決戦、そして日常へ
最終話です。
早速作戦が決行されることになった。
まずは背中の魔石攻略組が動く。
ウサタロウの肩に担がれた俺とバッダス。
グレーターデーモスの背中の魔石がある腹の下に潜り込む。
目的地に辿り着いたら、地面に剣を突き刺し急速離脱。
俺が離れると、主を失った聖剣が飛び上がり魔石を破壊。
防御結界を打ち砕く。
それが攻略組の役目だ。
もう一方の実行部隊のナデシコ組。
こちらにはタモツが付いている。
タモツはナデシコの護衛。
ゴレちゃんを使ってデスティーションの術式組直し中のナデシコをひたすら守る。
魔石攻略組が魔石を破壊したら、ナデシコがデスティーションを発動。
魔獣を異界の狭間に送り込み、ギッタギタにして殲滅するのだ。
ナデシコによると術式を組み替えたデスティーションは魔獣を覆いつくすことは出来ないが、ブラックなんとか弾でディスティーションに触れた敵を吸い込むそうだ。
戦場には巨大な魔獣が現れたとの知らせを受け、ほぼ全員である一〇人の召喚勇者も集まっていた。
大剣を担いだ召喚勇者が威勢のいい声を上げる。
「よっしゃ! 奴の注意は俺たちが受け持つ。おっさんは思いっきり暴れて来やがれ!」
「俺はおっさんじゃ……」
召喚勇者の勢いに飲まれしょぼくれた声をボソリと言った俺をミリモが庇う!
「お父さんはおっさんじゃないのです! お父さんなのです! あやまるのです!」
ミリモに食って掛かられてタジタジの召喚勇者たち。
深く頭を下げて謝らされていた。
「お、おう……すまん」
幼女を怒らせると怖い。
暴れて来いと言われた俺たちであったけど、実際に暴れているの召喚勇者たちだ。
前言通り召喚勇者たちは全力でおとりをしてくれていた。
グーレーターデーモスの口から吐かれた魔砲が召喚勇者たちを襲う。
だが、さすがは召喚勇者!
難なく避け、そして難なく防御結界で受け流した。
敵の注意が召喚勇者たちに向かっている間に、魔石攻略組である俺たちは魔獣の腹の下へと向かう。
魔砲や雑魚が全て召喚勇者たちに向かっていたので、何の苦も無く目標地点へと辿り着いた。
「ぷぐー!(なんだよ、楽勝じゃねーか)」
「そんなフラグが立つようなことを言うなよ」
「ぷぐ?(フラグってなんだ?)」
ウサタロウとバッダスが冗談を言っていると、バッダスの顔から笑みが消えた。
「ちょっと待て……あれは……」
俺たちの前に現れたのは俺の知っている顔だった。
「お久しぶりね、追放者のポータさん。そしてバッダス」
俺を追放し勇者パーティーの後釜に入ったマミーラだった。
なんで魔獣討伐に関係のないマミーラがここにいるんだろう?
俺には理解ができない。
「私の作戦をなにからなにまで邪魔をしないと気が済まないようですね」
バッダスが剣を構え、マミーラに対峙する。
「ポータを守るのが俺の役目だからな」
「真の勇者ポータの守護者というわけですか」
バッダスは答えなかった。
マミーラは怒りを孕んだ目でバッダスを睨みつける。
「あの日も、一人になったポータを始末しようと思ったら、お前の手引きで既に街からポータの姿をくらませていた後だったし!」
「お前の魂胆なぞ、最初からお見通しさ!」
「だからポータをパーティーから追い出す案を安々と受け入れたのですね!」
なにそれ?
なにその話。
バッダスが俺の守護者?
それに商人の俺が勇者だと?
そんな話、聞いてねーよ。
今初めて聞いたぞ!
「俺を守るってなんだよ?」
「すまん、俺の本当の役目は真の勇者であるポータを守ることだったんだ」
「真の勇者?」
「細かい話はあとでする。今ポータがするべきことは魔石の破壊だ!」
たしかに。
いまは細かいことなんて気にしている時じゃない。
なにをしに、ここにいるのか思い出した。
「おう!」
魔石の破壊。
それが今の俺の役目。
ナデシコは俺たちが魔石を破壊するのを待ちわびている。
「マミーラは俺に任せて、お前は魔石の破壊に向かえ!」
それを聞いたマミーラは激高する!
