ゆいこのトライアングルレッスンU2〜ホストたくみはいい波乗ってんね〜!〜
「シャンパン入りまーす!」
「イェーイ!」
わたしは、たくみがいるホストクラブに、日々通っている。
「今日も〜、ゆいこは〜、いい波乗ってんね! 隣の〜、あなたも〜、いい波乗ってんね! 財布の〜、中身も〜、いい波乗ってんね! みんな〜、今日も〜、いい波乗ってんね!」
ここは、わたしをお姫様にしてくれる場所。
キラキラ輝く夜の世界だ。
「いつも指名ありがとな! やっぱり、ゆいこが一番可愛いよ」
「それ、他の女の子にも言ってんでしょ?」
「俺はいつだって、ゆいこだけだよ」
「ホントにぃ?」
× × ×
ご機嫌で帰宅すると、ひろしがいた。
「また、アイツのところに行ってたのか?」
「関係ないでしょ?」
「いい加減、夜遊びはやめろ!」
ひろしが、ムッとしている。
「せっかくいい気分だったのに、台無し!」
「あれは、ただの疑似恋愛だ」
「そんなの分かってるわよ!」
「たくみは調子のいいことばっかり。全然ゆいこを大切にしてない!」
「女の子を喜ばせる仕事なんだから、別にいいじゃない!」
「俺なら、もっとゆいこを大切にできる」
「えっ?」
「黙って、俺にしとけよ!」
「そ、そんな冗談やめてよね?」
わたしは、逃げるようにその場を立ち去った。
たくみは、ナンバーワンホストだ。
彼に会いたい女の子は沢山いる。
分かってる。向けられた笑顔は、甘い台詞は、ただのお仕事だって……。
でも、心のどこかで願ってしまう。
それが、上辺だけではないと……。
× × ×
「ウェーイ! 今日も来ちゃった!」
「ゆいこ、もう飲んでんのか?」
「ぜーんぜん! まだまだイケますぅー!」
案の定、その日、わたしは酔い潰れてしまった。
「たくみ〜、たくみ〜」
「目覚めましたか、俺のシンデレラ?」
「うーん……。あれ!? わたし……、どうして!?」
気がつくと、わたしはたくみに背中の上にいた。
「このまま、家まで送ってくよ」
「ありがと……」
たくみは、いつものたくみに戻っていた。
時間はとっくに0時を回っていた。
魔法はすっかりとけてしまったようだ。
「俺さ、ゆいこを落とすためにホストになったんだぜ?」
「えっ、何それ?」
「ひろしに負けたくなかったから」
「それが、なんでホストになることなのよ!」
「他の女の子を相手してる俺が気になって、嫉妬して、俺のことばっかり考えてたんじゃない?」
「えぇっ!? これって、たくみの思う壺だったの!?」
「俺の一番になりたくて必死なんだもん。可愛すぎ!」
「当たり前でしょ! わたしを誰だと思ってんのよ! ねぇ、もっとわたしだけを見てよ! わたしだけの王子様でいてよ!!」
「ゆいこ、ホント俺のこと好きだな?」
「いじわるぅ」
「俺もゆいこを指名するよ。この先も、ずっとゆいこだけ」
「へっ……」
「大丈夫、この魔法はとけねぇーよ」
明日は『ひろしとたくみの恋愛マジック』をお届けします!