アイテムボックスの使い方
なんでだろう?
俺のパーティーに前衛が加入したのに。
俺のパーティーのポンコツ魔道士が火力を手に入れたのに。
なんでトロッコ修理の請求書を押し付けられないといけないの?
なんで朝まで掛かって大穴を埋めなくちゃならないの?
もうやだ、このパーティー。
俺はナデシコが空けた大穴を、友であるウサタロウと一緒に埋めていた。
ちなみに未成年であるミリモとナデシコはぐっすりと熟睡中。
この大穴を空けた張本人であるナデシコは子ども。
さすがに朝まで働かせるわけにもいかず、保護者代わりの俺がミスの穴埋めをしている。
もう、完全に日が昇った時間らしく、鉱山の入り口が眩しいぐらい明るい。
そろそろナデシコを叩き起こして働かせるか。
って、小屋の入り口の方でもぞもぞと音がしたかと思ったら、ナデシコが起きて来た。
「ポータ、ウサタロウ、おはようございます。穴埋めはまだ終わってないのですか? ずいぶんとのんびりしていますね」
寝起き早々癪に障ることを言い放つナデシコ。
てめーが熟睡している間、俺たちはずっと働いていたんだぞ!
「終わってねーよ! 誰のせいだと思ってるんだよ!」
「私のせいですが、なにか?」
「開き直ってるんじゃねーよ!」
「ぷぐぐー!(そうだ! そうだ!)」
「誰のせいだと聞かれたので事実を答えただけですが。でも謝る気はありますよ。ごめんなさい」
そういってペコリと頭を下げるナデシコ。
素直に謝られると、怒る気にもなれない。
「ポータ、おなかが空きました」
「ほれ、これでも食っておけ」
テーブルセットと、この前の講習の時に買ったものの手つかずだった分の料理をアイテムボックスから取り出す。
それを見たナデシコが驚いていた。
「アイテムバッグから取り出したのに熱々じゃないですか!」
「アイテムバッグじゃない。【アイテムボックス】だ」
「【アイテムボックス】? あんまり物が入らないので有名なポンコツスキルですか?」
「ちっちっち、俺のは馬車三台分の荷物の入る特大サイズだ」
「だから小屋やテーブルみたいな大きいものが出せたのですね」
「すごいだろ? しかも時間停止機能付きだぞ」
ナデシコは食べながら何か考え込んでいるみたいだ。
考えがまとまると俺に質問をしてくる。
「小屋を出してくれた時に思ったんですけど、これって異次元ポケットみたいなものなんですよね?」
「異次元ポット? なんだ、それ?」
「なんでも収納出来て、重さを感じずに持ち運べる倉庫ですよ」
「容量は馬車三台分と決まっているけど、種類は何でも保管できるな」
「入れた物が混ざることも無いんですよね?」
「それだと倉庫として役に立たないだろ」
「じゃあ、なんで穴埋めに使わないんですか?」
えっ、どういうこと?
ナデシコがなに言ってるのかわからない。
俺が呆然としているとナデシコに呼ばれた。
「ちょっとこっちに来てください」
ナデシコが居るところまで向かう。
「ここにある、石と土の山を収納して」
「ほい」
手をかざして物を収納するイメージを作る。
目の前から、石の山が消える。
「ここの穴に出す」
「ほい」
物を取り出すイメージを作り出す。
ざらざらーと大きな音を立てて目の前の穴が石で満たされる。
ナデシコがニコリと笑った。
「これで穴埋め完了です」
「ぷぐ?(えっ?)」
「すげえぇぇぇ!」
いままでスコップとトロッコを使って長い時間かけてやっていた作業が一瞬で終わったぞ!
「要は、ここの使い方なのです」
ふふんと鼻を鳴らして、頭を指さすナデシコ。
ムカつくしぐさだけど、あまりにも衝撃的なものを見せられた後なので怒るのを忘れたぐらい。
スキル全てをデスティーションに振るバカだけど、意外と頭が切れるみたいだ。
ナデシコの言うようにやってみたら、五分も掛からずに穴埋めが埋まった。
すげーな、おい。
今までの作業はなんだったんだよ?ってレベル。
「お父さん、おはようございます」
穴を埋める音が騒がしかったのか、ミリモも起きて来た。
俺たちは朝食を取り始めた。
鉱山の入り口で鉱夫さんたちに挨拶されながらの朝食。
なかなかにシュールな光景である。
こんな非日常な朝食もたまには……全然よくねぇ!
朝食を終えると、ナデシコが俺に請求書を渡してきた。
「これが開発費の伝票で、こちらが材料費、そしてこちらが実際の制作費で、こちらがバクダン代で……」
「おまえ、何枚の請求書を俺に押し付ける気だよ!」
「何枚もなにも、ゴレちゃんを作るのに全部掛かったんだからしかたないじゃないですか」
うんうん、うなずくちっこい卵型ゴーレム。
ちっこいのに偉そうなのがムカつく。
ムカつくので叩き潰して朝の目玉焼きにしたい。
「で、全部でいくら掛かったんだよ?」
「しめて三〇〇万ゴルダです」
「さ、さんびゃくまん? なんだよそりゃ?」
なにその大金。
びっくり過ぎて口があんぐりなんですが?
「三〇〇万ゴルダを知りません? 一〇〇万ゴルダが三つで三〇〇万です」
そんなことを聞いているんじゃないんだけど?
「ナデシコさん、いくらなんでも高すぎません?」
「値引きはしませんよ?」
「そんなに払えねーよ!」
「リーダーともあろうお方が、作れと指示しておきながら踏み倒す気ですか?」
「指示なんてしてねーし、お前が勝手に作ると言い出したんだろ!」
「ううう……借金まみれにして、まだ若いつぼみの私を娼館に売り飛ばす計画だったのですね……。う、訴えてやる!」
大声で泣き真似をしてチラチラと何度もこっちを見るナデシコ。
訴えるだと?
それだけはやめてくれ!
「ちょいまて!」
ミリモの保証人になっている俺が訴えられるのはまずい。
まあ間違いなく裁判には勝てるとは思うが、万が一有罪にでもなったら俺の保証人としての資格が剥奪されてミリモが奴隷落ちしてしまう。
それだけは避けないと……。
「わかったよ。お前の出世払いでつけておいてやる」
「ありがとうです!」
ということで、借金騒動は落ち着いた。
この大金、どうやって払えばいいんだ?
評価339ポイントで、340ポイントを目前にしてずっと足踏みしていた本作ですが、
ついにポイントが下がってしまって……ちょっと気が滅入り中。
やっぱり、なろうでは開始数千字で主人公が最強にならない話は需要がないのかな?
時間を掛けて強くなる話はダメなのかな?
主人公じゃなく、周りの仲間が強くなっていく話はダメなのかな?
作者としてはお気に入りの話で結構面白いと思うんですが……。
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