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続・女の戦い

前回の続きです。

 小屋の準備が出来たので、夕飯を配る。

 もちろん、調理するのではなくセンタリアの街で買って来た出来合いの物だ。

 今夜のご飯は、肉パンと串焼きとワイン。

 もっと野菜の多い料理にしてもいいんだけど、それだとミリモとドルトとタスバの若い三人には食べ応えが無くて不満も出るだろう。

 なので、ガッツリ食べられる肉系の料理を揃えた。


「あら? 自炊しないんですか?」

「自炊できるかわからなかったので、街で出来合いの物を買って来たんです」


 メリッサさんは食材じゃなく既に出来た料理を渡されたので驚いていた。

 しかも、熱々だ。

 アイテムボックスになじみのない人なら、みんな同じ反応をして普通に驚くな。


「出来合いの物を買って来た割には、ずいぶんと品数が多いんですね」

「俺のアイテムボックスは馬車ぐらいの容量が有るんですよ」

「あー、なるほど。ポータさんは時間停止の出来る【アイテムボックス】スキルを持っているのね。それで熱々の料理を出せるし、しかも大容量だからこんなに出せるのね。すごいわね」

「お父さんはすごいのです」

「それほどでも」


 メリッサさんに褒められるとなんだかすごくうれしい。

 嬉しさのあまり、思わずにやけてしまう。

 それだけで止まらず、メリッサさんは俺を称え続ける。


「これだけのアイテムボックスを持っているのならば、商業ギルドに所属して商人を始めた方がいいんじゃないの?」


 俺もそう思ったんだど、保証金を払えなかったんだよ。

 すまんな、貧乏で。

 あと、冒険者をやっているのはお金のためだけじゃなくて、ミリモの為にしてるんだよな。

 

