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皆勤賞

作者: 綴明

これは、フィクションです。あくまでも。

私小説ではありません。

しかし、このような状況で苦しむ中高生の存在を、忘れないでください。

青春は、甘酸っぱいだけのものではありません。

いつだったか。あれは確か、中学2年生の、もう梅雨に入る、という時期だった。

風邪をひいて、学校を休んだ。

何の変哲もない、ただの欠席だった。

周りから見れば、まぁ、珍しいかな。というくらいのものだった。

しかし当時の私は、悔しくなって、泣きだしそうになっていた。

ずっと、中学に進学してからずっと、休まず、風邪もひかず、一生懸命に登校し続けていたのに。

とうとう、休んでしまった。

時計を見ると、一時間目の始まる、3分前。

まだ間に合う。そう思って、母に抗議した。

しかし、それは無駄に終わった。

人に移したらどうするの。そう私を諭した。


なぜ、こんなことを思い出したのか。

私は、高校に行けずにいる。

つい数か月前まで、学校に行くことに一生懸命になっていたのに。。。

昨晩、突然に当時の担任から連絡があった。

その先生は、私に期待してくれていた。

がんばってるのか。というその問いに、私は泣き崩れてしまった。

驚いた表情が電話越しに伝わってきた。

私は、その先生の前で、泣き顔を見せたことがなかった。

私のかつてのトレードマークは、笑顔だった。

今では、ほとんど笑うことがない。

笑顔がいい。中学の時仲良かった先輩も言ってくれていた。

その先輩の笑顔が、ふと頭に浮かんだ。

先生は、昔の思い出を少しずつ語り、同窓会、来いよ、と昔のままの声で言った。

私は、声を出さず、こくりとうなずいた。

気持ちは届いたのだろうか。


明日、学校行ってみようかな。

中学の時に仲の良かったその先輩は、遠回りになるのを構わず、毎日迎えに来てくれている。

明日、玄関で待ち伏せしてやろう。

明日、あの人の驚く顔をスマホで撮ってやろう。

明日、久しぶりに笑おう。


そう考えると、突然、どこにでも飛んでいけそうな自分に出会った。


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― 新着の感想 ―
[一言] 「初恋」企画から参りました。 毎日部屋にいる…ニート 毎日先輩が迎えにくる…リア充 ニートとリア充を両立させる発想が素晴らしいです。 この主人公、極端な面はあるけど。 実は世渡り上手なの…
[良い点] 拝読しました。 切っ掛けはほんの小さな事だったのかもしれない。 でもそれは、本人とってとても重大な事で……。 崩れてしまった日常、抗えない自分、こんな筈じゃなかったのに、と後ろめたさを感じ…
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