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大魔道士ナデシコ

 ナデシコが何か食べさせて欲しいというので、冒険者ギルド併設の酒場へと行き食事を摂ることにした。

 ナデシコはまるで何日も食べてなかった子供のように、食事をかきこむ。

 数日前にも、どこかで見た光景だ。

 俺がミリモを見ると、ちょっと前の自分を思い出して恥ずかしかったのか、俺から顔をそむけた。

 ナデシコは涙を流しながらウサギのグリルを食べている。

 

「おいしいです! おいしいです! 久しぶりに食べるご飯は美味しいです!」

「なんだよ。まるで数日間なにも食ってないみたいな食いっぷりじゃないか」

「食べてないみたいじゃなく、本当に食べてないんです」

「マジかよ?」

「マジです。正確に言うと昨日小さな丸パンを食べただけで、三日間何も食べてないのです」


 見たところミリモよりもちょっとだけしか歳が変わらない感じなのに、三日も絶食だと?

 目の前の少女が哀れに思えて来た。


「そりゃ、大変だったなな。腹が膨れるまで好きなだけどんどん食え」

「クックック! この酒場の大食い記録を破るぐらい食べまくってやります!」


 ナデシコの食いっぷりに、なぜか競争心を燃やすミリモ。


「お父さんの娘という名に懸けて、私は負けるわけにはいきません!」


 いや、そんなものに俺の名前を勝手に懸けられても困るんですが。

 でも、俺のことでむきになるミリモは相変わらず可愛い。


「フハハハハハ! そこの少女よ! 三日間ほぼ絶食の私の食欲に勝てると思わないことだ!」


 ペースを上げて食いまくるミリモとナデシコ。

 俺は二人をなだめるのに大変だった。


「で、名前なんだけど、俺より年下だしナデシコと呼んでいいのかな? それともナデシコちゃんの方がいいかな?」


 さすがに形だけとはいえ雇い主の俺が、年下の女の子に対して「さん」付けで呼ぶのもあれだよな。

 それとも、もっと可愛らしい愛称の方がいいのかな?

 「ナデちゃん」とか「ナーさん」とかの愛称もいいかもしれない。

 ナデシコは俺の提案を受け入れてくれた。


「ナデシコでいいですよ。流石に一回りも年の離れたおじさんに、『大魔道士ナデシコ恩師』とか、『闇より来たり史上最強の魔道士ナデシコ』とか呼ばせるのもキツイものがありますしね」


 ぐはっ!

 この娘はそんな仰々しい名前で呼ばせるつもりだったのかよ。

 とんでもない奴だ。

 それは置いといて、俺にも譲れないことがある。


「お、おじさんじゃねーし! お兄さんだし!」

「でも」


 そこまで言って、ナデシコは真顔になる。


「初めに言っておきますが、『平たい胸族』と言ったら殺します」


 胸の控えめさは気にしてるのか。

 年頃の女の子だしな……って、あれ?

 ここに来て、俺はとんでもない事に気が付いた。

 ミリモよりちょっと大きいぐらいなので一〇歳かぐらいと思っていたんだけど、一〇歳だと天職は受けられないよな?

 なんで、天職も無しに魔剣士をやってるんだ?


「ナデシコの歳っていくつなんだ?」

「一四歳ですよ」


 俺の見立てよりも四歳も年上だった。

 でも、一四歳じゃ未成人で天職を得られないはず。

 どうなってるんだ?

 俺が疑問をぶつけると、得意気な顔をしてごはんを頬張ったナデシコが答えた。


「ほれなら、簡単なことれすよ」


 ごくんと、口の中の物を飲み込んで話を続ける。


「私は異世界から召喚された勇者なのです」

「召喚勇者だと?」


 召喚勇者といえば神に祝福された、この世ならざる者。

 この世界に来た時に、全ての職業の上位になる『真の勇者』と呼ばれる天職を得る。

 神の祝福で、この世界の者では一生掛かっても得られないスキルの数々。

 それに相当する、凄まじい量のスキルポイントを持っているのだ。


「私は地球と呼ばれる異世界からやって来たのです」

「凄いじゃないか!」

「ええ。凄いです」


 当たり前のように答えるナデシコ。

 今までの尊大すぎる発言も、召喚勇者の実力があるなら納得できる。


「お父さん、この子凄いの?」

「凄いなんてもんじゃないぞ。真の勇者だ」

「お父さんより強いの?」

「俺なんか比べ物にならないぐらい強いさ」

「ふっふっふっ、私の強さがやっと理解できたようだな」


 片目を手で覆い隠して謎のポーズを取るナデシコ。

 何の意味があるのかわからないが、底知れないパワーだけは感じる。


「おおう、期待してるぞ」


 俺はとんでもない能力を持った冒険者を仲間に出来たのだ。

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