8月5日
8月5日、真人は田園都市線に乗っていた。田園都市線は渋谷と中央林間を結んでいる路線で、渋谷で東京メトロ半蔵門線と相互乗り入れをしている。また、その先の押上から東武電車とも相互乗り入れしている。
「今日はどこに行くの?」
河童は首をかしげた。今日はどこに行って、自由研究の足しにするんだろう。そして、今日はどんな風景を見るんだろう。
「海を見てみようかなと」
「ふーん」
河童は思った。よく見た風景だけど、江戸時代とは様変わりした。現代の東京は海を埋め立てて、海が小さくなっている。昔の風景は失われた。今でも残っている所って、どこなんだろう。
「東京の地形はどんなに変わったのかなと思って」
「そうだね」
真人は渋谷駅でJRの埼京線乗り換えた。埼京線は大崎駅を境にりんかい線と相互乗り入れをしている。りんかい線は大崎からお台場を経て新木場へ向かう路線だ。ここまでの乗り換えが少し面倒だが、行かなければ。暑い中、2人は真剣に歩いている。大変だけど、自由研究のために頑張らないと。
2人は埼京線のホームにやって来た。ホームには何人かの人が電車を待っているが、そのほとんどが観光客だ。今は夏休みだ。それを利用してお台場に向かうと思われる。
しばらく待っていると、電車がやって来た。ダークグリーンの埼京線の電車だ。新木場行きの快速とあるが、りんかい線内はどの電車も各駅に停まる。2人は電車に乗り込んだ。
その間、真人は考えていた。お台場ができる前、どんな風景が広がっていたんだろう。海はもっと広かったんだろう。だけど、今ではこんな風景になってしまった。あの頃の風景を生で見たいよ。もし、タイムマシンがあれば、あの時代に行けるのに。
2人は東京テレポート駅で降りた。前回はゆりかもめで来ていたが、今日は埼京線とりんかい線を使ってやって来た。りんかい線は地下で車窓は物足りないが、スピーディーにお台場に行ける。もしお台場に行くなら、こっちの方が便利だな。
2人はお台場を歩いている。お台場には様々な外観の建物がある。その中でもフジテレビの本社は印象的だ。どれもこれも素晴らしい。2人はそれらに見とれている。
そして、2人は海を見ていた。その先には何も見えない。その先には千葉県があるんだろうか? それともアメリカ大陸があるんだろうか? 全くわからない。そして、お台場がない頃はどんな風景が広がっていたんだろうか? 全く想像できない。
「おーい、真人ー!」
真人は振り向いた。同級生の小林がいる。まさかここで会うとは。小林はお台場で遊んでいるんだろうか? 小林は思った。どうして真人は海を見ているんだろうか? ここ最近、こんな事が多い。何かあるんだろうか?
「どうしたの?」
「埋め立ててなかった頃、海はどんなに大きかったのかなって」
小林は答える事ができなかった。全く想像できない。というより、考えた事が全くない。真人はすごい事を考えるな。これは自由研究のネタにするんだろうか?
「えっ、どうしたの? 急に」
「いや、ちょっと思っただけ」
最近、小林は思っている事がある。どうして真人は最近、東京の歴史を知りたいと思っているんだろうか? まさか、それを自由研究のネタにしようと思っているんだろうか?
「そうなんだ。どうして最近、歴史を調べてるのかな?」
それを聞かれて、小林は戸惑った。どう答えればいいんだろう。全くわからない。
「いや、ちょっと気になって」
「そうなんだ」
だが、小林は知っている。昔は海はもっと広かった。どんどん埋め立てられていき、こんな風になった。だから、海はもっと広かったんだ。
「もっと広かったと思うよ」
「本当?」
「うん。詳しくはわからないけど。佃って、島だったからね」
やはり、佃って昔は島だったんだ。今はそうい見えないけど。その歴史は正しかったんだな。
「調べたよ」
「調べたんだ。なかなか歴史を知るのって、面白いでしょ?」
「うん」
夏休みに東京の歴史を調べていくうちに、真人はそれが好きになってきた。そして、東京がもっと好きになってきた。どうしてだろう。
「もしタイムマシンがあったら、江戸時代のこの風景、見たいな」
小林も納得した。もし、タイムマシンがあるなら、東京の風景を生で見たいな。絵画だけではわからない事ばかりだ。実際に目の前で見たら、感動が違うだろうな。
「そうだね。どんな風景だったのか、この目で見たいよね」
「うん」
と、海を船が進んでいく。その船は、小笠原諸島に行くと思われる。
「あの頃はどんな船が通っていたのかな?」
「わからない。だけど、江戸時代は鎖国を敷いていたから、外国からの船は来なかったんだよな」
江戸時代、日本は鎖国を敷いていて、海外との結びつきが盛んではなかった。そう思うと、日本が変わり始めたのは、海外との結びつきが強くなって、様々な文化が入ってきたからではと思えてくる。
「そうなんだ」
「1853年にアメリカから黒い船がやってきて、開国を迫ってきたんだ」
まだ習っていないが、こんな事があったんだな。いつになったらそれを学ぶんだろう。
「そんな歴史があったんだ」
真人は思った。もっと調べてみたいな。そして、来月1日に発表できたらいいな。
「もっと調べてみたいな」
「どうして?」
「いや、いろいろと調べたくてね」
こんなに調べたいと思っているとは。ぜひ頑張って、来月1日に発表してほしいな。
「そうなんだ。頑張ってね」
「うん」
海の向こうには高層ビルが見える。あの頃の東京とは別の風景が広がっている。あの頃の風景はもう戻ってこない。
「もうあの風景は戻らないんだね」
「うん」
ふと、小林は思った。どうしてこんな風景になったんだろう。あの頃の風景がいいと思っていた人は、どう思っているんだろう。
「どうしてこんな風景になってしまった」
「それは、豊かさを求めるためだろう」
「そう、かな?」
豊かさを求めて、こんな風景になったと言えば、納得する。でも、それでいいんだろうか? 生き物はみんな、それでいいと思っているんだろうか?




