7月22日
7月22日、真人はいつものように目を覚ました。だが最近、いつもと違う気がしている。河童がいるのだ。普通はあり得ないのに。まさか妖怪がいるなんて。どうかしちゃったんだろうか? 夢のように見えるが、本当の事だ。
真人は1階にやって来た。河童がいない以外は、普通の朝だ。夏江がいて、敏郎はすでに出勤していて。
「おはよう」
「おはよう」
真人は眠たい目をこすっている。今日も夜遅くまで勉強をした。勉強をしなければ、夏江に怒られると思っているようだ。
真人は椅子に座った。すでにテーブルには朝食が並んでいる。今日はご飯とみそ汁と卵焼きだ。真人はご飯を食べ始めた。
「宿題、順調?」
また言ってきた。真人はうっとうしいと思っている。頑張っているのに、いちいちうるさいな。
「うん」
「そう。頑張ってね」
夏江は真人の肩を叩いた。真人は気合が入った。期待しているようだ。夏江の期待に応えないと。
と、真人は思った。ここは昔、どんな場所だったんだろう。河童と出会って、とても気になった。できればそれを、自由研究のネタにできたらな。
「お母さん」
「どうした?」
夏江は驚いた。質問してくるなんて、あんまりなかった。なのに、どうしてだろう。
「ここって昔、どんな所だったの?」
夏江は戸惑った。ここに住み始めて10年も経っていない。ここの歴史なんて、全くわからない。自分には答えられない。
「どうして知りたいの?」
「ちょっと聞きたいなと思って」
夏江は考えた。だが、思いつかない。真人が悩んでいるのに、何も答えられない。きっと自由研究で悩んでいるに違いない。そんな真人の力になれなくて、申し訳ないと思っていた。
「ごめんね、全く知らないの」
「そうなんだ」
真人はがっかりした。どうしよう。自由研究が行き詰まってしまう。
「まさか、自由研究のネタにしようと思ったの?」
「いや、そんなわけじゃないんだよ」
真人は、自由研究についてはまったく言おうとしなかった。自分の自由研究に自信が持てなかった。こんな自由研究ならば、夏江に怒られるだろうと思っていた。
「そうなんだ」
だが、夏江は思った。これを自由研究にしてもいいじゃないか。きっと、みんな驚くだろうな。
「なかなか面白そうじゃないの。やってみてよ」
「そうだね」
真人は苦笑いをした。夏江にも認めてもらった。自由研究を母に認めてもらったのは初めてだ。こんなに嬉しいとは。
真人は朝食を食べ終えて、歯を磨くと、すぐに2階の自分の部屋に向かった。とにかく勉強をしないと。中には8月の登校日に提出しなければならない宿題もある。頑張らなければ。
真人は朝から勉強をしていた。そこには河童がいる。河童は遊びたくてたまらなかった。だが、真人が遊んでくれない。朝から勉強ばかりだ。
「ねぇ、遊ぼうよ」
河童は真人をゆすった。だが、真人は反応しない。勉強に集中している。
「勉強中なんだから」
真人は勉強中だと言って、全く付き合おうとしない。だが、河童はあきらめようとしない。
「遊ぼうよ」
突然、真人は河童を突き飛ばした。もうかまうのはやめてほしい。勉強に集中できないじゃないか。
「やめて!」
「ごめんなさい・・・」
と、そこに夏江がやって来た。夏江には河童が見えない。いるのは真人だけのように見える。
「うーん・・・」
「どう? 進んでる?」
真人は振り向いた。そこには夏江がいる。まさか来るとは思わなかった。
「ううん」
真人は自信がないようだ。夏江は笑みを浮かべている。まだ夏休みは始まったばかりだ。これからもっと頑張ればいいじゃないか。
「頑張ってね。私の子なんだから」
「うん」
と、玄関が開く音がした。誰かが来たようだ。誰が来たんだろう。友達だろうか?
「まさくーん、一緒に勉強しようよー」
真人は顔を上げた。どうやら友達のようだ。一緒に勉強をしようと思ってやって来たようだ。
「いいよー!」
すぐに、2階の部屋に2人の友達がやって来た。友達はランドセルを背負っている。その中に勉強道具があるのだろう。
「お邪魔しまーす」
「自由研究、進んでるの?」
友達は思った。自由研究でいつもつまずく。真人は自由研究が進んでいるんだろうか? とても気になる。
「ううん」
どうやら真人も進んでいないようだ。お互い様だな。お互い、再来月の1日に提出できるように頑張ろう。
「そっか。僕もなかなか進まないんだ」
「そうなんだ」
ここでも真人は思った。ここが一体、どんな場所だったのか、友達からも知りたいな。ひょっとして、両親から聞いているかもしれない。
「ちょっと聞きたいんだけどさ、ここって昔、どんな場所だったのかな?」
2人の友達は少し考えた。ここがどんな場所だったかなんて、全く知らない。両親から聞いた事がない。両親はここに来て10年ぐらいしか経っていない。なのにわからないよ。
「うーん、僕もわからないなー。この辺りの事、全く聞いた事、ないんだ。力になれなくて、ごめんね」
「いいんだよ」
真人はがっかりした。やっぱりわからないようだ。いろんな場所で資料を見て、調べなければならないんだろうか?
「まさか、それを自由研究にしようと思ってるの?」
「うん」
2人の友達は驚いた。まさか、これを自由研究にしようとしているなんて。壮大すぎて、なかなかやる気になれそうにない。これはすごい自由研究になりそうだな。
「そうなんだ。面白そうじゃん! やってみてよ!」
「そうだね。やってみよう!」
真人はやる気が出てきた。明日から早速、いろんな所を巡って、資料を集めて、自由研究を作ってみよう。きっとみんな驚くぞ。