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7月28日

 7月28日、今日は特に行く所がない。なので、夏休みの宿題をしつつ、自由研究をまとめていこうと思っているようだ。


 真人は外を見ていた。外から見えるのは、住宅地だ。外の景色を見るたび、真人は思う。河童のいる300年前のここは、いったいどんな風景が広がっているんだろう。もしタイムマシンがあれば、自分の目で確認したいな。


「おはよう」


 真人は振り向いた。夏江だ。なかなか降りてこないので、心配してやって来たようだ。


「おはよう」


 真人は1階に向かった。すでに朝食はできているようで、みそ汁のにおいがする。ここ最近、朝早くから出かけていることが多かった。なので、登校日じゃないのに朝早くから食べる事が多かった。だが、今日は朝から予定がないからゆっくりだ。


 真人は朝食を食べていた。いつもの変わりない食事だ。この家に河童がいる事以外は、いつもと違う夏休みだ。それが終わると、河童はどうなるんだろう。元の世界に戻るのかな? 寂しいけれど、出会いがあるから別れがある。別れを乗り越えて、人は成長していくのだ。それを受け止めなければ。


「自由研究、進んでるみたいで嬉しいわ」

「ありがとう」


 夏江は喜んでいた。いつもあまり進んでいない自由研究が、今年に限ってかなり進んでいる。母親としてとても鼻高々だ。この子はきっと、いい自由研究を作ってくれるに違いない。


「東京の変わり様について考えてるんだけど」


 それを聞いて、夏江は驚いた。こんな難しい研究をしているとは。どうしてこんな事を研究しようと思ったのか疑問だ。だが、あまり言わないようにしよう。


「すごいわ、真人」

「ありがとう」


 真人は朝食を食べ終えると、歯を磨いてすぐに2階に向かった。勉強だけではなく、河童に会うためだ。こんな夏休みはもうないだろう。夏休みに河童と過ごす時間も大切にしよう。


 真人は2階の部屋に戻ってきた。1階に向かった時に寝ていた河童は起きている。


「おはよう」

「おはよう」


 河童は笑顔で答える。それだけで笑顔がこぼれる。どうしてだろう。君に会えたからだろうか? それとも、大好きだからかな?


「自由研究、なかなか進んでるね」


 河童は自由研究を見ている。こんなにも進んだのか。きっと先生から褒められるだろうな。いい大人になるだろうな。


「そう。ありがとう」


 真人は机に座った。これから勉強をするようだ。その姿を見て、河童も何かを頑張らないとという気持ちになれた。自分は怠けものだが、真人に負けないようにしないと。そして、みんなに褒められないと。


「まさか、河童に会えるとは」

「驚いてるの?」


 河童は疑問に思った。人には見えないけれど、江戸時代にはいる。現代ではまだ見かけないけれど、今でも河童はいるんだろうか?


「うん」


 ふと、河童は考えた。真人は今年の夏に河童に会えたのを、嬉しいと思っているんだろうか? それによって、何かが変わったと思っているんだろうか?


「会えてよかったと思ってる?」

「うん」

「そう。僕もだよ」


 河童はほっとした。どうやら2人でいられるのを喜んでいるようだ。だが、そんな日々をもどれだけ続くんだろうという不安もある。だけど、今こうして2人でいる幸せを感じよう。




 昼下がり、真人は自由研究を進めていた。ふと、真人は思った。友達はどれだけ進んでいるんだろう。どんなのを研究しているんだろう。ぜひ知りたいな。


 と、玄関の開く音がした。この時間に敏郎が帰ってくる事はないので、おそらく友達だろう。そう感じて、真人は自由研究のノートを隠した。自由研究は再来月の1日に発表するまでは内緒だ。


 友達が2階の部屋に入ってきた。


「真人ー、自由研究、進んでるの?」

「うん」


 友達は驚いた。もう自由研究を進めているとは。やっぱり真人は優秀だな。尊敬できる。自分ももっと頑張らねばという気持ちになる。


「すごいなー。僕は全く進んでないんだよー」


 友達は全く進んでいない。どんな研究をするのか、まだ決まっていないほどだ。すでに始めている真人を見て、感心した。


 だが、真人は疑問に思っていた。もう進めているのが普通だと思っていた。


「すごいのかな?」

「すごいよ!」


 だが、友達はすごいと思っている。周りの子はほとんど進んでいない人が多いし、全くできていない人がちらほらいる。


「でも、どうして進んでるの? いつもそんなに早く進んでいないのに」

「ただ単に頑張ってるだけだから」


 真人は少し笑みを浮かべた。真人はそれがすごいと思っていないようだ。


「そうなんだ」


 頑張っているだけでこんなに進むのかな? 自由研究はもっといろんなのを調べるので、大変だけど、こんなに早く、どうして進んでいるんだろう。


「本当に何でもないの?」

「もちろんだよ」

「ふーん・・・」


 一緒に勉強をしているうちに、もう帰る時間になった。そろそろ家に帰らないと、母が心配する。


「じゃあね。バイバーイ」

「バイバーイ」


 友達は部屋を出て行った。友達は全く知らなかった。そこに河童がいるのを。河童は友達には見えない。


「僕との関係は秘密だよ」

「わかってるよ」


 真人は笑みを浮かべた。河童に出会ったのは、これからも絶対に言わないようにしよう。行ったら、みんなが大騒ぎするだろうから。


「どんな自由研究をしてるかは、話してはいいけどね」

「だけど、あまり話さないようにしておこう」


 河童は、自由研究の事を話してもいいと思っているようだ。だが、真人は自由研究を再来月の1日まで、両親以外の誰にも言わないようにしようと思っているようだ。


「ふーん・・・」

「だって、みんながそれを調べてくるだろうから」


 真人は警戒していた。こんな素晴らしい研究をしていたら、みんながその研究をしてしまうだろう。だから、誰にも言わずに研究しようと思っていた。


「そうだね」


 河童は笑みを浮かべた。確かに誰にも真似されたくない。自分だけの研究にしたい。


「明日は昔の東京の写真を色々見ようかな?」


 真人の予定に、河童は反応した。昔の東京の写真か。どれぐらい昔の写真だろう。とても気になるな。どこにあるんだろう。


「そうだね」


 真人は楽しみにしていた。明日はどんな事がわかるんだろう。そして、河童はそれらを見て、何を思うんだろう。

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