7月21日
いつものように真人は目を覚ました。まだまだ夏休みは始まったばかりだ。だが、真人は焦っていた。早く宿題を済ませないと、大変な事になる。まだ先の事なのに、とても焦っていた。問題は自由研究だ。今年こそはしっかりとしたネタでないと、夏江に怒られるだろう。
真人はリビングに向かおうとした。だがその時、何かの気配を感じた。真人は振り向いた。だが、そこには誰もいない。ひょっとして、幽霊にみられているのかな? 真人はゾクッとなった。
真人は階段を降りて、リビングにやって来た。すでに敏郎は工場に出かけていて、夏江のみだ。いつもの夏休みの朝だ。
「おはよう」
「おはよう」
真人はダイニングのテーブルに座り、朝食を食べ始めた。今日はみそ汁とごはんの他に、ベーコンエッグだ。とてもおいしい。そして思った。今日のお昼は何だろう。今日の予定は特にない。ただ、テレビゲームをやって、夏休みの勉強をするだけだ。
「宿題進んでる?」
夏江の声で、真人はびくびくした。もう言わないでくれ。だが、聞かなければ。夏江には逆らえない。
「まぁまぁ」
真人は震えている。全く進んでいないのに、まぁまぁと答えてしまった。
「そう・・・。また自由研究がつまらなかったら、お母さん、承知しないからね」
夏江は強い口調になった。毎年毎年、自由研究で近所の主婦に言われている。それがとても気になる。今年こそはもっといい自由研究をやってほしい。これは家族のためだ。これ以上恥をかきたくない。そのためには、真人が自由研究を頑張るしかないんだ。
「はい・・・」
真人は下を向いた。今年こそは頑張らねば。そう思うと、とても緊張してくる。応援している夏江のためにも、今年はいい自由研究を作らないと。
「ごちそうさま・・・」
真人は食べ終わると、リビングに向かった。数十分ここで休んでから、歯を磨いて宿題をしよう。テレビでは、アニメがやっていた。昔のアニメの再放送らしく、画質が古い。だが、面白い。真人は食い入るように見ていた。
「はぁ・・・」
だが、そこに夏江がやってきて、テレビの電源を消した。真人は驚いた。どうしたんだろう。まさか、もう見るなというんだろうか? もっと宿題をしろというのか?
「アニメばかり見てないで、宿題するの!」
夏江は真人を平手打ちした。こんなに前でして、勉強をしろと言わなくてもいいのに。
「いてっ・・・。わかったよ!」
真人は歯を磨きに行った。すぐに勉強をしないと。夏江はその様子をじっと見ている。真人は素直に母の期待に応えていた。
歯を磨き終わった真人は、そのまま2階に向かった。頑張れと言っても、こんなに朝早くからやらなくてもいいのに。だが、耐えなければ、強くなれない。
真人は2階に向かい、ベッドに仰向けになった。自由研究をどうしたらいいんだろう。考えても考えても、全くネタが見つからない。どうしたらいいんだろう。全くわからない。
「うーん・・・。自由研究か・・・」
真人はゆっくりと目を閉じた。真人は思った。寝たら、素晴らしい案ができるかもしれないな。
夢の中で、真人は夏江に怒られていた。また自由研究の事で笑いものにされたからだ。
「真人、何なのよこの自由研究は!」
母は怒っている。またもやつまらない自由研究だった。いつも思うんだが、どうしてこの子はダメなんだろう。あきれてしまう。
「ごめんなさい・・・」
「また笑いものにされてるじゃないの!」
それでも夏江は怒っている。真人は下を向いて、その話を聞いている。
「何か言いなさいよ!」
と、そこに奏斗がやって来た。夏江を止めようというのか? 真人のもとにやって来た。
「もうやめたって、おばちゃん!」
奏斗は夏江の前に立ち、通せんぼをした。これ以上真人にガミガミ言うのはやめてほしい。これ以上言い続けたら、真人が精神的に深いショックを受けるだろう。
