きゅるりんポーズって瀕死に陥る武器だと思うの
な、なんでバレましたの? い、いえ……そんな筈はありませんわ。あの完璧な演技を見破れる筈がありませんもの。
「殿下ったらご冗談が過ぎますわぁ、私は何処からどう見てもリアノラですわ」
「ふーん……そう」
「う、うふっ?」
頑張ってリアノラみたいに“きゅるりん”ポーズをしてみる。これ、メチャクチャ恥ずかしいんですけど。よくこんなのリアノラは平気で出来ますわね。
わたくしの渾身の“きゅるりん”ポーズを見て一瞬、鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔をされた後、殿下はまた吹き出してしまわれた。口元を手で覆って、視線は横に逸らしている。うぐぐ……わたくしだって、死ぬほど恥ずかしいのに。少しは笑うのを我慢して下さいませ。
「君がそう言うなら、仕方ないな。信じてる事にしてあげるよ」
「……ご配慮に感謝致します」
うーん。体感的にこれって殿下にわたくしがリアノラの姿をしているってバレてる感じがしますわ。でも、ここで認めたらアリになってしまいますもの。アリ化を回避する為には何が何でも認める訳にはいきません。
「……それで? このままジェノワール男爵家に君を送り届ければ良いのかな?」
「ええ、お願い致しますわ」
暫く馬車の走る音だけが鳴り響く。困った……非常に困ったわ。リアノラとして、殿下と何を話せばいいのかしら。そもそも殿下とリアノラがどんな話を普段してるのかサッパリ分からない。
「ディア……いや、リアノラ嬢は明日もリアノラ嬢なのかな?」
「お、恐らくそうですわ」
「それはいつ迄続くのかな」
「……と、当分そうですわ」
「ふーん……」
な、何なのかしら、この会話は。どう考えてみてもバレてますわよね。イーロイズ殿下は非常に頭が切れるお方ですものね……無理もありませんわ。でも、だからと言って認める訳にはいきませんけど。
「リアノラ嬢と私は毎日ラブラブだったよね?」
「えっ…………ええ、そうですわね」
突然何を言い出すのだろうか。そりゃ確かに学園では、毎日仲睦まじげな姿をわたくしは見せつけられていたからラブラブ(?)なのだろう、多分。
「じゃあ当分の間、これからは思う存分君を愛していいよね」
「……は?」
リアノラの中身がわたくしだと確信されている筈のイーロイズ殿下が、爽やかな笑顔でそう言い放つ。え……それって、わたくしだって分かった上でおっしゃってるんですよね? どういう事!?
「明日からが楽しみだね、リアノラ嬢」
「あ、あはは……」
わたくしは何故か冷や汗がダラダラと流れて行く気がした。