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7.森へ

 アンリは住まわずの森を空高く飛び周辺の大木をやり過ごして中央の泉があるところへ降り立った。


 そこには孤児院のみんなが集まっていた。アンリから手を離せば、佇む院長のもとへ走り抱き着いた。


「院長先生。無事でよかった……」


「おかえりなさい。リア」


 抱き着いて号泣するリアの背中を院長は宥める様に優しく擦ってくれた。


「「「「「リア、おかえり」」」」」


 顔を上げ見渡せば最後に会ったときより大人びたみんながいた。

 犬獣人のフォルはルルの腰を抱き寄せ仲睦まじそうだ。いや旅に出る前から二人の雰囲気には気付いていましたとも。


「ただいま!」


 涙を拭いみんなに挨拶を返した。ただいまとおかえりがこんなに嬉しい。

 するとアンリが近づいてきてリアを院長から離すとその肩を抱く。リアは真っ赤になるがアンリは動じることなくリアの所有権を誇示する。

 そこに少し呆れ顔の背の高い40代くらいの精悍な男性が現われた。


「リア、改めて紹介するよ。さっき俺たちを手伝ってくれたベンだ」


「ベンです。リアよろしく。アンリの愛しい人だという話は胸焼けがするほど聞いているせいか初めて会った気がしないな」


「あ、あの……。リアです。助けて下さってありがとうございます」


 色々な意味で恥ずかしい。獣化の時は小さい蛇だったから自分と同じくらいの年の人かと思ったら、ものすごく大人だった。失礼なことをしていないか心配になる。それに、アンリの愛しい人って……。詳しく聞きたいけど羞恥に耐えられないかもしれない。


「院長先生。みんなはもう住まわずの森で暮らしているの?」


「そうだよ。リアから貰った小さな“女神の雫”を泉にいれたら塩分が消えて真水になったし、他にも石を埋めたら土に栄養が行き届いて農作物が作れるようになった。ありがとう。リアの努力のお陰だよ。あとはみんなで木を切って家も作った。もともと住んでいた獣人たちも助けてくれたんだ」


 あの小さな“女神の雫”が役に立ったと聞いて、本当に嬉しい。祈りは一つも無駄にならなかった。


「もともと住んでいた?」


 それには犬獣人のフォルが答えてくれた。


「逃げてきた獣人たちがここにたどり着き、集落を作っていたんだ。この森の噂では凶暴な獣が出るって言われているだろう? それは獣人がわざと人間を脅かして森に入ってこれないようにしていたんだ。もちろん噂を流したのも彼らだ」


 ベンが大きく頷く。


「私たちは奴隷として貴族に掴っていたが逃げ出してこの森に住むようになった。生活はできるが真水だけは手に入らなくて深夜に人の住む村まで行って見つからないようにこっそり水を汲み運んでいたが、君のお陰で森の中でも真水が手に入るようになった。ありがとう」


「リア。彼は、避難してきた獣人たちのリーダなんだ。それで今回リアの救出に自ら力を貸すと言って下さった。ベン。改めて本当にありがとうございました」


 アンリがベンに向かって深く頭を下げたのを見てリアも慌てて同じように頭を下げた。彼がいてくれたおかげで助かったのだ。


「お互い様だよ。これからも力を合わせて頑張っていこう」


 その言葉に周りのみんなも微笑みながら力強く頷いた。


 そうしてリアはアンリと家族のもとへと帰ることが出来た。

 これでリアの『聖女の豊穣の旅』は本当の意味で終わったのだった。





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