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陰謀論  作者: 武上 渓
4/13

ー第3話オレンジエア

まるで砂利道を走っているように、下から

バラバラ

バラバラ

と音がして、上下左右に揺れる。

キューティクルは眠れなかったが、メンディーはぐっすり眠ってイビキまでかいている。

ドミー機長は、それを見て笑う。


数時間が過ぎ、メンディーは

「ギャー!」

と云う悲鳴で目覚めた。

目の前に貨物機が迫っている。ドミー機長は操縦悍を目一杯前に倒している。貨物機はコックピットの上をギリギリで通り過ぎた。

「オレンジエア!横田管制!ニアミス!」

ドミー機長が叫ぶ。

メンディーは思わず、副操縦士側の操縦悍を右に切ってしまった。ドミーの操縦悍も連動している。機体は右旋回を始める。すると、通り過ぎた貨物機が右に現れた。

ドミー機長がメンディーを突き飛ばして、操縦悍を戻す。無線がヘルメットの中でわめく。

ーカーゴカリフォルニア123!コリュージョンコースに入った。回避!回避!ー

突き飛ばされたメンディーは、シートベルトをしているのに、天井に左手を突いてしまった。

その瞬間

シュボッ

と音がして、前方に円筒系の物が発射された。しばらく直進して右旋回して、貨物機に向かった。

ーこちらオレンジエア。カーゴカリフォルニア123。ノースカーゴ575は操縦困難。そちらで回避を!ー

円筒系の物は、貨物機に吸い込まれた。ドミー機長は操縦悍を手前に引いて、左足をヨガの行者のように使って、エンジンを全開スロットルにする。

貨物機は下に行き、爆発した。

ドンッ

下から突き上げられる。

その衝撃で、メンディーは操縦悍に覆い被さってしまう。機体は左旋回から降下して、爆発した貨物機の発する煙に突っ込む。

ドミー機長が開けていた三角窓から煙が流入する。キューティクルがどこからか、酸素マスクをつかんで、自分が被り、メンディーにも被せた。ドミー機長の分は無かったようだ。

ドミー機長がツイストゲームのように、手足を使って機体を立て直す。

「オレンジエアって何?」

ドミー機長はけたたましく笑い始めた。

「ワハハハハハハ!横田空域はオレンジで表記される。クッフフフフ!横田空域から来たのはオレンジエアと呼ぶぅ!あいつは北朝鮮の貨物機ぃフフフフ!大麻を積載能力を越えて積んでいるぅ!だから回避できましぇん!」

「この煙は?もしかして?」

「もしかしなくてもぉドヒャヒャヒャヒャヒャ大麻でゅえぃすぅ」

英語の無線が入る。見るとF16戦闘機が左右並走していた。

ーカーゴカリフォルニア123。尾翼が無い。このまま横田に着陸せよー

ーこちら横田管制。最優先で横田にアプローチできます。横田にアプローチしますか?ー

ドミー機長は完全にラリっている。メンディーが日本語で言う。

「機長が煙を吸い、操縦不能。アンコントローラブル!スコーク77を宣言する!」

ースコーク77了解。これからは日本語で管制するー

「尾翼が無いって戦闘機が言ってる!」

ー了解。カーゴ123、着陸コースから外れていない。そのまま、操縦悍の角度を維持。スピードを落とさず胴体着陸で止める。ギアダウンするなー

「死んじゃうよぅ」

ー落ち着け。多分燃料は残っていない。減速材を滑走路に敷き詰めた。止まる。信じろ!ー

「ふぁ~い!」

ー機首を上げる。気持ち操縦悍を引け。ラリってる機長に、フラップを下げて、スロットル60%と言ってみろ!ー

メンディーはポルトガル語で言った。

「了解!ファッふぁふぁふぁふぁ」

ドミー機長は多分、フラップを下げた。そして左足でスロットルを戻した。

機首が上がり、気持ち機体は安定した。


滑走路の灯火が迫って来る。滑走路脇にたくさんの赤色灯が見える。

ガンッ

機体後部が接地したようだ。

ーエンジンストップ!リバース!ー

「了解!エンジンストップからのリバース!」

ドミー機長がやってくれた。

ドンッ

と機首が落ち接地する。

機体は滑走路上に胴体着陸して、走っている。リバースが効いて、スピードが落ちる。

が。機体が右に向いて行く。

滑走路の右に寄れて行き、滑走路を外れた。

激しく揺れる。

永遠と思える時間が過ぎ、機体は止まった。

「ドォウァハッはぁ!イジェクションタァーイムー」

ドミー機長はメンディーとキューティクルの座席射出ボタンを押そうとする。高度が足りないと落下傘が開かないと云うヤフー知恵袋の記憶が脳内を駆け巡る。

2人とも必死でシートベルトを外し、シートから転げ落ちた。

シートが射出され、窓の外で

バンッ

と落ちるのを見届けた。


後部の裂けた機体の隙間から、ひんやりした機外に降りる。ドミー機長は大爆笑しながら射出されて、シートごと地面に激突して黙った。

太陽が昇り始めた。目の前に倒れている石が有るのが見えてくる。

「甲府石」

キューティクルが石に刻まれた文字を読んだ。

その根元にポッカリ穴が開いている。メンディーは穴の中を覗いた。サッカーボール台の木箱が有り。

ー日本帝国陸軍最重要機密ー

と焼き印が入っている。

メンディーは穴から取り出し、キューティクルに見せた。キューティクルはゆっくりうなづいて、前方を指差した。

横田基地のフェンスが有り、錆びて裂けている。

メンディーとキューティクルは、裂けたフェンスに全力疾走した。


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