8月6日
8月6日、今日は広島の平和記念日だ。今からちょうど80年前の午前8時15分、広島に原子爆弾が落とされた。そして、多くの人が亡くなった。その爆弾はとても強力で、その3日後にも長崎に落とされたという。それ以後、広島は毎年8月6日を平和記念日とし、平和公園で追悼式典が行われる。
真人は起きて、外を見た。ふと、真人は思った。80年前、広島はどんな朝を迎えたんだろう。今日も普通の1日が始まると思ったんだろう。だが、その日の8時15分に原子爆弾が落とされたことによって、普通の日常が奪われてしまった。真人は度々、平和学習でそれを知った。そして、広島に行った事もある。原爆ドーム、平和資料館にも行った。あまりにも衝撃的だったな。そういえば今年は駅前大橋ルートが開業するなど、駅前が変わった。また行ってみたいな。
「おはよう」
真人は振り向いた。そこには河童がいる。
「おはよう」
真人は笑みを浮かべた。今日も河童がいる。それだけでどうしてこんなに嬉しいんだろう。非日常だからだろうか?
真人は1階に向かった。今日も朝食を食べないと。
ダイニングにやって来ると、そこには夏江がいる。夏江はリビングにいたが、真人がやって来るとダイニングにやって来た。
「今日は8月6日だね」
「うん」
真人はハッとなった。今日は平和記念日だ。あの時間には毎年黙とうをしている。今回も黙とうをしないと。世界が平和になりますように。もう戦争が起こりませんように。
「ちゃんと黙とうしないとね」
「うん」
真人は朝食を食べ始めた。その様子を夏江は幸せそうに見ている。ここ最近、真人の評判がいい。自由研究がしっかりと進んでいるからだ。
真人はニュースを見ている。明るいニュースが多いが、その中には広島の平和記念日の事がやっている。それを見て、真人は改めて、今日は8月6日なんだ、広島の平和記念日だと感じる。だが、いつもとは違う。今年はあれから80年という節目の年だ。だからこそ、例年以上にみんなが注目するのだろう。
「どうしたの?」
夏江は真人の様子が気になった。何を考えているんだろう。
「いや、何でもないよ」
「そう・・・」
だが、夏江は不審に思っていた。ここ最近、真人の様子がおかしい。自由研究を進めているからだろうけど、いつもと違って、より一層何かを考えているようだ。
「何でもないってば」
だが、真人は何も言おうとしない。真人は何か秘密を隠しているんじゃないだろうか? 秘密があるのなら、調べないとな。だが、言わないようにしよう。真人に怒られるだろうから。
「わかった。何も言わないわ」
「ごちそうさま」
真人は朝食を終えて、リビングに座った。テレビでは、広島の平和公園の映像が映し出されている。平和公園には多くの人が来ている。その中には総理大臣の姿もある。今日はとても大事な日だと改めて実感する。
8時14分になった。いよいよその時間が迫ってきた。隣には夏江がいる。もう準備は整っている。と、夏江の反対側のソファーには、河童がいる。だが、夏江は気づいていない。夏江には河童が見えないようだ。河童は静かにテレビを見ている。
「いよいよだね」
8時15分になった。いよいよ黙とうの時だ。
「黙とう!」
それとともに、2人は目を閉じて、黙とうをした。河童も目を閉じた。2人はテレビなどで知った広島の風景を思い浮かべていた。あまりにも悲惨だが、考えなければ。河童はそれを知らない。だから、世界が平和になりますようにと願っていた。
「黙とう終わり!」
2人は目を開けた。河童も目を開けた。
「あれから80年が経ったんだね」
「うん」
あれから80年が経った。年を追うごとに、経験者は亡くなっていく。そして、原爆の記憶も薄れていく。だけど、その悲劇を伝えていかなければ。それが僕たちの使命なんだ。
「あの頃は本当に悲惨だったんだよね」
「うん。絵本で見たし、夏休み中の登校日に聞いた。あの夜は全然眠れなかったし、寝たら悪夢を見たんだよ」
真人はそれを初めて知った時の事をよく覚えていた。あの時は眠れなかった。原爆を経験する夢を見た。飛び起きて、今が平和な現代だと知って、ほっとしたものだ。
「でも、戦後、広島は立ち上がった。そして、復興していった。でも、あの悲劇を忘れずに、毎年8月6日に祈りを捧げる」
思えば戦後80年、広島は復興していった。お好み焼きが名物になり、プロ野球チームができた。黄金期も経験した。そんな広島を、原爆で亡くなった人々はどんな気持ちで見ていたんだろう。この時代に生きたかったと思っているんだろうか?
