表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/43

8月5日

 8月5日、真人は田園都市線に乗っていた。田園都市線は渋谷と中央林間を結んでいる路線で、渋谷で東京メトロ半蔵門線と相互乗り入れをしている。また、その先の押上から東武電車とも相互乗り入れしている。


「今日はどこに行くの?」


 河童は首をかしげた。今日はどこに行って、自由研究の足しにするんだろう。そして、今日はどんな風景を見るんだろう。


「海を見てみようかなと」

「ふーん」


 河童は思った。よく見た風景だけど、江戸時代とは様変わりした。現代の東京は海を埋め立てて、海が小さくなっている。昔の風景は失われた。今でも残っている所って、どこなんだろう。


「東京の地形はどんなに変わったのかなと思って」

「そうだね」


 真人は渋谷駅でJRの埼京線乗り換えた。埼京線は大崎駅を境にりんかい線と相互乗り入れをしている。りんかい線は大崎からお台場を経て新木場へ向かう路線だ。ここまでの乗り換えが少し面倒だが、行かなければ。暑い中、2人は真剣に歩いている。大変だけど、自由研究のために頑張らないと。


 2人は埼京線のホームにやって来た。ホームには何人かの人が電車を待っているが、そのほとんどが観光客だ。今は夏休みだ。それを利用してお台場に向かうと思われる。


 しばらく待っていると、電車がやって来た。ダークグリーンの埼京線の電車だ。新木場行きの快速とあるが、りんかい線内はどの電車も各駅に停まる。2人は電車に乗り込んだ。


 その間、真人は考えていた。お台場ができる前、どんな風景が広がっていたんだろう。海はもっと広かったんだろう。だけど、今ではこんな風景になってしまった。あの頃の風景を生で見たいよ。もし、タイムマシンがあれば、あの時代に行けるのに。


 2人は東京テレポート駅で降りた。前回はゆりかもめで来ていたが、今日は埼京線とりんかい線を使ってやって来た。りんかい線は地下で車窓は物足りないが、スピーディーにお台場に行ける。もしお台場に行くなら、こっちの方が便利だな。


 2人はお台場を歩いている。お台場には様々な外観の建物がある。その中でもフジテレビの本社は印象的だ。どれもこれも素晴らしい。2人はそれらに見とれている。


 そして、2人は海を見ていた。その先には何も見えない。その先には千葉県があるんだろうか? それともアメリカ大陸があるんだろうか? 全くわからない。そして、お台場がない頃はどんな風景が広がっていたんだろうか? 全く想像できない。


「おーい、真人ー!」


 真人は振り向いた。同級生の小林がいる。まさかここで会うとは。小林はお台場で遊んでいるんだろうか? 小林は思った。どうして真人は海を見ているんだろうか? ここ最近、こんな事が多い。何かあるんだろうか?


「どうしたの?」

「埋め立ててなかった頃、海はどんなに大きかったのかなって」


 小林は答える事ができなかった。全く想像できない。というより、考えた事が全くない。真人はすごい事を考えるな。これは自由研究のネタにするんだろうか?


「えっ、どうしたの? 急に」

「いや、ちょっと思っただけ」


 最近、小林は思っている事がある。どうして真人は最近、東京の歴史を知りたいと思っているんだろうか? まさか、それを自由研究のネタにしようと思っているんだろうか?


「そうなんだ。どうして最近、歴史を調べてるのかな?」


 それを聞かれて、小林は戸惑った。どう答えればいいんだろう。全くわからない。


「いや、ちょっと気になって」

「そうなんだ」


 だが、小林は知っている。昔は海はもっと広かった。どんどん埋め立てられていき、こんな風になった。だから、海はもっと広かったんだ。


「もっと広かったと思うよ」

「本当?」

「うん。詳しくはわからないけど。佃って、島だったからね」


 やはり、佃って昔は島だったんだ。今はそうい見えないけど。その歴史は正しかったんだな。


「調べたよ」

「調べたんだ。なかなか歴史を知るのって、面白いでしょ?」

「うん」


 夏休みに東京の歴史を調べていくうちに、真人はそれが好きになってきた。そして、東京がもっと好きになってきた。どうしてだろう。


「もしタイムマシンがあったら、江戸時代のこの風景、見たいな」


 小林も納得した。もし、タイムマシンがあるなら、東京の風景を生で見たいな。絵画だけではわからない事ばかりだ。実際に目の前で見たら、感動が違うだろうな。


「そうだね。どんな風景だったのか、この目で見たいよね」

「うん」


 と、海を船が進んでいく。その船は、小笠原諸島に行くと思われる。


「あの頃はどんな船が通っていたのかな?」

「わからない。だけど、江戸時代は鎖国を敷いていたから、外国からの船は来なかったんだよな」


 江戸時代、日本は鎖国を敷いていて、海外との結びつきが盛んではなかった。そう思うと、日本が変わり始めたのは、海外との結びつきが強くなって、様々な文化が入ってきたからではと思えてくる。


「そうなんだ」

「1853年にアメリカから黒い船がやってきて、開国を迫ってきたんだ」


 まだ習っていないが、こんな事があったんだな。いつになったらそれを学ぶんだろう。


「そんな歴史があったんだ」


 真人は思った。もっと調べてみたいな。そして、来月1日に発表できたらいいな。


「もっと調べてみたいな」

「どうして?」

「いや、いろいろと調べたくてね」


 こんなに調べたいと思っているとは。ぜひ頑張って、来月1日に発表してほしいな。


「そうなんだ。頑張ってね」

「うん」


 海の向こうには高層ビルが見える。あの頃の東京とは別の風景が広がっている。あの頃の風景はもう戻ってこない。


「もうあの風景は戻らないんだね」

「うん」


 ふと、小林は思った。どうしてこんな風景になったんだろう。あの頃の風景がいいと思っていた人は、どう思っているんだろう。


「どうしてこんな風景になってしまった」

「それは、豊かさを求めるためだろう」

「そう、かな?」


 豊かさを求めて、こんな風景になったと言えば、納得する。でも、それでいいんだろうか? 生き物はみんな、それでいいと思っているんだろうか?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