「そんなことさせるか!」
マミーラは俺に襲いかかる!
だが、バッダスに食い止められる!
「いけ! ポータ!」
「おう!」
杖でバッダスの剣とつばぜり合いをしているマミーラ。
簡単にはバッダスを打ち崩せず、歯ぎしりをする。
「格下のバッダスなぞすぐに倒して、ポータもあの世に送ってやる!」
その時、マミーラが強烈な衝撃によって弾き飛ばされた!
なにが起こったのかわからず、目を白黒させ混乱する。
「な、なに!? なにが起こったの?」
「すまんな。俺は一人じゃないんだ」
そこには……。
「クエイク!」
「おう、久しぶりだな」
マミーラを吹き飛ばしたのはクエイク。
クエイクの両手斧がマミーラの横っ腹に食い込みぶっ飛ばしていたのだ。
バッダスは意外な登場人物の出現で呆気に取られ足の止まっていた俺に怒鳴る。
「挨拶はあとでいい! お前のやることを済ませてこい!」
「お、おう!」
「ぷぐ!(いくぞ! 友よ!)」
「おう! 友よ!」
俺たちは魔石の真下にやって来た。
そして聖剣を地面に深々と突き刺す。
柄のギリギリまで突き刺したので簡単には抜けないだろう。
そして急速離脱!
しようとした時!
「させるかー!」
マミーラが襲って来た。
ドゴーン!
その時、再びマミーラが吹き飛ばされる。
マミーラは身体が燃え上がっていた。
火球だ!
「私のことも忘れないでね!」
「リンダ!」
バッダスもクエイクもすぐに追いついた。
「ここは俺たちに任せて、お前はここをすぐに離れろ!」
「でも、お前たちを置いてはいけない!」
それを聞いたバッダスは俺をどやしつける!
「お前が守るのは俺たちじゃない。ミリモだろ!」
そうだった!
俺は返事をせずに、ウサタロウに抱えられこの場を去った。
すると、聖剣から激しく放たれる聖なる光。
聖剣は一条の光となり、魔獣ごと魔石を貫く。
魔石は激しく輝くと同時に砕け散った。
*
「ポータがやりましたね」
「お父さんなので当然なのです」
「そうでしたね」
「おい、ナデシコ! そろそろ厳しいんでさっさとあの魔獣を倒してくれ!」
ナデシコに邪眼を放ちまくり、何度も石化させようとしていたグレーターデイモス。
だが、全ての邪眼をタモツが盾で防いでいた。
「あの魔獣、他の召喚勇者を無視してお前のことだけを狙っているな」
「デスティーションいや私をデイモスは脅威と感じているのです」
「まあ、最強魔法だからな」
「御託はいいので、ディスティーションの術式の書き換えが終わるまで私のことをしっかり守ってください」
「だけどよ、もうこの盾は限界だ」
「盾なら、そこにいくらでも転がってるじゃないですか」
ナデシコの視線の先には邪眼で石になった召喚勇者たちが転がっていた。
「あんな石化した盾なんて使えるか!」
「もう少し術式の構築に時間が掛かるので次の攻撃だけ耐えてください。そうしたら私が魔獣を必ず仕留めます!」
魔獣は邪眼ではなく魔砲を放って来た。
タモツの盾を完全に破壊するつもりのようだ。
ボロボロの盾では防ぐことは出来ない。
もう無理!
そう諦めかけた時、タモツを庇うものが現れた!
召喚勇者たちだ!
さっきまで石化して転がっていたのに今はなにごとも無いかのように立っている。
「お前ら、石化してたんじゃないのか?」
「このお嬢ちゃんの薬を飲んだら一瞬で回復したぜ!」
「前より元気なぐらいだ!」
どうやらミリモの薬を飲んだみたいだ。
小さい女の子なのにかなり腕の立つ錬金術師らしい。
「守りは俺たちに任せて、魔獣にトドメを刺せ!」
「言われなくとも、そうしますよ! デスティーション!」
デスティーションが放たれた。
ギュギュギュギーン!
