7月20日
それは2025年の7月20日の事だった。今年は様々な意味で節目の年だ。昭和が始まって100年、広島、長崎に原爆が投下され、日本が終戦して80年だ。だが、多くの人々はあまり気にしていない。それほど、過去の事と思われているようだ。だが、忘れてはならない。そして、そんな過去を語り継がなければならないだろう。
その間に、東京はすっかり変わった。高層ビルが立ち並び、古い建物は次々と近代的な建物に変わった。地下鉄をはじめとする鉄道は次々と開通し、戦前とは様変わりしていく。東京の風景はめまぐるしく変わっていく。だが、そんな中でもそのままで残っている風景もあるはずだ。そして、それを語り継ぐ場所もある。果たしてこの先、東京はどうなっていくんだろう。それは、誰もわからない。
東京の隣、神奈川の郊外にあるニュータウンに住む小川真人は生まれも育ちも神奈川だ。両親との3人暮らしで、兄弟姉妹はいない。いたって普通の家庭だ。年々出生率は下がっていき、娘は1人だけという家庭が増えた。このままでは少子高齢化が進んでしまうだろう。
真人はいつものように目を覚ました。昨日から夏休みだ。何をして遊ぼう。全く考えていない。だが、遊ぶだけではだめだ。夏休みの宿題もある。そう考えると、遊ぶ気力がなくなってしまう。
真人は1階のリビングに向かった。いつものように目を覚ましたが、昨日から登校日まで休みだ。のんびり起きてもいい。
「おはよう」
真人はリビングにやって来た。そこには父、敏郎と、母、夏江がいる。敏郎はこの家の近くの工場で朝から夕方まで働いているが、夜まで残業になる事がある。夏江は専業主婦で、教育熱心だ。だが、真人はそんな夏江に抵抗している。
「おはよう」
「今日から夏休みだね」
それを聞いて、真人はびくっとなった。夏休みと言えば宿題だ。いつも宿題の事で夏江に言われている。今年こそはしっかりとした結果を出さなければ。特に自由研究は毎年怒られている。今年こそは頑張らないと。でもそのためには、何を研究するかが問題になってくる。つまらない研究では、怒られるだろう。
「うん」
「まぁ、宿題がたくさんあるけど、ゆっくりと頑張れよ」
敏郎は真人の肩を叩いた。真人に期待しているようだ。
「わかった」
真人は頑張ると言っているようだ。だが、不安でいっぱいだ。自由研究でまたへまをしたら、怒られる。
真人は朝ご飯を食べ始めた。ごはんとみそ汁とベーコンエッグだ。普段はご飯とみそ汁だが、今日はおかずが増えている。夏休みだからかな?
「どうしたんだい?」
「自由研究が思いつかなくて」
それを聞いて、夏江は反応した。今年もまた悩んでいるのか。早く決めて、頑張りなさい。
「そっか」
「ごちそうさま」
真人はご飯を食べ終え、リビングに向かった。リビングのテレビからは、ニュースが流れている。今日も暑くなるようだ。
「うーん・・・」
「難しいな」
敏郎は思っている。自由研究は誰しも悩むものだ。だけど、頑張ればなんとかなるさ。
歯を磨いた真人は、2階に向かった。とりあえず勉強を頑張らないと。中には登校日までに提出する宿題もある。それを優先して進めないと。もしできなかったら、先生に怒られるだろう。
真人は勉強をする前に、空を見てぼーっとしていた。今頃、友達はどうしているんだろう。宿題をしているんだろうか? テレビゲームをしているんだろうか? 外で遊んでいるんだろうか?
「真人ー、勉強しようぜ」
突然、友達の声が聞こえた。同級生の譲、奏斗だ。まさか来るとは。
「うん!」
しばらく待っていると、2階に2人がやって来た。2人はランドセルを背負っている。勉強道具を持ってきたようだ。比較的成績が優秀な真人は、そこそこ頼りにされている。
2人はランドセルを置き、勉強道具を取り出した。今日は一緒に勉強をしようというようだ。
「自由研究、どう?」
「まだ決まっていない」
真人は不安でいっぱいだ。早くやらないと、夏江に怒られる。頑張らなければ。2人もあせっている。
みんな自由研究は進んでいないんだな。まぁ、夏休みはまだ始まったばかりだから、これから頑張ればいいじゃないか。
「そっか。僕も決まってないよ」
「大変だね」
「うん」
お互い、悩んでいるようだ。だけど、再来月の1日までには頑張って完成させよう。
「とりあえず、一緒に勉強しようぜ」
「うん」
2人は折り畳み式のテーブルに座って、勉強を始めた。真人は勉強机に座っている。だが、2人はあまり進まない。
「ここ、わからないな」
すると、勉強机に座っていた真人は立ち上がり、アドバイスをした。
「これはこうするの」
「ありがとう」
ようやくわかった。やっぱり真人は優秀だな。
「どういたしまして」
彼らは気づかなかった。その様子を河童が見ている事を。
ふと、譲は誰かがいるのに気づいた。だが、誰もいない。誰かがいる気がしたのに。何だろう。
「どうしたの?」
真人はその表情が気になった。外を見て、何があったんだろう。
「いや、何でもない」
「そう」
その後も、彼らは勉強をした。わからない所は真人に教えてもらい、真人ほどではないけど、順調に進めた。
正午になった。そろそろ昼食の時間だ。家に帰らないと。
「じゃあね、バイバイ」
「バイバイ」
2人はそれぞれの家に帰っていった。真人は2人を見送った。その隣には、何かがいる。だが、それでも真人は気がついていない。