神様って突然そういう事するよね
新連載始まりました。
今度は切ない恋愛モノを書こうと思ってたら、何故かまたコメディ路線に突っ走る様です。
おかしいなぁ……どうしてこうなった(笑)。
今作も沢山の方に楽しんで頂けたら、それだけで幸せです。
ブックマーク、評価、大歓迎です。
「じゃ、じゃーん! わたしは神様だよーん」
「「…………は?」」
ここは王立モンテロンド学園のとある教室の一角だ。
“わたくし”こと公爵令嬢カナルディア・ケシュクリーは、いつもの様に男爵令嬢のリアノラ・ジェノワールと激しい女のバトルを繰り広げていた。互いに今は取り巻きは無し、素の自分を出している。
男爵令嬢のリアノラは、ピンクの髪にキラキラ輝く大きな空色の瞳の、見た目は超絶美少女。ぎゅっと握った拳を口元にあてて“きゅるん”と上目使いをすれば、たいていの男は惚れてしまうだろう。
対して、わたくしカナルディアは公爵令嬢で薄紫色のロングヘアーを縦撒きにしたお嬢様スタイル。そして深い海の様な紺色の瞳は吊り上った、これまた美少女だ。
そう。お察しの通り、ここは前世で人気だった乙女ゲーム『桃色☆ファンタジア』の世界で、わたくしは悪役令嬢に転生している。そして目の前に居るこの作品のヒロイン、リアノラも同じく転生者だ。でも、それだけじゃない。
「なによ、この……ちんまいの」
突然現れた“自称神様”に向かってリアノラが、いぶかしげに視線を向ける。……リアノラの前世はわたくしの幼馴染で、いつもわたくしの彼氏を横取りする性格のひん曲がった悪友だった。
互いにこの世界に転生していて、とあるご令嬢のお茶会で再会した。最初は互いが転生者という事を知らなかったのだが、リアノラがこっそり呟いた「悪役令嬢ウッザ! どっかの伶香みたい」という言葉から転生者同士という事が発覚した。……伶香はわたくしの前世の名前だ。因みにこの幼馴染の前世の名前は知奈美だ。
「やめときなさいよ、そんな変なの触るの」
思わず喧嘩を中断して、空中に浮かぶ変な生き物を見つめる。神様というより、どっちかと云えば妖精に近い見た目をしている。小さな人形に羽が生えていて、何の素材で出来てるか不明だが透ける様で透けない絶妙な具合の布で出来たピンクのドレスを身にまとっている。足元まで伸びた髪も淡いピンク色だ。
「ちょっとぉ! 誰が“変なの”よ! この世界の神様に向かって失礼ね」
ふよふよと浮かびながら抗議の声を上げる自称神様。
「貴方たちってば、せっかく転生させてあげたのに、転生してからも喧嘩ばっかりだから……おしおきよっ!」
そう告げられた途端に、わたくしとリアノラの周りにまばゆい光が舞い……弾けた!
◆◇◇◇ ◇◇◇◇ ◇◇◇◆
「――――!?」
「……?」
目を開けられない程の光がおさまって、周りを見渡したけど先程と変わった様子は特にない。目の前に居るのは、ふわふわ浮いてる自称神様とわたくしだけ。
――――え、わたくし?
心臓が止まるかと思うくらいに鼓動が早くなってるのが分かる。ど、どういう事? なんでリアノラがわたしに化けてるの?
そんなリアノラの方も、驚いた表情でわたくしを凝視している。そして、手を伸ばしてきてペタペタとわたくしの顔を触ってきた。
「ちょ、ちょっと、何をするのです……か? え?」
自分の発した声に違和感を覚えた。これ、わたくしの声じゃない。
「何よ、何なのよ、何であんたが私になってんのよ」
「はぁ? それは、わたくしのセリフですわ! あなたこそ、わたくしの恰好をしてどういうおつもり?」
「え……私、あんたになってんの? げっ、マジで!?」
今度は自分で自分の顔をペタペタと触り出すリアノラ。わたくしも、自分の着ている服や髪の毛を触ってみる。
「えっ、髪の毛がサラサラしているわ! しかもピンク色!? それよりこのスカート、何で腰部分をこんなに折り返しまくって短くしてるのよ、はしたない」
「スカートの裾は短い方が可愛いからですぅ~。てゆーか、何よこの髪! ボンドででも固めてるの!? 針金みたいに硬いんだけどっ!」
「失礼ね! それでも毎日メイドが死にそうになりながら櫛を通してくれてるのよ! 鋼鉄で出来た櫛だけど!」
互いの容姿について思う所はあるけど、それよりも、何よりも……これは――――。
「……中身、が……入れ替わったという事?」
「……どうやら、その様ですわね」
放課後の教室に、大きな大きなため息が二つ……こぼされた。