【番外編】義理の弟は、姉の秘密を知りたがる2
番外編です。
3話+番外編の番外 の4話構成になります。
どうぞよろしくお願いいたします。
「行って参ります」
今日も姉は楽しそうに学園へ向かった。
姉を見送った後、俺は普段通りのスケジュールをこなす。
午前中は伯爵家を継ぐための勉強をすることが多い。
今日は経営学の勉強に勤しんだ。
昼前、たしなみ程度に剣術を習い、体を動かす。
汗を軽く洗い流し昼食を取った後、普段ならば再び机に向かう。
けれど今日は、昼食後に外出準備を始めた。
いそいそ着替えながら、ちらりと時計を確認する。
今から家を出れば、ちょうど姉の授業が終わる頃だろう。
(姉さんが、教えてくれないなら。俺が直接確かめに行く)
姉が放課後何をしているのか。
いつ聞いてもはぐらかされてしまうその理由を、俺は自分の目で確かめることにした。
当然、姉には秘密である。
言うと普段通りの行動をしないだろうし、そもそも俺が学園に行くことに反対するはずだ。
姉の動向を探る行為に罪悪感がないと言えば嘘になる。
けれど、あの花を姉に渡した人物が、姉と一緒に過ごしているかもしれないと思うと、行動せずにはいられなかった。
もし、はぐらかす理由にその人物が関係あるのなら......
そいつの目の前で姉を強く抱き寄せて、想いのまま深く口づける様を見せつけてやる。
そうしてそのまま、姉の首筋に吸い付いて赤い痣を無数につけるのだ。
俺の印が散りばめられていく艶やかな姉を、指を咥えて見ていればいい。
嫉妬でもがき苦しみ、ぐしゃぐしゃに心を掻き乱されて、姉を愛していいのは俺だけなのだと理解するまで。
最後は、その心をへし折ってやる。
それでも諦めないなら、その時は......。
どろどろとした気持ちがとめどなく溢れる。
しばらくすると、馬車の準備が整い、執事が呼びに来た。
全ての準備を整えた俺は、入口の方へと足を向けた。
俺が学園へ着いた頃、ちょうど授業が終わり生徒たちが帰宅準備や部活動を始めていた。
学園の前は、迎えの馬車が並んでおり、少々混在している。
俺は馬車を降り、学園の入校許可の手続きに向かった。
手続きは伯爵家の息子ということもあり案外簡単で、名前と理由を記入するだけでいいらしい。
本当の理由は書けないため、「入学前の校内見学」にしておく。
姉の動向を探るために校内を色々と見て回ることは、校内見学と言えなくもない。
それに来年は俺もこの学園に通うのだから、「入学前の校内見学」は間違いではないはずだ。
手続きを終え、俺はまず姉の教室へ行くことにした。
校内案内図を貰ったので、位置を確認する。
姉と鉢合わせないように気を付けながら教室へと向かった。
途中、外部の人間が珍しいのか、すれ違う女生徒とやたら目が合ったが、話しかけて来ないので気にしないことにした。
教室の前に着きそっと中を伺うと、まだ数人の生徒が残っていた。
けれど、見る限り姉の姿はどこにも見当たらない。
しばらく観察していたら、教室の端にある机に見覚えのある鞄が掛けられていることに気が付いた。
どうやら、姉の席はあそこのようだ。
鞄があるということは、まだ校内にいるはずである。
(今日も真っ直ぐ家に帰ってないのか)
予想していたことだが、心が重くなる。
姉が教室にいないので、校内を一通り探してみることにした。
校内を大体見終わる頃には、40分以上も時間が経っていた。
(どこにもいない......。となると、屋外か?)
校内案内図を見ながら、考える。
恐らくまだ探していない屋外のどこかにいるのだろう。
校内で勉強しているならまだしも、屋外で何をするのだろうかと少し疑問をもちつつ、どこか姉の行きそうな場所はないかと案内図をなぞる。
校庭、中庭と目を滑らせていると、ふと校舎の裏側に庭園があることに気が付いた。
(庭園か)
他に目ぼしい場所もなかったため、俺はその庭園から探し始めることにした。
校舎を出て、庭園へ続く道を進む。
用事のない生徒は殆ど下校しており、学園にいるのは何かしらの活動をしている生徒ばかりだった。そのためか、庭園までの道では誰ともすれ違うことはなかった。
しばらく歩いていると、花や木々が植えられた小さめの庭園へたどり着いた。
人気がなく静かで、風に揺れる木々の音が心地良く落ち着く空間だ。
何かの小説にでも出てきそうな、不思議な雰囲気が漂うそんな場所だった。
しばらく、その庭園を眺めていると、少し離れた草陰で何かが動いたような気がした。
目を向けると、草陰でしゃがみ込む一人の人物が目に入る。
こちらに背を向けているが、とても見覚えのあるその後ろ姿は間違いなく姉である。
(......姉さん!)
俺は姉に見つからない様、近くにあった木の陰にそっと隠れた。
ようやく姉を見つけたが、こんなところで何をしているのだろうか。
よくよく見てみると、姉はしゃがみ込み何かを観察しているようだった。
俺が隠れた木の陰からは、姉の視線の先は見えず、何を観察しているのかまでは分からない。
(何かあるのか?)
姉に気が付かれないよう、物音を立てずに近付く。
徐々に視界が開けていき、姉の視線の先にあるものが見えてきた。
少しずつ見えていくそれに、だんだんと心が黒く染まっていくのが分かる。
姉の視線の先にいたのは、一人の男子生徒だった。
酷く顔の整ったその生徒は、ベンチに座り静かに本を読んでいる。
庭園の背景と相まって、その様子は美しい一枚絵のようだ。
姉は、その男子生徒を穏やかな笑顔で見つめていた。
それを理解した瞬間、俺の心は嫉妬で埋め尽くされた。
宜しければ、評価をよろしくお願いいたします。