「冒険者ギルドに所属しているのはミリモの二等市民権を得る為なんですよ」

「ミリモちゃんに二等市民権?」


 俺はメリッサさんに今までの経緯を話すことにした。


「ええ。実はミリモとは血が繋がっていなくて……」

「それは聞きました。確か養子ですよね?」

「いや、まだ正式な養子では無くて……。ミリモはちょっと前までストリートチルドレンをしていたんです」

「それは初耳です」


 メリッサさんはミリモのことに興味があるのか身を乗り出して聞き始めた。


「ミリモが冒険者をしているのは冒険者ランクをあげて二等市民権を取るのが目的なんです」

「じゃあ、今は市民権がないの?」

「今は俺が保証人になって三等市民権を仮に発行してもらってる状態です」

「そうなんだ」


 *


 私はその話を聞いて瞬時に計算を済ませた。

 ポータさんを寝取れると。


 身寄りがない孤児が市民権を得る方法は三つ。


 一つは奴隷になって、三等市民権を得る方法。

 でも今はミリモちゃんを奴隷にしていないので、色々と制約のある奴隷にする気は無いんだろう。


 二つ目の方法。

 婚姻。

 年齢に関係なく結婚は出来る。

 結婚すれば奴隷の経歴が無い限り、自動的に二等市民になるのだ。

 ミリモちゃんもポータさんのお嫁さんとなる意思がある。

 でも、今現在結婚してないことを考えると、ポータさんはミリモちゃんを奥さんにするつもりはない。

 たぶん、恋愛対象としては見ていないんだろう。

 まあ、この年齢の女の子を恋愛対象として見るのは人格的にどうかと思う。


 この時点でミリモちゃんはポータさんの恋のライバルとなる資格を失った。

 嬉しさのあまり、思わず顔が綻びそうになる。

 私は必死にこらえた。


 たぶん、ポータさんがしようとしているのは三つ目の選択肢。

 三等市民としてミリモちゃんを冒険者登録をし、冒険者ギルドで実績を上げて冒険者ランクをCまで上げて、その実績で二等市民とする計画だ。


 なんだ。

 ミリモちゃんの「ポータさんと結婚したい」という言葉を真に受けた私がバカだった。

 ミリモちゃんが一方的に言っていただけじゃない。

 ポータさんはミリモちゃんと結婚する気なんて、最初からこれっぽっちも無かったんだね。

 メリッサは気が楽になり、ほっと息をついた。

 ならば、ここはミリモちゃんを養子にするのを手伝ってポータさんの心証をよくするのがいいわね。


 *


 メリッサさんは俺に協力を申し出た。


「わかりました。私もミリモちゃんを養子にするのを手伝いますよ」

「いいんですか?」

「ええ。わからないことがあったら、なんでも聞いてください。お手伝いします」


 メリッサさんはトンと胸を叩いてアピールした。


 それを見て、ミリモは不安になる。

 メリッサからの嫌がらせで。冒険者を続けられなくさせられるのかと思っていた。

 それなのに、急に協力的な態度を取り始めたメリッサ。

 これはなにか裏があるのでは?

