1 『入社』
暗いゲームに映し出されたの部隊壊滅の一文。
「クソが!」
俺はそう言いながら机を強く叩いた。
一瞬、キーボードとマウスが宙に浮き、テレビの画面が真っ暗になる。
「電源抜けたかな・・・大丈夫か?バグったりしないかな」
少しの焦りを感じつつ、電源を入れ直しテレビをつける。
暗い画面が明るくなり、画面が青く光る。
「ブルースクリーン! 初めて見たぁ!!」
瞬間、画面に文字の羅列がずらっと現れる。
問題は、全部日本語ってことだ。
「あれ、英語じゃないんだ。英語じゃないにしろ日本語表示は初めて見たぞ」
俺は目を細め、画面に映る文字を読む。
「チートを撲滅するために、あなたも戦士になりましょう!お申し込みは下のURLから?」
・・・怪しすぎる。
だが・・・チート撲滅だ。
最近のゲームはチーターと言われる人が増えて増えて、なお急増中だ。
特にFPS。 一試合に一人ならまだいい、酷いと3人や4人。動画配信サイトではもっといるのも見たことがある。
そうなるとゲームは機能しないし、怪獣大戦争を見守ることしか出来ない。
別にチートそのものを否定するつもりはない。
オフラインや一人用のゲームなら好きに使えばいいさ、だが・・・オンラインで一般プレイヤーに迷惑をかけるなら話は別だ。
奴らは一般プレイヤーが時間をかけて得たスキルを、ポンと出した金でそれを超越する。
そして、チートを使う奴は大体こう言う。
お前らもチートを使えばいい。 金がないから出来ないんだろ。 楽しければいい。
アホか、他者を傷つけてまでやるゲームに価値なんかあるもんか。
ボイスチャットで話しながら、作戦を練って、戦って、勝つから面白いんだろ。
その体験や時間には価値がある。
まぁ世の中には人力チートって言うのがあるが・・・
あぁ、これはめちゃくちゃゲームが上手い人って意味だ。チートに勝つ人間。 だから人力チート。名前考えたやつは天才だな。
だが、そんなプレイヤーも五千万人に一人、一億人に一人だ。 まじふざけんな。
かく言う俺も、今チーターに殺されて台パンで怒り発散中なわけだが・・・
「取り敢えず、URL押すか」
良い子は知らないURLのクリックはやめようね。
情報の漏洩とか、ウイルスぶち込まれる可能性がある。ありすぎるくらいだ。
この時の俺は、怒りのせいでおかしくなってたのか、勢いで押してしまった。
画面に写し出されたのは、割とポップな可愛らしい画面だった。
『一緒にゲーム業界を守ろう!』のスローガンと共に現れたのは、勤務時間や、給料など、いろいろだ。
「えっとなになに」
ゲームは好きだし、チート撲滅は望んでいる。
研修期間から、給料が30万
研修期間終了から50〜100万。 ベテランは150万を超える事も⁉︎
「うっわ! 一気に胡散くせぇ! この求人書いた奴アホかよ!もっとマシなこと書けよ!」
てか、仕事の内容って何だ。
軽く仕事の内容が説明されてる場所をクリックし、詳細を確認する。
ズラッと長い文章が出てきた。
「文章書くのも下手かよ・・・」
要約すると、システムに入り込み、チートを破壊。
大事なのは、チーターの抑制ではなく、チートそのものを破壊する事。
ここで疑問になるのが、悪用していないひと。つまり、オフラインや一人で遊んでる人の場合はどうなるのか。
ここは安心して欲しい。
数多あるオンラインゲーム会社と契約して、オンラインゲームで悪質なチーターを見つけたら要請がかかるらしい。
つまり、会社で手が回らないから、手伝ってくれと。そういうのを引き受けるらしい。
まじか・・・
「いやぁ、かなり胡散臭いが面白そうだよなぁ。給料いいし」
何より陰ながらゲームを快適に出来るようにするのは縁の下の力持ち感、役に立ってる感があって誇れる仕事になりそうだ。
「やってみて、イメージと違う場合はやめればいい。取り敢えず、送ってみるか」
開いたサイトに、実名、メールアドレス、電話番号を登録して、送信する。
数秒後、メールがとどいた。
ご応募ありがとうございます!
この会社は面接などはありません。
明日、以下の住所にお越しください。
と、社会人とは思えない、何なら会社とも思えない文面で綴られた文字をみて、ため息をつく。
「ん・・・ミスったか?」
勢いだけで行動してしまったことに頭を抱える。
だが、せっかく返信をいただいたんだ。 すっぽかすのは失礼だろう。
取り敢えず、明日見に行こう。
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翌日。 俺はある建物の前にいる。
掲げられた看板を見るが、英語が読めない。
「コ・・・コー?」
「コーデッド」
突然後ろから声をかけられる。
「なに?」
「それコーデッドって読むの。なに、新しいひと?入りなよ」
声の主は身長の高い女性だ。
赤い髪に腰くらいまである髪。 ポニーテールでライダージャケットの凛々しい女性だ。
赤い瞳とキリッと釣り上がった目が印象的だな。
「あなたは?」
俺は彼女に質問する。
「私はθ」
「シータ?本名ですか?」
俺がそう質問すると、彼女は首をふる。
「この会社じゃ本名は使わないの、その代わりに呼び名があるけど。 社長のオメガ以外は、社員の本名は知らないわ。
「それはどうして?」
「社長曰く。 システムに入り込む際、何があるかわからない。だから、本名は教えない。覚えたりして、ボロが出るのも危ないって話ね。 詳しくは知らないけど」
シータと名乗る女性はそう言った。
「取り敢えず入りなさいよ」
そう言われ、シータについていく。
階段を上がり、長い廊下を抜けると色々な装置が置かれた場所にでた。
そこには人が数人いて、銃の模型やグレネードの模型を眺めながら話をしている。
そのさらに奥に、髭の生えた屈強な男が座っている。
髭が少し生え、メガネをしている。
体は大きく、何かスポーツをしていたのだろうか。
スーツがきつそうに見える。
「やぁ。君が応募してくれた新人くんか!」
「はい」
見た目は怖そうだが、フレンドリーな話し方に安心する。
「君は高校生か・・・まぁ、色々大変だろうが、頑張ろうな。今回バイトとして君を雇うから。時給は・・・5000円くらいでいっか・・・卒業後に働きたい場合は、雇うからその時言ってよ」
男はそう言った。
ゆっくりと立ち上がり、姿を見せる。
座っていたからわからなかったが、190センチはあるんじゃないだろうか。
「自己紹介が遅れたね。 私はΩ。そこの女性、シータから聞いてると思うけど、この会社、コーデットは本名を使わない。 君は・・・そうだな・・・Zと呼ばせてくれ」
オメガはそう言った。
どうやら俺は、ここで働くことが決定してしまったらしい。
初めましての方は初めまして。
いつも見てくださっている方はありがとうございます。
鬼子です。
今回からチートをコンセプトにした物語を展開していきます。
楽しんで読んでいただけると嬉しいです。
現在進行中のNo.Sと同時進行で進めていきます。
今回こちらの作品を読んで、興味を持った方は他の作品もチェックしていただけると嬉しいです。
よろしくお願いします。
では、また!