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アーシア 強襲

 ボスはヒューマノイドの力を独占する事を考えていた。そのため、地下で造っていたヒューマノイドは、身内の四体のみの起動に留め、他のヒューマノイドは制御装置を外した状態で保管する事にしていた。

 そして、開発に携わった技術者の内、ファミリーへの忠誠が低いと判断した者たちを処分したらしい。その中には異国人であり、人質と言うもので半ば強制的に開発に携わっていた原とその娘も含まれていた。


「と言う訳で、彼には悪いが、娘と共に死んでもらう事になっている。

 正確には、昨日、死んでもらった事になっているんだが」


 昼前の眩しい日差しが差し込むロベルトさんの屋敷の中、このところのヒューマノイド開発に関する状況を語っていたロベルトさんは、戸惑い気味に言葉をそこで止めた。

 ボスから殺せと言われているのに、殺さなかった事で言葉を濁したのだろうか。


「開発を終えたら、日本に帰すと言う話だったはずですが、なんとかならないのですか?」


 ヒューマノイド開発と、原の名前を出した俺としては、彼らを助けたい。でなければ、彼ら父娘の命を縮めたのは俺と言う事になってしまう。

 ロベルトさんは静かに首を横に振った。


「ただ」

「ただ?」


 ロベルトさんが何を言おうとしたのか、たずねようとした時異変は起きた。


「ぎゃぁっ」


 窓越しに聞こえて来た男の悲鳴に、ロベルトさんは慌てて窓に駆け寄った。


「本当に来やがった!」


 ロベルトさんの言葉に、俺も窓まで駆け寄った。その頃には、激しい銃撃音まで聞こえるようになってきていた。

 緑の庭。ロベルトさんの配下のソルジャーたちがマシンガンを連射し続けている。

 その先のターゲットは?

 そこにいたのは、金色の長い髪をなびかせたアーシアだった。


「なんで?」


 さっきのロベルトさんの言葉から言って、アーシアが襲って来る事を知っていた風だ。なら、その理由を知っているはずだ。返事を得たくて、ロベルトさんに目を向けたが、ロベルトさんは窓から離れようとしていた。


「聞いていた話より、早いじゃないか」


 ロベルトさんがつぶやくように言ったのを俺は確かに聞いた。そのまま立ち去ろうとするロベルトさんを呼び止めた。


「ロベルトさん、待ってください」

「君はあの子を連れて逃げろ」

「しかし」


 恩あるロベルトさんを置いて逃げるなんて訳にはいかない。そんな気持ちで、ロベルトさんの後を追おうとした。


「あの子を守らなきゃならないだろ!

 レイ、こいつを連れて行け」


 背後からついて行こうとしている俺の気配に気づいたロベルトさんが、配下のレイに言った。レイはロベルトさんの一番のボディガードで、車の運転手も兼務していて、俺とも親交はある。


「レイさんだって、ロベルトさんのボディガードじゃないですかっ!

 アーシアと戦いに行かなきゃならない訳でしょ」

「あいつと戦うのに、数は無意味だ。

 無策な訳じゃない。策さえあれば、一人で十分だ。

 それに、それに失敗し、私がやられた場合、誰が俺の仇をとるんだ。

 その時は、レイ、こいつと共に後の事は頼んだぞ」

「ロベルトさん!」


 背を向け、足早に部屋を出ようとするロベルトさんに追いすがろうとしたが、レイさんが俺の腕をがしっと掴んで、引き留めた。


「俺は行く。

 行かせてくれ!」


 使命感のようなものに憑りつかれた俺は、そう言ってレイさんの手を振りほどくと、ロベルトさんを追って、廊下に駆け出したが、そこにロベルトさんの姿を見つける事はできなかった。すでにどこかの部屋に入ったか、階段を使って移動したのだろう。

 どこだ?


「ロベルトさん!」


 一番近い部屋のドアを開けた。

 そこに人気は無かった。

 別の部屋を探そうとした時、銃撃音が間近で起きた。

 ロベルトさんはファミリーのボスなんかじゃない。配下の者の数はそれほど多くはないため、すでにアーシアが建物の中に侵入してきていた。


 そのアーシアを倒そうと、一人のソルジャーがアーシアに向けて、廊下でマシンガンをぶっ放している。

 倒してくれ!

 身近に迫る恐怖に、マシンガンをぶっ放している後ろ姿のソルジャーの健闘を祈るしかなかった。

 そんな祈りも虚しく、アーシアが異様な速度で、そのソルジャーの前に立ったかと思うと、マシンガンを持つソルジャーの腕をねじ切り、殴り飛ばした。


 俺の視界には吹き飛ばされるソルジャーの姿が一瞬映ったあと、全身に受け止めきれない衝撃を受け、そのまま吹き飛ばされたのを感じた。

 何が起きたのか分からないまま、俺の意識は消えて行った。

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