第35話 女神美土里
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第35話 女神美土里
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二礼二拍手一礼。
小次郎は涙を流し、そのご神体ともいうべき光景を拝むのでした。
「……バカ……変態……クズ……鬼畜」
下の毛を剃ってくれたことで、感動のあまり拝んでしまうという変態小次郎に、美土里は顔を真っ赤にして罵っています。
「生きててよかった」
「もう見るなし」
「今、脳内メモリーに記録処理中です。もう少しだけお願いします」
後ろから見た光景は、美土里がベッドの上で股を開き、小次郎が土下座しながらその股に顔を埋めているという、いかにも変態チックなものです。
「い、息が当たってるし!」
後光が差しているような光景に興奮した小次郎が、鼻息を荒くさせないわけがありません。まさに御開帳にございます。
「ちょ、臭いを嗅ぐなし!」
「ああ、神よ」
「誰が神だし!?」
「女神美土里教の筆頭信者ですが、何か?」
「バカなこと言うなし!」
「ところで、女神様」
「だから、女神じゃないし!」
「舐めていいですか」
「う、うるさい! いつも勝手に舐めてるのに、今さらだし!」
「はい。舐めさせていただきます」
「バカーッ!」
バカップルの夜は長いのでした。
朝日が昇っても小次郎は美土里の胸を吸っていました。こいつヤバいどころではないレベルのしつこさです。
(こうして乳を吸っていると落ち着くなぁ~)
このしつこさが美土里の乳を成長させているのです。
「いつまで吸ってるし?」
「ひっひょうれふ(一生です)」
「何言ってるか分からないし」
チュパチュパと必死で乳に吸い付く小次郎は、まるで赤子のようでした。
本日も美土里は依頼を受けました。五級ハンターの依頼ですから、弱い魔物の討伐や納品、薬草などの採取依頼しかありません。
美土里は特にハンターで名を売ろうと思っているわけではありません。
ただ、下着や服を作るのに大枚をはたいてしまったため、稼がなくてはいけません。収納の中に入れてある数々の魔物の素材を売ればいくらでもお金を稼げますが、ハンターなのだから依頼をしようと思ったのです。
一方小次郎も職人組合の依頼を確認していましたが、そこで職員に呼び止められました。
「サトウ・コジロー様に、イリューシャ支部のリッテン組合長から依頼が出ております」
「依頼ですか?」
緊急依頼ではなく指名依頼だそうです。緊急依頼は断れませんが、指名依頼は断ることができるものです。ただ、指名依頼は通常の依頼よりも報酬がよい場合が多く、組合の貢献度も高いため昇級の推薦を受けやすくなるメリットがあります。
リッテン組合長は売り込みを行うため、このリッテルフェイドに肌スベールを持ち込んでいました。そこでリッテルフェイドの筆頭鑑定士のチェックを受けたのです。
高レベルの薬師の多くは恩恵・薬師鑑定を持っていることが多いのです。今回鑑定したのは、レベル71の二級薬師エジェンです。エジェンはエルバーニュ国北部では、イリューシャ支部専属二級薬師アッパスに並ぶ権威として知られている人物ですが、恩恵・薬師鑑定のランクが『A』であり、アッパスよりもより詳しい鑑定ができるのでした。
そのエジェンが肌スベールを鑑定した結果、品質が三段階に分かれました。普通品質が百六十八本、高品質が三十二本、超高品質が百一本だったのです。
二級薬師のアッパスが作った肌スベールは高品質止まりでしたが、小次郎が持ち込んだものは全て超高品質だったのです。
イリューシャ支部の鑑定士では見極められない差ですから、超高品質の肌スベールを高品質として売り込もうかという話もあったのですが、それだと高品質と超高品質に明らかな差が出てしまいます。
リッテルフェイド支部のラーデン組合長とリッテン組合長が相談して三段階の品質で販売することが決定したのでした。
今のところ超高品質は小次郎しか作れないため、彼が北部にいるうちにできるだけ在庫を積もうという判断が下されたのでした。
また、リッテン組合長がリッテルフェイドに住居がある貴族などの富裕層に肌スベールを売り込んだところ、大変よい感触を得ました。すでに、超高品質を始め、リッテン組合長が持ち込んだ肌スベールは全て完売。それどころか、数百件(本数では二千本に近い)数の注文がきているのです。
貴族家に仕えるメイドなど、身だしなみに気をつけなければいけない人たちに普通品質、富裕層や下位の貴族には高品質、そして上位の貴族には超高品質の肌スベールが飛ぶように売れています。
しかも、贈答用に注文される方が多く、リッテルフェイドから拡散しているため、今後はもっと多くの肌スベールが必要になることでしょう。
しかも超高品質は今のところ小次郎しか作れないため、どうしてもプレミアム感が出て高額商品になっているのでした。
この時点で、普通品質の肌スベールを一瓶四千ギル、高品質は五千五百ギル、超高級品質は一万五千ギルで販売をしております。
超高品質が高品質のほぼ三倍の価格になっているのは、今後小次郎が北部から遠く離れたティグスやラングリッツァーへ赴くことになっているため、運送費などが考慮されたものです。
また、超高品質は次の供給がいつになるか不明であり、納品の可否を明確に返事をしていないことから、高貴なご夫人たちがこぞって注文を出しているのでした。
そんなことになっているとは知らない小次郎は、《《前回と同等の品質》》の肌スベールの納品依頼を受けるのでした。
納品数は小瓶百本以上で、報酬は一本で七千ギルになります。
「前回のは二千ギルだったけど、七千ギルか。かなりいい値になってくれたな」
百本納品すれば、七十万ギルになります。しばらく働かず旅ができる金額が手に入るのです。そこで二百本作って納品しようと考えました。
「依頼は百本以上だから、二百でもいいよな。てか、この『前回と同等の品質』ってどういうことだ? まあ、前回の品質をイメージすればいいか」
前回作ったものを確認した際、小次郎の薬師鑑定ではちゃんと超高品質と出ていたため、今回も超高品質をイメージして作ることにしました。
小次郎は美土里の収納内にあった素材を消費して二百本を二時間ほどで作ってしまいました。
たった数時間の労働で百四十万ギルを受け取れるのですから、美味しい仕事です。
その日のことです、宿の部屋でライフカードを確認した美土里の悲鳴が聞こえました。
「イィィィィィィィヤァァァァァァァァァァァァッ」