目の前に現れる、漆黒の魔球。
中で稲光が光りまくる。
しかもそのサイズはあまりにも巨大。
巨大な魔獣の上半身を完全に飲み込んだ!
「いけるか?」
「いけますよ」
漆黒の魔球が黒く輝きそして歪む。
それと同時に魔獣が魔球の中に吸い込まれ始めた。
グギャー!
魔獣の悲鳴だ。
渦に巻き込まれるように魔獣が飲み込まれ始める。
上半身だけでなく、下半身、そしてシッポ迄飲み込み始めた。
「まるで、ブラックホールだな」
「ええ、改良に改良を重ねてデスディーションを超えた世界いや歴代最強の魔法と化しました」
「あの魔球に飲み込まれたら魔獣はどこに行くんだ?」
「魔獣は時限の狭間に……あっ!」
青ざめるナデシコ。
魔獣が完全に飲み込まれたあと、魔球の中に現れたのは……渋谷だ!
召喚勇者たちも青ざめた。
「えっ?」
「あれって?」
「渋谷だよな?」
どう見てもハロウィーンの夜の渋谷。
スクランブル交差点が人でごった返している。
「渋谷に魔獣を送り込んでいいのか?」
とんでもないことをしたことに気が付き、ガクガク震えるナデシコ。
強引にいつもの怪しいポーズを取る。
「リ、リア充の巣窟に魔獣を送り込んだからと言って何が問題なんですか!」
なおも続けるナデシコ。
「リア充滅びるべし!」
それを聞いた召喚勇者たち。
「リア充じゃしょうがないわね」
「渋谷の街が廃墟になっても俺たちには関係ないしな」
「俺もナデシコに賛成だわ」
「きっと地球防衛なんとかが来て倒してくれるだろ」
「撤収! 撤収!」
渋谷のリア充集団。
突如現れた魔獣をハロウィーンのイベントかなにかと勘違いして、ボコり始めた。
それはそれは暴れまくり。
魔石を砕かれて防御結界が無くなったので、かなり効いている。
半泣きになった魔獣は逃走し始める。
その先は……!
「秋葉原に向かってね?」
「なんで俺たちの聖地に!」
「ヲタクの聖地を守れ!」
「俺たちの聖地は俺たちの手で守るんだ!」
どうやら召喚勇者たちはヲタクと呼ばれる宗教の信者たちのようだ。
召喚勇者は次々と、異世界へとつながっている魔球の中へ飛び込んだ。
「ナデシコ、お前も秋葉を守りに行くのか?」
「当然です! タモツは秋葉になんて用の無いリア充ですからここに残るんですよね?」
「いや、最近はナデシコをヲタクをバカにしたことを反省してラノベを読み始めたんだけど、ラノベってスゲー面白いな。一瞬でハマったよ。特に好きなのはナデシコがコスプレしているドラゴン=マターグのラノベだな」
「ふふっふ。タモツもヲタの道に目覚めたんですね」
「う、うん」
「だが、甘い! 今の私のおすすめは『最弱商人』こと『クラスごと集団転移』ですよ。これを読まないと人生の三%は損します」
ぐいと、指を突きつけられてタジタジのタモツ。
「こ、今度読んでみる」
「じゃあ、行きますよ」
ナデシコはタモツの手をぎゅっと握る。
タモツの顔が真っ赤なのをナデシコは気が付いていなかった。
*
俺がミリモの元に戻ってくると、そこには元気なミリモと手を繋いだナデシコとタモツがいた。
あれほど嫌っていたタモツとてを握ってるなんて珍しいな。
厳しい戦いの後に恋心でも芽生えたんだろうか?
