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ウサギとの決闘

 ぎゅいぃぃぃん!


 ウサギが身体を捻り俺に突っ込んできた。

 俺はギリギリのところで避ける。

 距離が近かったせいか、風圧で服に切れ目が入った。

 やばいな、この攻撃力。

 服が裂けるほどの風圧なんて、ボスクラス以外で聞いたことがない。

 麻痺煙幕を投げたとしても、あの回転で吹き飛ばされてしまうだろう。

 この剣だけでなんとかして戦わないと。


 この剣にある機能は二つ。


 一つは爆発機能。

 俺が離れると爆発する。

 主に剣を盗られた時に役に立つ機能だ。


 そして、もう一つは帰還機能。

 俺から離れると勝手に戻ってくる機能だ。

 帰還時に運よく串刺しにしてくれればいいんだが、そう簡単にはいかないだろう。


 どちらもとても強力な機能なんだが、発動するには条件がある。

 『俺から離れる事』。

 たぶん、武器屋に剣を奪われて初めてこの機能が発動した時のことを考えると、大体の発動距離が想像つく。

 二〇〇メトルだ。

 それだけの距離を取れば剣が爆発する。

 でも、この機能は対人向けの機能。

 剣に興味を持たないウサギだと剣を持ち去るなんてことをしてくれないので、かなり条件が絞られる。

 例えば、井戸の中にウサギと剣を一緒に落とすなんて状況じゃないと串刺しは無理だ。


 ぎゅいぃぃぃん!


 再びウサギが襲ってきた。

 でも、冷静に観察してみると、攻撃力は半端ないけど避けるのはそんなに難しくないかも?

 魔王ウサギことホーンラビットの場合は至近距離からの素早い突進で避ける暇もなかった。

 でも、ドリルラビットの場合は、回転する為か発動までに時間が掛かる上に少し距離を取っている。

 おまけに突進後はかなり直線的な動きで、かなり遠くまで飛んで行ってしまう。

 コツさえわかれば避け続ける事が出来る。

 なんとなく、俺の前途に光が差してきたように思える。


 でもな……。

 避け続けてても、倒せないんだよ。

 避けるのは応急措置。

 俺の体力が尽きてしまうか、転んでしまえば命はない。

 運よく無事故で避け続けても太陽が沈んでしまえば、暗がりで目の利かない俺は避けることも出来なくなる。

 むー。

 なんか、上手いことを考えないと。


 直線的にウサギが突進するなら、その直線上の地面に剣を突き刺しておけば……。

 ウサギから剣に突っ込んできて、真っ二つに!

 いける!

 勝てる!

 俺はウサギの突進と同時に突進ルートを見極め地面に剣を突き刺す。


 ズブリ!


 さすが聖剣、地面に差すなんてことはまるでケーキにフォークを刺すぐらい簡単な事。

 ガッシリと固定され、ウサギの突進を待つのみ。


「ぎゅいぃぃぃん!」


 ウサギが剣に突っ込んできた!

 やったぜ!

 俺の計算通り!

 …………じゃなかった!


 ぎゅいぃぃぃん!

 キン!


 剣は弾かれ、宙を舞う。

 えっ?

 マジ?

 ウサギは真っ二つになると思いきや、ちょっとだけルートがズレただけ。

 元気に地面に大穴を開けて突進し続けていた。


 聖剣を弾くドリルラビットの角。

 ドリルつえぇぇ!


 俺は遠くに弾かれた剣を拾いに行く。

 剣を手にしようとした時、嫌な予感がした。


 ぎゅいぃぃぃん!

 がきーん!


 俺の足もとすぐ近くの地面からウサギが飛び出してきた


 マジかよ!

 こいつ、地面の中も突進できるのかよ?

 何も考えずに剣を手にしてたら、今頃腹に風穴をあけられてたところだ。

 剣は再び弾かれ遠くと飛んでいく。

 偶然と思ったが、剣が弾かれる事が数度か続いた。

 俺は汗だくになって剣を追い続ける。

 正確に剣を弾き続けるドリルラビット。

 これには思い当たる節があった。

 マーキングだ。

 間違いなく、剣にマーキングがされている。

 確実に剣を狙って飛んでくる。

 それならば……!

 しっかりと剣を持っていれば!

 剣さえ弾かれなければ、ドリルラビットは真っ二つだ!


 俺は剣を持ち、ウサギをにらむ。

 ウサギも尻を振りながら突進の体勢に入り俺を睨む。

 一陣の風が辺りを吹き抜ける。

 それを合図にドリルラビットが突進!


