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第12話 死体を弄ぶ

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 第12話 死体を弄ぶ

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 旅は進み、十数回めの野宿になりました。

 焚火に当たりながら、二人は身を寄せ合っております。

 恋人同士の甘ったるい雰囲気が漂ってくるようです。


「やっとリッシュ共和国に入ったし」

 山と谷をいくつも越え、森を抜けてきました。今日越えた山が国境だったのです。


「明日には町に到着すると思うよ」

「久しぶりにベッドで寝られるし~」

 野宿はマントに包まって寝るのですが、寒い日はそこに毛布も追加します。

 睡眠中は美土里が結界を張ってくれるため安心して休めますが、それでも野外ということで熟睡はできません。


 この十数日、道なき道を進んでいたおかげで、盗賊に遭遇することはありませんでした。

 しかし、毎日魔物と何度も遭遇し、今も結界の外に魔物がうろついています。

 さすがに精神的な疲弊が蓄積している二人でした。


 翌日、朝日が昇ると同時に目覚めた二人は、少なくなった食料を消費してお腹を満たしました。


「食料も残り少なくなっていたから、早く町に入りたいよ」

 そのためには結界の外をうろついている魔物を倒す必要があります。

 美土里の結界は神聖な気配を放っているため魔物に攻撃されることはありませんが、その外側から二人が出てくるのを待っているのでした。


「それじゃあ、薬の素材になる魔物以外は俺が倒すね」

「りょ」

 毒を使ってもいい魔物に指向性散布で毒を放ちます。

 指向性散布の有効範囲はかなり広く、小次郎の視界が届く範囲の魔物は全て対象にできます。

 薬材感知と併用し、薬にならない魔物に毒を散布すると、魔物たちが断末魔に襲われました。


「それ、楽でいいし」

「俺もそう思うよ」

 毒さえあれば、かなり広い範囲に攻撃を与えることができる。

 これまで入手した毒はアルカロイド系だけでなく、魔物からも神経毒、出血毒、筋肉毒を入手している。

 これらは複合的に使うことで、より致死性の高い毒になるのであります。


「なんかさ、薬師というより暗殺者だし」

「うっ……なんとなくそんな風に思っていたけど、人に言われると心がダメージを負うものだね」

「まあ、毒も薬の内ってことだし」

「そうだね……」


 薬の素材を持つ魔物は、美土里が首をチョンパして倒しました。

 素材を採取するために解体が必要になるのですが、レベルの上がった薬師によっていい恩恵を得ています。


 =・=・=・=・=・=・=・=・=

 氏 名 佐藤小次郎さとうこじろう

 称 号 巻き込まれた工員

 クラス 薬師

 レベル 26


 生 産 Ex


 恩 恵 調剤Ex 薬師鑑定S 薬材感知S 指向性散布Ex 薬材採取S

 =・=・=・=・=・=・=・=・=


 レベル二十で覚えた薬材採取は、魔物を自動で解体してくれます。

 ただし、薬の材料になる部分だけしか解体しないため、ほとんどの部分はそのまま残るのでした。

 また、植物や鉱物からも薬の素材を自動で採取できる優れものです。


 これまでレベルが五の倍数で新しい恩恵を覚えたのですが、レベル二十五の時には何も覚えることができませんでした。

 小次郎はそれを残念に思っているのですが、本来はこんなに多くの恩恵を覚えられないのです。


 それは美土里の恩恵を見れば分かります。

 彼女もレベルが二十五になっていますが、新しく覚えた恩恵はないのです。


 =・=・=・=・=・=・=・=・=

 氏 名 星海美土里ほしみみどり

 称 号 異世界から召喚された英雄

 クラス 水光すいこうの聖女

 レベル 25


 統 率 D

 武 勇 B

 慈 愛 S

 生 産 A


 属 性 火B 水A 風B 土S 聖S 光S 神S

 兵 科 衛生歩兵S

 恩 恵 詠唱破棄A 神聖上昇S

 =・=・=・=・=・=・=・=・=


「そういえばさ、俺が毒で倒した魔物の死体に、美土里が解毒したらどうなるかな?」

「毒が消えて、薬の素材が入手できるかもってこと?」

「そうなんだよ。もし、それができれば全部毒で倒せるかなって思うんだ」

「次の素材持ち魔物で試してみればいいし」

「うん。そうするわ」

 その機会は意外と早く訪れるのでした。


「何あれ……キモッ」

「あれはミズールヒルだよ。ヒルだからカラカラになるまで血を吸われる魔物だ」

 体長一メートルほどのヒルの魔物は、薄茶色の柔らかな体を器用に動かして二人に迫ってきます。

「あれが薬になるの?」

「それがなるんだな~。乾燥させてからヒルディンという薬用成分を抽出するんだ」

 ミズールヒルの一部ではなく、全身が薬の素材になるのです。


「うげ、飲みたくないし、その薬」

「血液をサラサラにするから、ドロドロ血の人にはいい薬だよ」

「体によくても、嫌だし」

「ハハハ」

 見た目はカタツムリの殻がない部分、ナメクジのような姿なのです。美土里が嫌がるのも仕方がないですね。


 小次郎はゆっくりと近づいてくるミズールヒルに、指向性散布で毒を散布します。

 ミズールヒルはビクンッと体を跳ねさせ、動きが止まりました。


「倒したようだね」

「弱いし」

「動きが遅いし火に弱い魔物だから、油断しなければ被害は滅多にないらしいよ」

 子供の足でも簡単に逃げられるくらい遅いため、ミズールヒルの被害は多くありません。

 それでも一度吸い付かれたら簡単には剥がれませんので、近寄らないほうがいいでしょう。


 毒によって死亡したミズールヒルの死体を前に、美土里が顔を歪めながら解毒をします。


「解毒したわよ」

「うん、ありがとう……あ、薬効成分が使えそうだよ!」

「へ~」

 ただでさえ興味のない薬ですし、ミズールヒルの姿は気持ち悪いものです。美土里は直視することなく、離れていきました。


「これ乾燥させないといけないから、回収してくれるかな」

「え~」

「お願いだよ、美土里」

「も~」

 小次郎の上目遣いに母性を刺激された美土里は、渋々とミズールヒルの死体を回収するのでした。



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