アルヴィンたち冒険者は真っ青な顔をして付いて歩いている。


 「……なあ、これ、本当に道案内してるってことで合ってるよな?」


 「知らん……俺はもう遺書を書きたい……」


 アルヴィンたちがぶつぶつボヤいている中、セレンだけが幸福そうに微笑んでいた。


 「素晴らしいですわ……! 皆が神獣様の神々しさと優雅さにひれ伏し、道を切り開いている。


 これこそ、神獣様を迎えるに相応しい!」


 彼女のそんな歓喜は誰にも理解されず、誰にも止めることはできない。


 こうして――


 一匹は「お祭りに参加しているつもり」で、


 一人は「神獣の威光に酔いしれ」、


 街全体は「ただ必死に殺されまいと」、


 恐怖の行進は、何一つ噛み合うことなく中央広場へと進んでいくのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