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第4話 無意識に追い込みかける人っているよねー

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 第4話 無意識に追い込みかける人っているよねー

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 宿舎に風呂はなく、水で体を拭くのは自由とのことで、小次郎は宿舎の裏にある井戸で水を汲み上げてタオルを濡らします。

「冷たい……」

 気温はそこまで低くないのですが、井戸水はかなり冷たかったのでした。

 冬ならお湯を用意してもらえるようですが、この時期はお湯をもらうことはできません。


 井戸の前では小次郎の他に三人の若い軍人が上半身裸になって体を拭いています。

 腹筋が割れてなかなかの肉体美を誇っています。その三人の奥に、美土里と理央の姿が見えました。

 美土里に告白されたと思い込んでいる小次郎は、美土里の姿を見ただけでドギマギし挙動が怪しくなってしまうのです。


「水で体を拭くとか、マジありえないし」

「原始的な世界よね」

 二人はブツブツ言いながらやってきました。


「寒そーだしー」

「井戸とか、もー最低ー」

「あんたも体を拭いていたのね」

 美土里が声をかけるだけで、小次郎の挙動不審は最高潮に達していました。


「ちょ、なんで水を被ってるのよ?」

「え、あ、あははは……」

 自分でも何をしているか分からず、小次郎は服を着たまま水を被ってしまいました。それが気恥ずかしくなり、笑いながら遠ざかっていきます。


「なんなのあれ?」

 理央が不審者を見るような目で小次郎を見ると、美土里は肩を窄めて首を傾げるのでした。

 それを見ていた三人の軍人も、あいつやはヤバいなと思うのでした。

「あいつって、巻き込まれた奴だよな?」

「コジローとかいう奴だな」

「あいつ、危なくね?」

「「ああ、近づかないほうがいいな」」





 ベッドに横になった小次郎は、天井のシミをジッと見つめています。

 人前に出ても激しい動悸や吐き気をもよおすことはなくなりましたが、決して人と接するのが得意なわけではありません。

 なんなら人と関わらずに暮らせるなら、そのほうがありがたいくらいです。

 現在のような不特定多数と関わる状況は、苦手といっていいでしょう。


「もっとコミュニケーション能力を高めるべきなんだろうけど……」

 そういうものが簡単に身につけば、誰も苦労はしないのです。

 そもそも元は引きこもりだったのです。それが外に出て、社会の端っこでも復帰していたのが奇跡的な状況でした。これ以上を望むのは贅沢なものなのかもしれません。




 異世界生活二日目。英雄候補四人と巻き込まれ召喚された小次郎は、この世界の常識を教えてもらいます。講師はアイザック老師の部下で、ロザンという魔法使いの爽やか系青年です。


「我が国の通貨はゲルドですね。これが一ゲルド銅貨、こっちは十ゲルド銅貨、これは百ゲルド銀貨、これが千ゲルド銀貨ですね。あと、これは一万ゲルド金貨でこの上に十万ゲルド金貨があります。ただ、大きな買い物をしない限りは一万ゲルド金貨と十万ゲルド金貨は使われませんね」

 一ゲルド銅貨は黄色の長方形、十ゲルド銅貨は茶色の丸型、百ゲルド銀貨は長方形、千ゲルド銀貨はやや大きい丸型、一万ゲルド金貨は長方形、十万ゲルド金貨はやや大きめの楕円形になっています。


「食堂で出ているパンが一個七ゲルドから十ゲルドほど、町に出て昼を食べようと思うと百ゲルド前後、平民が着るような服を上下揃えると二千ゲルド前後、下級貴族なら三万ゲルドくらいになる」

 一ゲルドがおよそ十円くらいでしょうか。機械化が進んでいない世界のため、手作りする衣類などは高額になる傾向のようです。


 午前の講義が終わり、高校生四人に続いて部屋を出ようとした小次郎は、ロザンに呼び止められました。

「ライフカードの表記は、氏名以外を非表示にすることができます」

「え? あ、はい。教えてくださり、ありがとうございます。ですが、なぜ俺だけに?」

 高校生たちにあえて言わないのはなぜなのか、小次郎は首を傾げました。


「貴方は城を出ることが決まっているとか……。念じれば表示させることも、非表示にすることも可能です。覚えておいて損はないでしょう」

(この人なりに俺のことを心配してくれたのか。こういう人もいるんだな)


「分かりました。教えてくださり、本当にありがとうございました。少しの期間ですが、今後もよろしくお願いします」

 小次郎は深々と頭を下げて感謝の意を表します。

 ロザンは少し驚いた表情をします。この世界、いえ、この国でここまで頭を下げる人はいないのです。少なくともロザンの周囲にはいません。それが新鮮な驚きだったのです。


 午前中に一般常識を学び、午後になると恩恵の使い方を教えていただくことになります。

「まずはライフカードについて説明します」

 講師は午前に引き続きロザンであります。午前中のことは一切触れず、ロザンは話を進めました。


「クラスはその人が最も力を発揮する職であり、絶対にその通りの職にならなければいけないわけではありません」

「あの、質問をいいですか」

 小次郎がおずおずというよりは、おどおどしながら手を挙げました。


「どうぞ」

「クラスが薬師でも戦えるものなのでしょうか?」

「戦えますよ。ただし生産系のクラス、しかも薬師のようなあまり力を必要としない生産系クラスではレベルが上がっても力の伸びが少ないのです。よって、あまりお勧めはしません」

「なるほど……」

「薬師だって立派なクラスじゃん。気にしたら駄目だし」

 小次郎がガックリとうな垂れると、美土里が肩に手を置いて慰めてくれます。そんな美土里の気遣いに、心から感謝する小次郎でした。


「先ほども言いましたが、絶対にその通りの職にならなければいけないわけではありません。たとえば、クラスが商人でも剣は振れます。魔法使いじゃなく、属性がなくても魔法を使える人もおります。ですから、戦闘系クラスでなければそこまで気にしなくてもいいですよ」

 戦闘系クラスのような命に係わるクラスは別だが、それ以外なら努力次第で色々できるし生きていけると、ロザンは言います。


「属性は魔法を使う際に得意なものを示しています。兵科も得意なものを示します。恩恵はパッシブ系とアクティブ系があり、パッシブ系は持っているだけで効果を発揮するものです。対してアクティブ系は自分の意志で発動させる必要があります」

 統牙が持つ魔法剣刀術などは、持っているだけで体が自然と動くパッシブ系になります。その逆で加速のような、意識して発動させる恩恵をアクティブ系といいます。


 小次郎が持つ調薬は後者のアクティブ系に分類されます。

「アクティブ系は何よりもイメージが大事ですね。加速であれば、瞬発力のようなものをイメージし、足に意識を集中させて動かすと発動しやすいでしょう。慣れると、そういった段階を踏まずに発動させられるようになるはずです」


 小次郎の調薬は、素材になるものがあることで薬が作れます。

 この時、ロザンは一般的な調薬の話をしましたが、小次郎の調薬は『Ex』なのです。

 これが後にぶっ壊れた恩恵だと小次郎は実感することになるのですが、それはまだ後の話です。


 また、この世界には錬金術師や医師というクラスもあり、それこそ錬金術師はポーションを作り、医師は怪我や病気を治す恩恵を持っています。よって、薬師というのは、かなり下に見られているのでした。



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