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7月26日

 7月26日、真人は徐々に自由研究を進めていた。だが、やるからには完璧でなくてはならない。まだまだ調べる事柄がたくさんある。しっかりと進めていかないと。


 真人は昨日の夜から支度をしてきた。あとは出発するだけだ。今日は東京の都心に行き、その移り変わりを河童に見せるのだ。今の東京の都心を見て、河童はどう思うんだろう。


「今日はどこへ行くの?」

「東京の都心に行こうかなと」


 河童は思った。都心はどうなっているんだろう。自分の目で見てみたいな。そして、未来の江戸に目を向けたいな。


「ふーん・・・」


 東京の都心にはちらっと行ったけど、どう思っているんだろう。河童は気になっている。もっと変わりゆく風景を見てみたいと思っているんだろうか? きっと勉強になると思っているんだろうか?


「チラッと行ったけど、どうだった?」

「こんなに変わるんだなと」


 河童は驚いている。300年でこんなに変わるんだな。時代の流れでこんなに風景って変わるんだなと。


「驚いた? 今度はもっと驚くかも」

「本当?」

「うん」


 真人は家を出て、最寄り駅のひばりが原駅にやって来た。今日もひばりが原駅には多くの人がいる。彼らはこれから都心に行く人々がほとんどと思われる。今日はやけに家族連れが多い。今は夏休みだからだろう。今日も朝から暑い。ほとんどの人は暑そうな表情で、汗をかいて電車を待っていた。


 しばらく待っていると、電車がやって来た。長い10両編成だ。2人はそれに乗った。車内は混雑していて、冷房がかかっているのに蒸し暑く感じる。


 二子玉川を過ぎると、地下区間に入る。河童は地下区間を、興味津々に見ている。江戸時代には地下なんて見た事がないから、新鮮に感じる。それ以上に、その中を走る鉄道にも驚いている。


「すごいなー。こんな地下を走る乗り物なんて」

「すごいでしょ?」


 真人は笑みを浮かべている。300年でこんなに人間の技術力は進化した。というより、300年前は鉄道すらなかった。こんなに世界は変わった。そう考えると、人間って、本当にすごいなと思う。


「うん」


 河童はただただ驚いている。人間の進化って、すごいな。


「こんなに東京は発展したんだね」

「それだけじゃないよ。東京はもちろん、幾つかの街も発展したんだよ」


 それだけではない。世界全体が変わっていく。日本各地の市町村は、建物が新しくなり、昔の面影は徐々に消えていく。だか、貴重な建物や自然は今でも残されている。昔の面影を残すのが、今の人々の与えられた使命なのだから。


「そうなんだ。日本はこうなってしまうんだね」


 河童は戸惑っている。300年前の風景も、いつかは思い出になってしまう。そしていつの日か、今見ているような風景になってしまう。果たして、それでいいんだろうか? こうして風景は変わらなければならないんだろうか?


「うん。驚いてる?」

「うん。あの頃の穏やかな風景は、もうなくなってしまったのかな?」


 河童は下を向いた。あの頃の風景はやがて思い出になってしまうのか。そう思うと、寂しくなってきた。あの頃の風景、残しておけないんだろうか?


「いや、田舎にはそんな風景がまだ残ってるよ」


 だが、真人は知っている。田舎はまだまだ昔の風景が残っている。例えば、田畑や自然だ。それは昔から変わっておらず、山などの自然は昔のままで、人々を魅了している。自然の風景が好きなのは、昔の今も変わっていない。それに魅了される人々の心は変わっていないのだ。


「そうなんだ」


 電車は減速し始めた。そろそろ秋葉原駅だ。


「着いた!」


 電車は三越前駅に着いた。2人は降りた。ここで銀座線に乗り換えて、末広町駅を目指す。本当は秋葉原を目指すが、乗り換えの少なさを考えて末広町から秋葉原へ向かう。今日はこの辺りを歩く予定だ。


 2人は銀座線のホームにやって来た。銀座線は昭和2年、日本初の地下鉄として開業した。だが、これから乗る区間はその後に開業した。ここを走る電車はどこかクラシックだ。開業当時の電車を再現したものらしい。


 2人は末広町駅に着いた。秋葉原へはここから少し歩く事になる。どんな風景が広がっているんだろう。河童はとてもワクワクしている。


 2人は秋葉原にやって来た。秋葉原は日本有数の電気街で、家電量販店が立ち並ぶ。家電量販店も、300年前はなかった。家電というより、電気すら当時はなかった。河童には、それが全くわかっていない。


「ここが、秋葉原?」

「うん。日本一の電気街」


 河童は辺りを見渡した。高いビルが立ち並んでいる。江戸時代では考えられない光景だ。こんなにも変わってしまったら、昔の光景など、見つけられないだろう。そう思うと、世界のありとあらゆるものはなくなり、そして新しいものが作られる。まるで人間の生と死のようだ。永遠にあるものはないんだろうかと思ってしまう。


「電気街?」

「そうか。この時代にはないけれど、今では家電っていうのがあるんだよ。冷蔵庫とか、電子レンジとか」

「ふーん。そんなのができるんだ」


 河童はただただ驚いている。こんなに世界って変わるんだ。300年前では全く想像できないよ。現代のスピードには、とてもついていけそうにないよ。


「時代は変わったでしょ?」

「うん」


 だが、ここでも河童は寂しそうな表情になる。遊んでいた場所がみんな、なくなってしまう。自分の居場所がなくなってしまう。そう思うと、残念でしょうがない。だけど、時代の移り変わりの中で、そうなるべきなんだろうか?


「こんな風景になってしまうんだね」

「ああ。仕方ない事なんだよ」


 真人は街が発展するのはいい事だと思っている。世界が豊かになり、多くの人が幸せになる世界こそ、理想だと思っている。


「うーん・・・」


 だが、河童は浮かれない表情だ。変わってほしくないのに、どうして変わってしまうんだろう。豊かさを求めて、世界は変わってしまうんだろうか?


「どうしたの?」

「あの頃が懐かしいよ」


 河童は思った。自由に遊んでいたあの頃が懐かしい。自然が豊かだった頃の東京が懐かしい。だけど、そんな風景はもう戻ってこない。東京はこんな風景になってしまった。


「だよね」

「あの街並みは戻ってこないのかな?」


 だが、真人は知っている。今でも昔の風景が広がっている場所もある。神社の門前町である、浅草や柴又だ。ここは古くからの街並みが残っていて、門前町としての風景が色濃く残っている。


「うん。もう戻ってこない。だけど、残っているところもあるんだよ」

「本当?」


 河童は驚いた。もう何もかも変わったんだと思ったら、まだ残っている所があるとは。それは嬉しいな。どこだろう。行ってみたいな。


「うん。浅草とか柴又とか」

「そうなんだ。行ってみたいな」


 真人は決めた。今度は浅草や柴又に行ってみようかな? そして、どこが変わり、どこが昔のままなのか考えたいな。


「また今度、行ってみようよ」

「うん」


 明日の予定は決まった。明日は浅草と柴又に行ってみようかな?

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