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転生コンサルタントの地方再生  作者: ◻︎くまごろう×
序章 破壊される日常
2/5

2話 王命とくじ引き

 

「それはどういった意味があるのですか?」

 発言したのはカミラ先輩。私の一つ上で何度か他の会合で顔を合わせたこともある。


 そう、第2王子がこのような質問をさせるはずがない、というのがいつもと違うと思った原因だ。

 アント王国の国民規範3条には、"考え、行動すべし"と定められている。

 規範なので必ず守られているわけではなく、階級が低くなればなるほど実施されていない傾向があるがここは貴族院。

 そして第2王子は貴族院のトップであり、効率性を重視する傾向がある。このような話し方をするということには何かしら理由があるはず・・・

 しかし王子の返答で私の逡巡は吹き飛んだ。

「これは"王命"、だ。」


 "王命"これは文字通り王の命令だ。

 このアント王国は君主制の国家であり、国王の権力は絶対的である。そのため、王命に反するということは、国外追放もありうる。

  "王命"発言により、参加者の視線は自然と花瓶の中身に集まっていく。私も同様に植物を見た。10本10種類の植物、そして集まる10の視線。

 その時私は花瓶の違和感の正体に気づいた。これはただの植物ではない。くじ引だ。

 くじ引きの目的とは、"公平性の確保"である。

 選ぶ対象が公平性を欠くからこそ、選ぶ機会を公平に与えるものだというのが私の認識だ。

  ちなみにこの国にくじ引きというものはない。そっちみたいに遠慮という概念がなく、理論を持って自主的に選ぶ。そのため希望がかち合ったとしても理論的に相手を説得して解決する。どうしても決着がつかない時は何かの勝負で決める。


 花瓶の中身が"くじ"なのであれば、注目すべきは当たりとハズレである。ハズレを引くというリスクを極限まで減らし、当たりを可能な限り取りに行くのが最善だ。

 私はもう一度10種類の植物を見る。色もサイズも様々だ。特に目立つのが紅白のバラ・・そういえば見た目があまりにも違うから別種と数えていたが、バラが2つある。

 バラが2つある意味。赤と白のバラ・・・レッドローズとホワイトローズ・・・

 その名前は思い出深いとある"街"の名前だった


 我がクローバー家にはとある行事があった。それは子供が国立学校に入学する年の8月に旅行に行くというものである。国立学校は全寮制であり、卒業後はほとんどの生徒が就職する。最後の思い出づくりということだ。

 行き先は両親の思い出の地である南のリゾート地、ホワイトローズだった。

 ちなみにレッドローズとホワイトローズは別の領地ではあるがそれぞれ領地の端に街があり、地図上隣あっている街で、レッドローズは大人向け、ホワイトローズは家族向けになっていたらしい。

 私たちはホワイトローズしか行ったことがなかったが父がよく

「皆大人になったら皆でレッドローズに行こう」

 と言っていた。

 しかしその約束は果たされることはなかった。

 私にとっては3回目、長女であるメーベルが入学する年の旅行から帰ってきた次の日、領地南部の海底で巨大な地震が発生し、両街は壊滅的なダメージを受けた。高級ホテルは全て崩壊し、地盤沈下・隆起のせいで綺麗だった海岸線は見る影もなくなっていた。また、海に流れ込む川沿いで栽培されていた小麦も、津波により海水が川を侵食し、塩害でダメになってしまった。最終的に領主が夜逃げをし、現在までそのままという話である。


 そういう見方をすれば、黄色い百合イエローリリィもすでにない領地である。中規模以上の商会の本店、支店が軒を連ねる商業都市であったが、戦争の影響で崩壊。今はゴロツキがたむろする廃墟になっているらしい。


 10のうち3がすでに無い街、おそらく全てすでに無い街なのだろう。

 そしてこれまでの証拠と状況・第2皇子の性格から、おそらく復興プレゼン大会が今回の会合の趣旨といったところか。

 それぞれが選んだ領地について、復興方法をプレゼンさせる。これまでの会合の傾向を見ればそんなところだろう。


 おそらくハズレはローズの2領地だ。

 自然災害で崩壊した領地を復興させるのは大変な労力が必要だろう。 プレゼンにおいて"かかる"のは評価が低くなる。

 まぁ当たり前だ。無限の金と時間があればどんなこともできるだろう。

 ちなみに当たりはわからない。

 私は見ただけで植物の名前をはんべつすることかわできない。また、土地の名前を聞いただけでどこにあって何があるかなんてわからない。


 ☆☆☆この先しばらく・・・

 いつもの通り思考がより深みに落ちていきかけたところで、

「高貴な僕らに合うのはこれしかないよね」

 と言いながら、1人の男が花瓶に近づき、紅白のバラを手に取り赤いバラをもう1人に渡した。受け取った男は

「一応聞くけど僕らよりバラが似合うと思う人いないよね」

 と言った。

 2人はアルベルト兄弟。それぞれアルト、ベルトと名前があるが、いつも一緒にいるのでそう呼ばれている。ちなみに侯爵家の五男と六男である。たしかに彼らほどバラが似合う高貴(アホ)な貴族は他にいない。


 ・・・

  沈黙を肯定と受け取ったのか、アルトが

「それじゃあ貰うよ」

 と言い、2本のローズは花瓶からなくなった。


 その後はレディファーストに則り、メーベルを含む4人の女性が選んだ。黄色い百合は眼鏡の大人しそうな女性がが持って行った。そういえばあの人は見覚えがないな。

 ここまで6人が選び終わり、のこりは男性4人、植物も4・・・3本?

 気づくと部屋の入り口から一番遠い男性が白い花の植物を持っていた。

 いつ取ったんだ?全く気づかなかった。


 気を取り直して、最後に私とアル、クロード先輩が残った。

 残るは青い小さな花が特徴な植物と、香りが強いハーブ2つ。片方はカレーの匂い、もう片方はアジアンチックだ。

 全員で一斉に指を指すと先輩とアルがカレーの匂いのスパイスで被り私は青いのに決まった。

 この花可愛いと思うんだけどな。

 ただ、2人はお互い執着がなかったようで、アルが希望を変更し、皆の手に植物が行き渡った。


 私達3人が植物を手に席に戻ると、机の上には資料が置いてあった。表紙には『地方都市再生プロジェクト』と書いてある。


「それでは今回のミーティングについて説明しよう。気がついている者もいるかもしれないが、皆の手にある植物はすでに無い街の、領花である。」

 その言葉に驚いた顔が半分、私同様頷いたのが半分だった。

「選んだ領花=領地が皆の担当だ。そして領地を復興するため・・・」

 やはり、復興策を考える、か。

 現地調査が必要になるならば、この青い花の領地が近場だとありがたいが、

「領主となってもらうことにした。」


 ・・・ちょっと違った。

登場人物整理

今回の会合に出てきてる人たち。カルディア視点でなので名前が分からないキャラがいます。

物語の主要キャラクターとなるわけでは無いので悪しからず。


カルディア:主人公

アル:主人公の友人

クロード先輩:パーフェクトカップル

アルト:アルベルト兄弟(上)

ベルト:アルベルト兄弟(下)

存在感のない男:ギャルゲーの主人公(目が前髪で隠れている)、名前不明


メーベル:主人公の妹

カミラ先輩:クール系美女

眼鏡の娘:黄色い百合を選んだ。名前不明


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