59ユングリング家の災難2 〜老いぼれ執事が出奔して大笑いしてたけどあくる日領地が積んだ件〜
「は? エーリヒが出奔した?」
ユングリング家の家長レオは臣下の報告に一瞬戸惑った、だが。
「ははは! ちょうど良いではないか? あの老いぼれはそろそろクビにしようと思っていたのだ」
レオは辺境領を取り仕切っていたエーリヒを忌々しく思っていた。
辺境領は栄えており、十分な税収入がある、にもかかわらずエーリヒは王都の屋敷の予算を削減したのだ。
「全く無能の分際で生意気な。どうせ私にクビにされることを察して自分から逃げたんだろうが。ははは! だが手間が省けた」
「し、しかし、辺境領はエーリヒ様とノア様の二人で取り仕切っておられたのでは?」
「ノアの名は口に出すな! けがわらしい!」
「も、申し訳ございません」
レオは魔法が全てであり、それ以外のことは大事の前の小事と下に見ていた。
だが、ユングリング家の辺境領は決して豊かな土地ではない。
それを豊かな土地にしていたのは他でもない執事長エーリヒとノアの二人の尽力だった。
そのノアを追放刑に処し、更にエーリヒが出奔したということがどういうことか理解していない。
「安心しろ。実はエーリヒは近々クビにする予定で次の執事長のアテはあるのだ。そもそも一人位いなくなっても我が領は何も変わりはしない」
「はっ! 承知しました」
退出したレオの臣下はこう呟いた。
「明日にでも転職活動をしよう。というかエーリヒ様はおそらくノア様の元へ行かれたのだろう。この家は終わりだ。重要人物が二人もいなくなってしまって、沈没寸前の泥の船だ」
実は家族から冷遇されていたノアだったが、臣下達からの信頼は厚かった。
遊んでばかりで放蕩する主人であるレオや愛妾と豪遊ばかりして金ばかり使う一方の長兄テオと次男のルイ。その上、薄給でこき使われる。更にこの家の主人達は横柄で我儘だ。
それに比べてノアは臣下への態度は腰が低く、辺境領では執事長のエーリヒを師と仰ぎ、領地経営の手伝いもしていた。
自分達のメシが食えるのはノア様のおかげ、決して主人であるレオや馬鹿兄弟などの臣下としての忠誠心など持ち合わせてはいなかった。
彼らが忠誠を誓っていたのは人格に優れ、この家に安定した収入を約束してくれるノア様のおかげ。
実際、エーリヒは主人であるレオに嫌がらせをされたりしたが、それを上手く交わしていたのがノアだと皆知っている。
皆、ノアに忠誠を誓い、エーリヒに感謝と尊敬の念を抱いていた。
彼らはリリーを穢し、殺したのがノアだなどとは露ほどにも信じていなかった。
そもそも二人は愛し合っていた。
力ずくでモノにする?
リリーは喜んでノア様に抱かれるだけだ。だからあり得ない。
真犯人が誰なのかなど臣下達は全員が知っていた。
臣下は更にこう続けた。
「そうすると辺境領の官吏達はエーリヒの後について行くんじゃないか?」
彼はそう言うと、自分もエーリヒの向かう先、ノアが養子になると噂になっているユングリング辺境伯の領地アシュフォードに向かおうと心に決めた。
☆☆☆
ユングリング家の家長レオはそう言えばと思い出した。
「ルイはいつまでアシュフォードの奴隷狩に行っているんだ?」
まあ、奴隷を犯して殺す快感を覚えたようだから、おそらく歯止めが効かなくなって犯しまくり殺しまくっているのだろう。
「まあ、私も若い頃はそうだったからな。血は争えんな」
二人の兄弟の狂った血は父親譲りのものだった。
「それにしても」
レオは思い出した。
「ノアは本当に自分が私の子だと思っていたのか?」
実はノアは養子だった。
王家からの直接の依頼で自身の子とした。
「まあ、ノアのことなんていい。老いぼれエーリヒのこともいい! これで領地の金が自由に使えるぞぉ! 全くとんだやっかい払いが立て続けにできたわ、わっはははは!!」
高笑いするレオ。
そんな彼はあくる日、自分の領地の債権が大暴落して一文無しになるなど夢にも思っていなかった。
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