 ミリモの小さな頭の中で疑念がぐるぐると渦巻いた。


 目の前で、そんな心理戦が行われていることを知らない俺。

 俺はタスバとドルトに食事を届けに行くことにした。

 けして、エロいことが行われているか覗き見に行くんじゃないぞ。


「タスバとドルトにも夕飯を届けてきますね」

「はい」

「いってらっしゃい」


 俺は隣の小屋に来た。

 歩いて二〇歩ぐらいだから一〇秒も掛からない。


「ごはん持って来たぞー!」


 そういってガバッと入り口を開き、中に入る。

 二人は別々のベッドに座っていた。

 向かい合って話をしてるだけで、エロいことなんてなにもしていなかった。

 ちぇっ。

 ラッキースケベイベントを期待した俺がバカだった。

 まあ、一日冒険を共にしたぐらいで、仲良くなるわけもないわな。

 それぐらいで仲良くなれるなら、冒険者パーティーに所属していた頃に一緒に冒険をしていたリンダといい関係になれたわ。


「お! 飯だ飯だ!」

「ポータさん、こんなに沢山ありがとう」


 二人に感謝される。

 ちょっといたずら心が湧いた俺。


「しめて、一〇〇〇ゴルダな」


 俺の冗談に思った以上の反応が返ってくる。

 二人とも顔を真っ青にして驚いていた。


「えっ、一〇〇〇ゴルダもするの?」

「ぼったくり過ぎだろ! そんな金持ってないよ」

「あはは、冗談だよ。タダだから安心しろ」

「貧乏な私たち相手にキツい冗談やめてよ」

「わるいわるい。冷める前に食べろよ」


 食べながらドルトが聞いてくる。


「ポータさんは食事係で今回の講習についてきたの?」

「ちげーよ!」


 相変わらずドルトはピントが外れたことを言いやがる。

 でもタスバはちゃんと見ていたみたいだ。


「ミリモちゃんの保護者ですよね」

「おう、よくわかったな」

「すごく仲いいから」

「そうかそうか。ちゃんと見てる奴にはわかるんだな」

「ポータさんて、もしかして冒険者なんです?」

「もしかしてなくても冒険者だよ。しかもつい最近まで勇者パーティーに所属してたんだ」

「勇者パーティーに? 嘘だろ?」

「嘘なわけがない。これを見てみろ」


 俺は聖剣を取り出す。

 例の光り輝く剣だ。


「これは勇者パーティーを辞めるときに餞別に貰ったんだ」


 ちなみにこれは勇者パーティーとは全く関係のない剣だ。

 人助けで貰った見た目だけ聖剣レベルの剣。

 オマケで扱いにくい爆発機能付き。

 わかりやすそうなので、これを出してみた。

 平気で嘘を言える汚い大人。

 それが俺だ。

 聖剣を見た二人は目の色を変えた。


「うわ! すげー!」

「神々《こうごう》しい光が放たれてますね」

「すごいだろう。これをどうやって手に入れたのか聞きたいか?」

「聞きたい聞きたい」

「教えてください」

「よかろう。俺の冒険譚を聞くがいい!」


 俺は現実一〇%、妄想五〇%、見栄40%ぐらいの配分で、あることないことを面白おかしく二人に話してやった。


 *


 ポータが小屋を出ると同時に、ミリモがメリッサに駆け寄る。


「なんで、おばさんは私の市民権を取るのを手伝うの? 妨害した方が、恋のライバルが減るんじゃないの?」

「将来お母さんになるかもしれない人に、おばさんと呼ぶのはやめなさいよ」


 半笑いしながらの説教。

 これも、ミリモと比べて完全なアドバンテージを得たから出来る態度だ。


「おばさんはお父さんと結婚しないし、させない」

「それはどうかな? 少なくともポータさんはミリモちゃんと結婚する気は無いと思うわ」

「そんなことないもん!」

「もし本当に、結婚する気が有るのならば、冒険者ギルドで冒険者ランクを上げて、二等市民にするなんて面倒なことはしないわ」

「面倒なこと?」

「だって、結婚すれば自動的に二等市民になれるのよ」

「えっ!?」


 その一言で、メリッサの言っている意味を全て悟ったミリモ。

 ポータはミリモを恋愛対象として見ていないのを知ってしまった。

 あくまでも娘としてしか見ていなかった。

 ミリモの目の前が真っ暗になる。


「だから、ポータさんと結婚するとか意地を張らないで、私と仲良くしましょうよ。そのうち本当の親子になるのかもしれないのよ?」

「嫌です! お父さんと結婚したいです!」

「じゃあ、二等市民になれた時に聞いてみなさいよ。結婚してくれるか。でも答えはわかっているわよね?」


 メリッサの言うように、恋愛対象として見ているのならば面倒な冒険者ランク上げなんてしないで結婚していたはずだ。

 それに気が付かないはずのないミリモ。

 メリッサの言っていることはすべて正しかった。

 ミリモはなにも答えられない。


 これでミリモちゃんは脱落ね。

 そう勝ち誇るメリッサ。

 でも、ミリモが二等市民になるまでメリッサが待つつもりは無かった。

 一緒の小屋、いや一緒のベッドで寝れる今夜がポータさんを落とせる最大のチャンス。

 そう考えたメリッサは勝負を掛けることにした。


 *


 夕食後。

 ベッドの上にぴょこんと座ったメリッサ。


「今日は寝ずの番をします」


 もちろん警戒するのは魔物や野盗ではなく、ポータを襲うメリッサ。

 ミリモは必死に起き続けようとしていた。

 でも、まだまだ小さい女の子。

 旅の疲れと満腹感で睡魔が襲ってきて、すぐに寝てしまった。

 すやすやと寝息を立てるミリモ。

 それを確認したメリッサはほくそ笑む。

 さあ、ポータさんを落とすわよ!


「ポータさん、なんか眠れないの」


 隣に寝るポータの背中に抱きつき、豊満な双丘を押し付ける。

 これで落ちない男の人はいないはず。

 でも、ポータは無反応。


「明日も旅ですから、頑張って寝ないとダメですよ」


 むむむ。

 さすがはショタオジ。

 ガードが固い。

 ならば、もっと積極的に!


「それに……」


 ポータを力ずくで振り向かせて、ネグリジェの襟をずらし肩口を覗かせる。

 もう少しで双丘の先端がのぞきそうな位に……。

 それを見たポータは大慌てだ。


「な、なんでネグリジェを脱ごうとしてるんですか?」

「なんか体が熱くて、火照って、眠れないんです。ポータさん、この火照りを鎮めてください」

「あっ? もしかすると、夕食に出したワインに酔いました? お酒に弱かったです?」

「え!? 違います! そんなことじゃなくて……」

「それなら任せてください。すぐに眠れるようにしますから」

「ちょっ! ちょっと! ポータさん? なにしてるんです?」


 ポータは眠り薬を取り出し、床に叩きつける。

 小屋の中に煙が充満。

 すぐにメリッサとポータは眠りについた。

 記憶が途切れる直前、メリッサは後悔した。


「この人、もっと直接的に攻めないとダメかもしれない」


 恋愛経験が皆無なポータ。

 メリッサさんが夜のお誘いをしていることに全く気が付けなかったのだ。

 勇者パーティーに所属している時もリンダに何度も誘われていた。

 でも、類稀たぐいまれなる鈍感さでチャンスを全て不意にしていたのだった。


 メリッサがポータを落とせる日は来るのか?

 ポータの純潔はミリモが告白するまで守られ続けるのか?

 それは誰にもわからなかった。

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