ー第5話デービースペック
「こっから逃げて!」
カウンター内にダストシュートが有って、バウンディママがスプリング式の扉を開けて見せた。
メンディーがお神輿の扉を前にして、飛び込む。キューティクル、セキリンの順で、ダストシュートを滑り降りた。
路地に出ようとすると、黒塗りのキャデラックが塞いでいる。ゆっくりとドアが開き、シルバーグレーの外人が降りてきた。
「デービースペック?お笑い芸人の?」
「あの。お笑い芸人じゃ有りません。クールギャグコメンテーターです」
セキリンが解説する。
「デービースペックは、CIA日本支部の支部長だから」
「それはギャグだから!」
キューティクルは、そう有って欲しいと願いを込めている。
だが、デービーはタレントの顔からエージェントの顔に変わった。
「いえ。ギャグでなく、今朝はCIAとして来ました」
「朝からすいません。くるまどけてもらえます?」
メンディーはお神輿の扉をデービーに向けた。
「交渉しましょう。海の見える部屋で朝御飯はいかがかな?」
デービーは、キャデラックを左手で差し示した。
江ノ電が見えるので、鎌倉だとメンディーは思った。お神輿をデービーに向けている。その横で、セキリンとキューティクルが和食をむさぼり食っている。
「メンディーさんも食べましょう。それは降ろして下さい」
「交渉とやらを済ませましょう」
デービーはナプキンで口を拭った。
「それを、聖櫃を渡していただきたい。それは、アメリカの所有物です。もちろん、ただとは言わない。そちらの要求が有れば、お応えします」
「チャンネルで動画にしたい」
デービーはプッと吹き出し、ご飯粒がメンディーの額に張り付いた。
「ありえない。YouTubeを潰しても阻止します。例えCIAがやらなくても、皇宮警察とモサドがやるでしょう」
セキリンが顔を上げた。
「イスラエルの諜報機関モサドと皇室の諜報機関皇室警察!メンディー、これはヤバいよ!」
「CIAは。モサドと皇宮警察から守ってくれるとでも?」
デービーは気持ち悪く笑った。
「それが要求なら?お応えします」
セキリンが言う。
「メンディー、そんなの渡したらズドンだよ!信用するな!」
「考えさせてくれ」
キューティクルがお神輿を奪おうとする。
「メンディー渡せ!逃げ切れねぇよ」
揉み合いになる。バラバラっとCIAのエージェントが入ってきて、一斉に拳銃を向ける。
メンディーは揉み合う中で、扉を開けてしまった。
一瞬にしてデービーもエージェントも完全燃焼した。
カーペットが燃え上がる。
「逃げるぞ!」
セキリンが言って、火を飛び越え、ドアから逃げる。デービーのキャデラックの運転手をお神輿で脅し、奪う。
セキリンが運転席でアクセルを踏んだ。
「セキリン免許はさ!フォークリフトの講習修了証しかないからね」
「フォークリフトの方が運転難しいから」
「そういう問題じゃねぇよ!無免許だから」
そう言っている間に、交通検問を突破する。
「どこ行くんだよ?」
キューティクルが叫ぶ。
「セキリン考えた!元々皇室の物だから、皇居に行こう」
「陛下は優しいから。守ってくれる」
メンディーが言う。
「在日米軍。CIA。次は皇室?絶対おこられるよ!」
キューティクルは頭を抱えた。