ー第2話エドワーズ空軍基地
羽田からzipare片道4,7066円でバーバンク空港で降り、ノースハリウッドウェイをタクシーで南下し、マクドナルドを見つけた。バーバンク空港は経由地でエドワーズ空軍基地までの料金だが、安くしてくれなかった。
メンディーは、ポルトガル語でビックマックとダイエットコークを2人分頼んだ。店員は英語よりポルトガル語の方が上手かったのだ。
「横田基地のマクドナルドで働きたいんだ。なんかルート知らない?」
メンディーはポルトガル語で聞いた。
「フハハハハハハ!東京から来たんだろ!ここはカリフォルニアだぜ?電車で行けよ」
「日本だとルートが無いんだ」
ツボに入ったブラジル人店長は5分間笑い続けた。
「判った。カルフォルニア支社の人事部に聞いてやる。まず、こいつを平らげて待ってろ」
ブラジル人の店長は笑いながら、ビックマックとダイエットコークのトレイを差し出した。
「メンディー!」
ブラジル人店長がカウンターから叫んだ。
「これを持って、エドワーズ空軍基地に行け。バーバンク空港から飛行機が出てる…」
メンディーはメモ用紙を渡された。
「…このメモを空軍事務所のカウンターに出せ。ポルトガル語は通じる。乗る貨物機を指示される。その貨物機に乗れば横田基地まで直行だ。でも清掃員だが大丈夫かぁ?清掃員2人しか空きがない」
「思う壺で」
「横田基地のマクドナルド清掃員はな。ドラッグで死んだ奴の処理もするんだ。大丈夫か?」
「多分」
「なら良かった。今夜20時にエドワーズ空軍基地の空軍事務所カウンターに、このメモを提出しろ。21時の貨物便に間に合えば、明日は、横田基地のマクドナルドで働ける」
「そんな段取り良く?」
「横田のマクドナルド清掃員は常に人手不足だ。2日もたない」
「じゃあ新記録を狙うよ」
「あぁ神のご加護を」
メンディーはハイタッチして、マクドナルドを出た。
キューティクルが心配そうに聞いてきた。
「何言ってるかさっぱりわからんが、上手く行ったのか?」
「このメモで。明日は横田基地マクドナルド店の清掃員だ」
「面接とか?手続きとか?」
「無し。その代わりが有る」
「ヨシッ!言うな!やめろよ!そうとうか?」
「そうとうだ」
バーバンク空港に戻り、エドワーズ空軍基地行きの飛行機に乗った。
まだ、午後1時なので観光客の列にくっついてエドワーズ空軍基地を観光する。
午後20時に空軍事務所に行く。夜勤の事務員が、自動ドアを入った瞬間、コルトパイソンを向けてきた。ホールドアップする。
メンディーがポルトガル語で
「マクドナルドの清掃員です」
と言うと、銃を降ろした。
「アルバイトか?こんな夜に日系ブラジル人なんか恐いぞ。チビっちまったじゃないか?」
「気の毒だった。謝るよ。これを」
メンディーはメモを渡した。
「横田に行くのか?待ってろ、貨物機のクルーに連絡する」
10分ぐらいして、駐機場所を指示される。
それとおぼしき貨物機を見つけて、コックピットのパイロットに手を振る。上がってこいとゼスチャーする。
パイロットもブラジル人だった。
「機長のドミンゴだ。ドミーで良い」
握手する。
「メンディーとキューティクル。キューティクルは日本語しかわらない」
「OK、メンとキューで良いか?」
「それで。メンキューベリマッチ!」
「面白いなお前?気に入ったよメン」
「こちらこそよろしくドミー。どこに居れば良い?」
「メンはここ…」
副操縦士のシートを指差した。
「…キューはここ」
機関士のシートを指差した。
「副操縦士と機関士は?」
「2人とも昨夜のパーティでラリってる。君らに身代わりになってもらう。そこのパイロットスーツに着替えて、ヘルメットをしてくれ。規則で副操縦士と機関士がいないとフライトできない。だが、荷物は運ばなければならない。判るな?」
「飛行機は操縦した事が無い。彼も飛行機の機関は判らない」
「大丈夫。俺1人で飛ばせる。ただし…」
「ただし?」
「スイッチには一切触るな?よろけてもスイッチ以外に手を突け。墜落するぞ。5年機長をやってるが、なんだか判らないスイッチが有る。対応できないかもしれない。日本語のキューにも説明しろ」
とりあえず、座る椅子とシートベルトは確保できた。キューティクルはシートベルトをして、両手は小さく万歳した。




