6/10
「虚言真となりて災ひ招くこと」
前と同様、作品世界を広げるための挿入です。読みたくない方は飛ばしていただいて大丈夫です。ストーリーに影響はありません。
「虚言真となりて災ひ招くこと」
(前略)
かくてこの男、帰りて見るに、かねてより思ひたる女、いかなることにか、わが家にをはしましける。
「こはいかに。何でふかくあさましきことのあるにや」と思ふに、さてはそらごと童の仕業なるらむとて、男よろこびにけり。
されども、かやうのことも長くは続かず。男たちまちのうちにわづらひて、やがて起きもあがらで、空しくなりぬ。
人々、「これこそかのそらごと童の罪業にやあらめ」とぞ語りけるとか。
(『禍福雑談』より)