「うるさいなぁ!」
奏斗は夏江を殴った。夏江は驚いた。まさか、奏斗に殴られるとは。
「痛い!」
「いい加減にしろ!」
夏江は去っていった。そして、真人は目を覚ました。ちょっと寝ていたのか。そう思うと、少しほっとした。まだまだ夏は始まったばかりだ。来月が終わるまでに自由研究を完成させればいいじゃないか。そんなに急ぐ事はない。
「うーん、悩むなー」
真人は頭を抱えた。いまだにいい案ができない。徐々に汗をかいてきた。冷房をかけているのに。
「ちょっと外を見よう」
真人は気晴らしに窓の外を見た。そこには住宅地が広がり、その先には副都心の高層ビルが立ち並んでいる。いつもの風景だ。ふと思った。ここはかつて、どんな場所だったんだろう。とても気になるな。
真人は実家の屋根を見た。するとそこには、河童がいる。まさか、河童と遭遇するとは。これは夢だろうか? いや、これは現実だ。
「えっ!? 君、誰?」
それを聞いて、河童は驚いた。まさか、自分の姿が見えるとは。そんなの初めてだ。
「僕が見えるの?」
「うん」
真人には見えているようだ。それを知って、河童はほっとした。まさか、見えるとは。妖怪は誰にも見えないものだと思ってきたが、まさか、この少年が気付いたとは。
「僕、河童だけど」
ふと、真人は思った。どうしてこんな東京に来たんだろう。ここは昔と比べると、かなり発展したのに。どうしてここに河童がいるんだろう。
「どうしてここにいるの?」
「未来の江戸を見に来たんだ」
未来の江戸を見に来たとは。江戸とは、東京の事だろうか? でも、どうしてここに来たんだろう。疑問だらけだ。
「来てよ!」
「わかった」
真人は窓を開けた。河童は真人の部屋に入った。河童は驚いた。これが未来の家の中なのか。未来の江戸を見て、いろいろ変わっていて驚いた。明るい家が増えて、道は灰色になり、人々は鮮やかな服を着ていた。そして人々は、大きくて速い乗り物に乗っていた。何もかも変わってしまった江戸、これが未来の江戸の姿なのか。
「ここが未来の家なの?」
「うん」
河童は辺りを見渡した。天井が白い。自分がやって来た頃の江戸とは全く違う。
「300年前と全然違うね」
「300年前から来たの?」
真人は驚いた。300年前から来たとは。そして、ふと考えた。その時の日本って、どんなんだったんだろう。東京の歴史を調べたいな。
「うん」
真人は机に座って、勉強を始めた。とても真剣な表情だ。河童は呆然として、その様子を見ている。こんなに勉強をするなんて。300年前とは比べ物にならない。こんなに江戸は変わってしまったんだな。
「何をしてるの?」
「勉強。夏休みだから、大量の宿題があるんだよ」
こんなに勉強をしているとは。この子はとても真剣なんだな。ぜひ頑張ってほしいな。
「そうなんだ・・・」
「その頃は、学校なんてないからね」
江戸時代には、学校というものはなかった。現代は教育がとても発達し、研究も発達した。そして日本を含めて世界は、300年前と比べてとても発展した。
「へぇ」
と、そこに夏江がやって来た。今さっきの真人の声が気になったようだ。
「誰と話してるの?」
「えっ!?」
これがあの子の母なのか。こんなに服装が変わってしまうとは。
「誰とも話してないよ」
「そう・・・」
夏江は河童に気付かないまま、1階に戻った。真人はびっくりした。夏江には河童が見えないとは。子供には妖怪が見えないんだろうか?
「見えないんだね」
「うん。子供しか見えないんだ」
何はともあれ、河童に出会えたんだ。とても面白い夏休みになりそうだ。そして、自由研究のテーマも決まりそうだ。東京の移り変わりとか、どうだろう。これから河童と東京の風景を見て、河童の反応を見つつ、東京の歴史を調べるのもよさそうだ。