第8話 精根尽き果てる
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第8話 精根尽き果てる
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眠れない。
小次郎はベッドに寝そべり、まんじりともせず、さらには指一本も動かさない夜を明かしました。
その横では美土里がすやすやと可愛らしい寝息を立てており、恨めしく思うのでありました。
(今夜も徹夜だった……)
駅馬車の中で二時間ほど寝ることができたのですが、二日続けて寝ていない小次郎でした。
(朝日が眩しすぎる……)
「う、うぅん……」
美土里の瞼がゆっくりと開いていきます。
「おっはー」
「おはよう……」
上半身を起こす美土里は、白いシャツでその下には何もつけていません。
美土里はわざわざ見せつけるように胸を張って背伸びをします。
(あいつの目が釘付けだし~♪)
もちろんわざと見せつけています。
(はうっ!? す、透けてるし!)
薄い白色の生地のシャツは、朝日を浴びた美土里の体を薄っすらと透過させていました。
それが小次郎の目には毒であり、我慢も限界に近い状態です。
寝不足の小次郎と、ぐっすり寝た美土里は食堂で朝食を摂っています。二徹の小次郎はさすがに食が進みません。
「食欲ないけど、どこか具合でも悪いの?」
「い、いや、そのようなことは……」
(ただの寝不足ですから)
食後、今日は何をしようかと、美土里が楽しそうに相談してきました。
観光をしたいところですが、持っているお金にあまり余裕がありません。ですから、小次郎は宿で大人しくするつもりだと答えるのです。
「ねえ」
「はい。なんですか?」
「その丁寧な言葉遣い止めてくれない」
「えーっと……?」
「あたしのほうが年下なんだし、タメでいいし」
美土里は年上の小次郎に最初からタメでした。
「美土里って呼び捨てにするし」
「……それはちょっと」
女の子を呼び捨てにしたことなんて、幼稚園の頃でもなかった気がする小次郎です。
「いいから、美土里って呼ぶし」
美土里が呼び捨てにしろと迫ります。
(か、顔が近い……)
「ほら、呼ぶし」
「ウゥゥゥゥ……」
「呼ばないと、怒るし」
「そんな……」
(横暴です!)
「呼べ」
「はい……美土里……さん」
「なんで『さん』をつけるなし、もう一回」
「えぇ……美土里……さぐむっ」
小次郎が『さん』とつけようとしたら、美土里がキスで口を塞いだのでした。
(えぇぇぇっ!? 俺、今、何、してる? いや、何されてる!?)
(あーしまった! 思わずキスしちゃった。……ま、いっか~)
困惑する小次郎と、遅かれ早かれこうすると決めていた美土里です。
引っ込み思案の小次郎には、少しくらい強引の女の子のほうがいいのです。その点、美土里は小次郎をリードしてくれることでしょう。
唇を合わせていると、美土里が舌を入れてきました。小次郎は驚いて目を見開くのですが、美土里の上気した顔が可愛くて見入ってしまいます。
美土里は激しく小次郎を求めます。小次郎はなすがままにそれを受け入れました。二人の唇が離れると、唾液が糸を引くほど激しいものでした。
「あんたはあたしを美土里と呼ぶし」
「うん」
「あたしはあんたを小次郎って呼ぶし」
「うん」
「堅苦しい口調は禁止だし」
「うん」
「キス。して」
「うん」
二人は何度もキスをし合いました。気持ちが昂る二人がベッドの上で重なり求め合うのは必然だったのでしょう。
キスをしながら我先にと服を脱ぎ合い、裸になった二人はとうとう一つに繋がったのでした。
「……もう夕方?」
小さな窓から入ってくる光は、真っ赤な西日でした。この世界でも日は西に沈みます。そういった常識は地球と変わらないようです。
小次郎の横では、美土里が静かに寝ています。
(な、なんかやりすぎた……?)
彼女は一糸纏わず、そして陰部から大量の精液が垂れていました。
焦る小次郎が見つめていると、美土里が目を覚ましました。うつ伏せで寝ていた彼女は、ゆっくりと寝返りします。当然ながら、彼女の豊満な胸が露わになりプルンと揺れます。
散々揉んで舐めて吸って噛んだ胸ですが、直視すると気恥ずかしくなる小次郎であります。
「鬼畜……」
「え?」
(鬼畜って何!?)
「あたし、初めてだったのに……」
美土里の最初は小次郎が無意識に突き破っていました。
「ご、ごめん」
「初めてのあたしに、どれだけ出したわけ? あたし、気絶してたよね?」
「あの、その、無我夢中で……」
五回くらいまでは美土里も意識はあったのです。
ですが、小次郎の性欲は五回や六回では収まりませんでした。結局、美土里は何度も意識を失っては覚醒してを繰り返したのです。
「本当に死ぬかと思ったし」
「そ、そんな大げさな……うっ……ごめん。本当にごめん」
美土里のジト目に、小次郎はただ謝るだけでした。
「今後小次郎のことは、性欲怪獣と呼ぶことにするし」
「それだけは勘弁してください!」
そんな不名誉な渾名は勘弁してほしいとばかりに、小次郎はベッドの上で土下座して許しを請うたのでした。
美土里は陰部から流れ出る精液を確かめるように手で拭いました。
「これだけ中に出したら、出来るかもだし」
「その際は責任を取らせていただきます!」
「出来なければ責任を取らないの?」
「いえいえいえ! わたくしめでよろしければ、美土里さんを妻にいたしたくぞんじまする。ははぁぁぁっ!」
大げさに頭を下げる小次郎ですが、こうなった時からその覚悟はしていました。
もし子供が出来たら、責任を取る。出来なくても美土里を妻にすると。もちろん、美土里が妻になることを望んだらの話であります。
いくら小次郎にその気があっても、美土里が望まなければ夫婦にはなれませんから。
「それじゃあ、今日からあたしは小次郎の奥さんだね」
「え……」
がばっと頭を上げて、鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする小次郎は、よい笑顔の美土里の顔を見つめます。
「ほ、本当にいいの? 俺、佐藤小次郎だよ?」
「あたしは星海美土里だし」
「……これからよろしくお願いいたします」
小次郎は三つ指ついて美土里に挨拶をするのでしたが、これは一般的に美土里がすることではと、自分で首を傾げるのでした。
(父さん、母さん。俺、異世界で結婚します)
夕食時、宿のスタッフにニヤニヤとされました。
二人は気恥ずかしさに、食事の味が分からないほどです。
その夜はさすがに二徹明けの小次郎は爆睡しました。
美土里も小次郎の激しい攻めを何時間も受けていたため、さすがに求める力は残っていませんでした。
精根尽き果てるというのは、この時の二人のことをいうのでしょう。