 ぎゅいぃぃぃん!


 僕はその攻撃を剣で受けた。


 ギン!


 なんとか受け止めた!

 この剣を打ったドワーフの話ではこの剣は聖剣レベルの逸品。

 ドリルラビットの角ぐらいで折れることも無いはずだ。

 ドリルラビットはこの辺りのウサギのボスである。

 プライドを掛けて剣を弾き飛ばそうとする!

 そこには男と男の戦いがあった。


 ギン! ギン! ギン! ギン! ギン!


 激しく火花を散らす!

 ウサギも僕も引かない。


「なかなかやるな!」

「ぷぐー!(おまえもな!)」


 男と男の意地の張り合い。

 商人とウサギだけどな。


「ぷぐぐー!(なかなかやるが、ここで終わりだ! 奥の手をだすぞ!)」


 ドリルラビットが腰を捻り、回転速度をアップ!


 ギギギギギン!


 火花がさらに激しく散る!

 こ、これは……ウサギの攻撃を抑えられない。

 無理だ!

 ドリルの回転振動に耐えられず、剣がブレブレにブレ始める。

 もう、無理!

 剣技を持たない商人にはここまでなんだろう。

 ドリルラビットに貫かれて死ぬのか。

 ウサギが勝ち誇った表情をした。


「ぷぐぐー(人間の割にはよくやったぜ。お前の顔は忘れない)」


 完全に勝利の女神はドリルラビットに微笑んだ。

 そう思えた瞬間!


 ギーン!


 今までと全く違う音。

 そして、今までとは全く違う剣の光。

 激しい光が辺りを覆い、光がウサギを吹き飛ばす!


「ぷぐぐぐ!(なんなんだこれは?)」


 実はこの光、フェラインの少女が付与した隠し機能。

 一日一回だけ、発動する完全防御機構。

 ピンチに陥った時に、光のベールで敵をはじき飛ばすのだ!

 だが、ウサギはそれを耐える!


「ぷぐー!(意地だ! こんなところで負けるわけにはいかない!)」


 そして回転が止まる寸前、ドリルラビットは耐えきった。

 吹き飛ばされずにその場に残った!

 ドリルラビットが勝ったのだ!


「ぷ、ぐぐ!(この戦い、紙一重で勝てたぜ)」

「ああ、お前の勝ちだったな」


 精魂尽きて、その場に倒れ込むウサギと俺。

 ウサギは手足をだらしなく投げ出しうつ伏せ、俺もそれに似た格好で仰向けになっていた。

 全力を出し切った好敵手ライバルであり友がそこにいた。

 俺たちに種族を越えた友情が芽生えた瞬間だった。


 そこにやって来たミリモとナデシコ。


「すごい光が見えたんですけど、ウサギは倒せましたか?」


 期待度満点の笑顔で聞いてくるミリモ。

 俺の横に倒れているウサギをみて、大喜びしている。


「ウサギを倒したんですね。さすがお父さんです!」


 いや、俺が倒したんじゃないんだけど。

 俺、負けたんだけど。

 ナデシコも満面の笑みで俺を称える。


「ポータは思ったよりもやるじゃないですか」


 ナデシコも俺のことを見直したみたい。

 そういってドリルラビットの角を持つ。


「今夜は美味しいウサギのグリルですね」

「ぷ? ぷぐー?(ええ? 冗談だろ? 俺、食べられちゃうの?)」


 ドリルラビットは地面を蹴って初めて強烈な突進が出来る。

 宙に浮いてしまうと、ただのウサギと変わらない。

 今夜の食材となったウサギは目に涙を溜めていた。

 さすがに死闘を繰り広げた友を食べるのは忍びない。

 俺はナデシコから友を救ってやることにした。


「そいつは放してやれ」

「嫌ですよ。今夜の食材なんですから。ドリルラビットのグリルなんてめったに食べられませんよ」

「宿屋で腹いっぱいウサギのグリルを食わしてやるから」

「放します」

 

 即断!

 質より量のナデシコであった。

 ウサギは何度も振り向きながら俺に感謝をし、その場を去っていった。


 *


 それから、数日間。

 俺たちの泊まる宿屋の入り口に、頭をなにかで突き刺したウサギが三匹おかれていた。

 たぶん、見逃してやったドリルラビットのお礼だとは思う。

 でもさ、同族を狩って問題ないんだろうか?

 ウサギ社会で白い目で見られてなければいいんだが、と友を心配してしまった。

出来に納得できなかったり、風邪ひいたりでしばらく更新出来なくてすいませんでした。

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