魔王の息子
何も無い薄暗い部屋に椅子に縛り付けられた男がいた。彼は人々から勇者と呼ばれる者だった。彼は人々を支配しようとしている魔王を倒すため仲間と魔王の討伐に向かった。しかし、魔王の圧倒的力にはかなわなず、負けてしまい捕えられてしまった。
「まさかあんなに強いなんて...クソっ!」
勇者はほかの仲間のことを心配した。
「みんな大丈夫だろうか、何もされてなければいいが...」
仲間の身を案じていると誰かが部屋に入ってきた。
「よく眠れたかな?勇者」
「魔王...!」
部屋に入ってきたのは憎き魔王だった
黒い鱗に鋭い爪、蝙蝠のような翼。冷たく恐ろしいその目つきはまさに魔族の王と呼ばれるに相応しい姿だ
「他の仲間はどうした!無事なのか!?なぜ俺を殺さなかった!?答えろ!!」
「質問が多いな。少し落ち着いたらどうだ?」
「落ち着けるわけがないだろ!敵の目の前で!」
「フッ、捕まってるわりにはずいぶん元気がいいな。まぁいい、質問には答えてやる」
魔王はニヤニヤしながら話を続けた
「まずお前の仲間だが─無事だ」
「よかった...」
「そしてなぜお前を生かしているかだが…勇者よ、我々竜人族の...魔族の仲間にならないか?」
「なっ!?」
魔王の口から出た言葉に勇者は驚愕した
「そんなこと死んでもお断りだ!俺は勇者だぞ!その敵の魔族の仲間に成り下がるのは御免だね」
「まぁそういうな。それに私はお前に息子になってほしいと思っている」
「はぁ?ふざけているのか?なぜお前の息子なんかにならないといけないんだ!」
「私には世継ぎがいない。だがしかし魔王になるには力が強くないといけない。だが、私ほどの力を持つものは中々現れないのだ。そこでお前だ勇者よ。お前ならば私に近い力を持っている。まさにうってつけというわけだ」
「あぁそうかい。だが何を言われようと従うわけにはいかないな。」
「フフ...そうか。まぁ良い」
そういうと魔王は勇者を縛っている鎖を外し始めた
「なんのつもりだ!」
「お前とはゆっくり話したくてなこの状態だと落ち着けんだろう?」
ガシャン!鎖が地面に落ちた。逃げ出そうかと思ったが─
「ここには強力な結界が張っているからな、逃げようとは思わないことだ」
魔王の言葉で勇者の希望は失われた
「まぁゆっくりするがいい。着いてこい」
「何をする気だ」
「何も。ただ見せたいものがあってな。そろそろ終わっているだろう」
「?」
何を見せる気か検討もつかなかったが黙って従った
しばらくして実験室のような不気味な部屋に着いた
「ここだ」
中には様々な薬品や道具が置いていたが、部屋の奥にあるものに勇者の目を奪った
そこには3つの大きな容器があった。中は緑色の液体で満たされており、中には人のような何かが入っていた。
「なっ、なんだよあれ」
「あれは人を魔族に変える装置だ」
「ひっ、人を魔族に!?」
「そうだ。そして今中にいるのは...誰だと思う?」
魔王はニヤニヤと笑いながらこちらを見た。そして勇者は気づいてしまった。
「まさか!あいつらを!?」
「そのまさかだ」
「そ、そん...な」
そう。勇者の仲間たちは魔族の実験台にされていたのだ。
「フフ、仲間との感動の再開だぞ?」
魔王がレバーを引くと緑の液体が無くなり中から魔族となった仲間たちが出てきた。
「「「おはようございます魔王様」」」
「みんな...」
もうそこにはかつての仲間の姿は無く、魔族になったものが立っていた
「うむ。問題ないな。早速だがそれぞれ持ち場に付くように」
「「「はっ!!」」」
3人は敬礼すると部屋を出ていった
「どうだ?勇者よ。仲間の変わり果てた姿は」
「...くれ」
「ん?」
「殺してくれ!!俺は、オレは...!」
「絶望したか?仲間を守れず、私を倒せず勇者の使命を達成することが出来ない。お前は勇者としては何も出来なかった。違うか?」
「うわぁぁぁー!!」
勇者の心の中で何かが壊れた。それを見て魔王はニヤリと笑った
「フッ、心が壊れたか。案外呆気ないものだな勇者というものは。まぁいい、私の息子に人間の心は必要ない」
魔王は懐から注射器のようなものを取り出すと勇者に中身を打ち込んだ。すると勇者の体が人間とはかけ離れた姿に変化していった。
「ぐっ、がぁぁぁぁぁ!!」
勇者の体からボキッ、ボキッと骨が変形していき、最終的に魔王にそっくりな姿になっていた。唯一違うところは、鱗が少し青みがかっているところだった
「終わったか、目覚めよ息子よ」
「はい。父上」
そこにはもう勇者の姿はなく、魔王の息子として生まれ変わった勇者がいた
「気分はどうだ?」
「最高の気分です。暴れたいほどに...」
「フハハハ!!素晴らしい!息子よ、私と共に人間共を支配しようぞ!」
書きたいがために書きました...