「世界中の人々にわかってほしいね。原爆投下という悲劇があったという事を」
「そうだね」
と、真人は立ち上がった。歯を磨いて、勉強をしに行くようだ。とてもまじめだな。夏江は感心していた。
「さて、今日も勉強をするか」
「頑張ってね」
歯を磨いた真人は、部屋に入り、勉強机に座った。だが、河童は浮かれない表情だ。どうしたんだろう。何かあったんだろうか?
「さて、今日も頑張るか」
「ねぇ」
真人は振り向いた。河童は元気がなさそうだ。どうしたんだろう。
「どうしたの?」
「どうして人って、争いをしちゃうの?」
河童はその式典を見て思った。どうして人々は戦争をするんだろう。戦争はしてはいけないのに。わかっていてどうしてするんだろう。
「うーん、僕にもわからない」
だが、真人にはその理由がわからない。してはいけないと知っている。
「そう・・・」
河童は泣きそうになった。その理由は真人にもわからないんだな。戦争を起こさないためには、何が必要なんだろう。これも自由研究のテーマにいいかもしれない。
「大丈夫?」
真人は河童の頭を撫でた。河童は顔を上げた。真人はとても優しいな。戦争が嫌いっぽいな。
「うん・・・」
「うーん、強くなりたくて戦争をするのかな?」
真人は適当に答えた。強さを求めて戦争を行うのかな? 戦争によって、国は、人々は強くなっていった。だから、戦争は力試しじゃないのかな?
「どうだろう・・・」
適当に答えたが、その理由を母にも聞きたいな。今日の昼食の時に聞いてみようかな? どんな答えがあるんだろう。
「お母さんに聞いてみたいな」
「そうだね」
そしてお昼になった。昼食を食べるために、真人は1階に戻ってきた。真人は真剣な表情だ。どうしたんだろう。夏江は不思議に思っている。
「お母さん」
「どうしたの?」
急にどうしたんだろう。何か聞きたい事があるんだろうか?
「人って、どうして戦争をするのかな?」
それを聞いて、夏江は考え込んでしまった。とても難しい問題だ。どうして真人はこんな事を考えるんだろう。あまりにも難しい質問だ。
「うーん、私にもわからない」
「そうなんだ・・・」
真人は下を向いた。母にもわからないとは。これは難しい問題だな。でも、それほどやりがいのある自由研究になりそうだ。
真人は昼食を食べた。今日の昼食は肉野菜炒めだ。とてもおいしいのだが、戦争をする理由を考えると、おいしくなくなる。どうしてだろう。
真人は2階に戻ってきた。結局、その理由がわからなかった。河童は真人の表情からそれを察した。結局、夏江にもわからなかったんだな。
「どうだった?」
「わからなかった」
やっぱりわからなかったのか。河童は下を向いた。その表情を見て、真人は何かを感じた。それも自由研究のネタにしようと思ったのだ。
「どうしたの?」
「それも調べたいなと思って」
そうなんだ。でも、東京の歴史を調べるって決めたのに、どうしたんだろう。まさか、東京の歴史と平和を絡めていくんだろうか?
「それも自由研究のネタにしようかなって」
「そう・・・」
だが、それを聞いた河童の表情がおかしい。何かを考えているんだろうか?
「どうしたの?」
「何でもないよ・・・」
真人は首をかしげた。河童は何を考えているんだろう。まさか、戦争を起こす理由を考えているんだろうか?