「お父さん、お帰りなさい」
「約束通り、魔獣を倒しましたよ」
「おう、すまない。ところでタモツと仲直りしたのか?」
タモツと手を握っていることに気が付いたナデシコ。
慌ててぶんぶんと手を振ってつないだ手を振りほどく。
おまけに顔が真っ赤である。
「こ、これは……なんでもないですよ」
「そうか、残念だな」
「残念?」
「お似合いのカップルと思ったんだけどな」
「そうですよ。付き合いましょう」
「お似合いの? カップル?」
「ぷぐー!(そうだそうだ、付き合え!)」
ウサタロウもミリモも、ナデシコとタモツが付き合うことを望んでいるみたい。
さらに顔を真っ赤にする二人。
誤魔化すかのようにナデシコが早口で要件を告げる。
「私とタモツで異世界に送り込まれた魔獣を退治して来ます」
「次元の狭間じゃなく、お前の世界に送っちゃったのか」
「ええ、痛恨のミスでした」
「じゃあ、おっさん、俺たち行ってくるから!」
「必ず帰ってきますからね!」
「おおう! 頑張って来い!」
タモツとナデシコは魔球の中へと消えていった。
*
静寂が辺りを覆った。
ミリモが寂しげな言葉を放つ。
「二人とも行っちゃいましたね」
「なんか寂しくなるな」
「ぷぐ!(あんなうるさい奴でも居なくなると寂しもんだな)」
俺たちは魔獣を倒し、今回の騒動を解決した。
ギルドに報告し、センタリアに戻りいつもの生活が戻る。
そう思った時!
「許さぬ! 許さぬ!」
ボロボロになったマミーラだ。
既に人の形はしていない。
折れた角や穴だらけの翼が露になっている。
どうみても魔族である。
バッダスとリンダ、クエイクの姿が見えない。
きっと倒されたんだろう。
ナデシコもタモツも召喚勇者たちも異世界に旅立った。
ここに残っているのは俺たちだけだ。
ここは俺たちだけでどうにかしないといけない。
「ぷぐ!(ここは任せろ!)」
動いたのはウサタロウだ。
ウサタロウの突撃。
それを正面から受けるマミーラ。
「魔物の分際で、魔族に勝てると思うな!」
マミーラは爪でウサタロウを袈裟斬りにする。
ウサタロウは崩れ落ちた。
圧倒的な実力差が有ったようだ。
マミーラが冷たい視線を投げかける。
「次はポータ、あなたが死ぬ番よ」
そういった途端、間髪を空けずにマミーラが襲いかかる!
「お父さん!」
ミリモの悲痛な声があたりに響く。
だが俺は倒れない!
聖剣の完全防御機構!
ピンチの時に一日一回発動するチート機能だ。
マミーラは聖剣に弾かれて、ボロボロになった。
虫の息である。
もう完全に勝負はついた。
「で、で、でも! この身体を贄にして、新たなる魔獣を召喚して……ぐはっ!」
マミーラの腹に剣が生えていた。
そしてマミーラは黒い霧のようになって消えた。
な、なにが起こった?
「おばさん?」
「ミリモちゃん、私の名前はおばさんじゃないでしょ。メリッサよ!」
そこにはセンタリアの冒険者ギルドの受付嬢であるメリッサさんが立っていた。
「メリッサさん、お久しぶりです」
「間に合って良かったわ」
「おばさんは来なくていいのに……」
ミリモが拗ねる。
拗ねてるミリモかわいい、かわいい。
メリッサさんは俺に笑顔を投げかける。
「センタリアに戻ったらポータさんと行き違いになって、大急ぎで戻って来たんですよ」
「ありがとうございます。おかげで助かりました」
マミーラによって手酷い目にあったバッダスたちとウサタロウ。
幸いなことに、ミリモの薬で命は取り留めた。
「ポータさんのことは私が必ず守ります」
「ギリギリになるまで、おばさんはこれなかったくせに……」
このやり取りを見ていると、なんかホッこりする。
やっと訪れた平穏。
これでいつも通りの日常が戻れる。
俺たちの戦いは始まったばかり。
ミリモが俺の養子になるまでこの戦いは続くのだ!
おしまい。
最後まで読んでくれてありがとうございます。
ここで一旦話を終わります。
ありがとうございました。




