8月19日
8月19日、真人は今日も朝から自由研究を進めていた。だが、なかなか進まない。どうして人は戦争をするのかという疑問に、適当な答えが見つからない。どうすればいいんだろう。筋は決まっているのに。
「どうしたの?」
真人は振り向いた。話しかけてきたのは河童だ。河童は暇そうな表情だ。遊んでほしいようだ。だが、遊ぶことはできない。自由研究を仕上げなければならない。
「タイトルを考えたんだよ」
真人は、自由研究のタイトルを考えた。きっとこれは、今までで一番すごいものになりそうだぞ。
「ふーん、どんなの?」
「『東京の移り変わりと未来』ってタイトル」
河童は感心した。なかなかいいタイトルだな。これは素晴らしい。きっと多くの子供たちや先生、そして真人の両親が驚くだろうな。
「そっか。すごいね」
河童に褒められて、真人は嬉しくなった。河童のためにも、この自由研究を頑張らなければ。
「ありがとう。よーし、頑張らなくっちゃ」
「頑張ってね」
「うん」
真人は忙しそうだ。冷房の効いている部屋だが、汗が出ている。それほど大変なのだろう。だけどそれは、来月のためだ。頑張っている真人の姿を見ていると、自分も頑張らなければという気持ちになる。
「まだまだ調べる事が多いかもしれないけど、頑張らなくっちゃ」
「そうだね・・・」
と、河童は何かを思い出した。一体何だろう。真人は首をかしげた。
「どうしたの?」
「いや、何でもないよ」
だが、河童は何も答えようとしない。何か言ってはならない事でもあるんだろうか? それとも、いつ元の世界に帰るのかというのを隠しているんだろうか?
「いつまでいられるのか、不安になったの?」
「うん」
どうやら河童は、いつまでここにいられるのか不安になったからだ。ここは河童のいる時代ではない。いつかは元の世界に帰らなければならない。それがいつなのか、真人にはわからない。だけど、今こうして一緒にいられる時間を大切にしよう。そして、いつまでも忘れないようにしよう。
「そんなに悲しまないで」
突然、真人は河童の肩を叩いた。河童は顔を上げた。どうしたんだろう。
「ありがとう」
突然、河童は窓の方に向かい、外を見た。どうしたんだろう。また外の景色を見ている。自分にとっては当たり前の景色だけど、河童が最初にこの景色を見たときは、さぞかし驚いただろうな。
「どうしたの? 外を見て」
「これからこの風景って、どうなるのかなって思って」
河童は思っていた。これは300年後の風景だ。これからこの風景はどうなっていくんだろう。それは真人にもわからない。だけど、変わらないものって、何だろう。
「河童・・・」
「この先の未来、全く想像できないよ。だけど、豊かな自然があるといいなって」
河童は願っていた。この先も、豊かな自然があってほしいな。そして、空気がきれいで、戦争のない世界がいいな。それが僕たちの住みやすい世界だから。
「そうだね。人間は昔、公害で大変な事をしたけど、それから環境を考えた生活を送るようになったんだよ」
戦後、公害問題が起こり、公害病が起こった。そして、裁判も起こったという。それ以後、人々は環境を大切にするようになり、ある程度環境は良くなった。
「そうなんだ」
「うん。だから、自然を大切にするって気持ちを持ってるんだよ」
河童は感心した。かつてこんな事があったんだな。だけど、誰かを思いやるように、自然を思いやる気持ちも大切なんだな。人々はそれを忘れていたから、戦争を起こしてしまったのかな?
「昔はこんな事をしてたんだね」
「そうらしいよ。今では全く考えられないけど」
真人も信じられなかった。だけど、それは事実だ。その教訓を忘れずに、人々は地球環境の事を考えつつ、発展してきた。
「反省する点も、変わらない所なのかな?」
「そうかもしれないね」
確かにそうだ。人々は反省する事ができる。そして、それを教訓に発展していく。ひょっとして、戦争をする理由は、思いやりを忘れていたからだろうか? それとも、また別の理由があるんだろうか?
「真人ー、ごはんよー」
「はーい!」
お昼ごはんができたようだ。真人は部屋を出て、1階に向かった。
真人はダイニングにやって来た。今日はそうめんだ。丼に盛られたそうめんに、色とりどりのあしらいが飾られている。とてもきれいだ。
「今日はそうめんよ」
「おいしそう」
真人は席に座った。その横では、夏江がすでに食べている。
「いただきまーす!」
真人はそうめんを食べ始めた。ひんやりとしていて、とてもおいしい。
「おいしい!」
「そうか、それはよかったわ」
ふと、夏江は気になった。自由研究は順調に進んでいるんだろうか? あんまり自由研究の事を言っていない。なかなか進んでいないように見える。本当に大丈夫だろうか? 夏江は不安になっていた。
「夏休みも終わりが近づいてきたけど、勉強、頑張ってるか?」
「うん。終わりが見えてきた」
「そっか。お母さん、期待してるわよ!」
夏江は笑みを浮かべた。その笑みを見ると、頑張らなければという気持ちになれる。そして、もっといい自由研究にしなければと思えてくる。
「わかった! 頑張るよ」
ふと、夏江は思った。夏休みに入って、誰かと話をしているようなしぐさを見せている。誰と話しているんだろうか? まさか、独り言だろうか? 真人の様子、どこかおかしいな。
「どうしたの?」
「最近、誰かとしゃべってるような気がするけど、どうしたの?」
真人は戸惑った。河童と話しているなんて、誰にも言えない。河童との事は、誰にも秘密なのに。河童と話していると言ったら、大きなスクープになってしまうだろう。
「い、いや、何でもないよ」
真人は汗をかいている。何も言いたくないようだ。
「そう・・・」
夏江は不思議そうに真人を見ている。真人は焦っている。どうにか河童が帰るまで秘密にしないと。




