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百均で買った盗聴器??

 さくらがコッポラファミリーの屋敷に仕掛けた盗聴器は、コミッションの議論だけでなく、それを終えてからのコッポラファミリー内の会話の内容も筒抜けにしてくれた。

 特に、コッポラファミリーが我らベルッチファミリーとコルレオーネファミリーをぶつけ、コルレオーネファミリーの力を削ぐ事を考えていると言う事は、ボスにとって有意義な情報だったようだ。


「と言う訳で、君が仕掛けてくれた盗聴器は非常に役に立っている。

 これに関しては感謝する」


 大きな革張りの椅子にどかっと座り、葉巻をくゆらせながら、ボスはそう言ったが、その眼光は厳しく、ただ単にさくらに礼を言うためにここに呼んだと言う訳ではなさそうだ。


「いえいえ」


 そんな事を感じていなさそうなさくらが、いつもどおりの口調で呑気に答えた。

 もしや、また眼鏡外しているなんて事はないよな?

 慌てて横のさくらに目を向けて、確認した。ちゃんと眼鏡をしているさくらの横顔に、ちょっと安心した。


「で、コッポラから誘われ、彼の屋敷に行ってきた。

 そのついでに見つかると危険だから、君が取り付けたものと思われる盗聴器は回収して来た」


 ボスが自分の前の机の上に、ポケットから取り出した小さいボタン電池のようなものを置いた。

 それは俺が想像していたものよりも小さなものだった。


「いいのですか?

 これで情報が入らなくなりますが」


 ロベルトさんが口を挟んだ。


「彼らの考えは分かった。

 それに、私は彼らの考えを知らないふりをしながら、彼の掌の上で踊ってみる事にした。

 一番邪魔なコルレオーネをコッポラを利用しながら、倒せるんだからな。

 コッポラと組んでいる間、コミッションから敵視されることはないしな。

 向こうも我々を利用する気らしいが、逆に利用してやろうじゃないか」


 ボスが視線をロベルトさんから、さくらに戻した。


「で、だ」


 ボスはそこで、一旦区切ると、さらに鋭い視線をさくらに向けた。


「これはどこで手に入れた。

 精巧すぎて、どこかの諜報機関のものとしか考えられんのだが」


 どうやら、さくらを疑っているらしい。確かに、どうしてこんなものを持っているのか、俺的にも不思議でしかない。


「日本の百均だよ。

 色んなものを扱っているお・み・せ」


 けろりとした口調で言ったさくらの言葉に、俺は目が点になった。


「マジで?

 こんなもの売ってないだろ?」

「最近は売ってるよ」


 平気な顔で、さくらは言った。

 そうなのか?

 確かにさくらは俺よりも遅れて、ここに来た。その間に日本では、そんな事になっていたのか?


「そうなのか?」


 ロベルトさんが聞いて来た。


「確かに盗聴器や盗撮カメラって、どこかの店で売ってるのは売ってるらしいんだけど、百均とは意外だったかな」

「で、こんな所に来るんだから、何かお役に立てないかなって」


 さくらがにこりと微笑みながら言った。


「日本ではこんなに小さくて精巧なものを一般人が購入できるのか?」


 まだボスは疑っている。と言うか、俺だって信じ切れやしない。


「日本人は、小さくて、性能のいいのが好きなんだよ。

 私だって、小さいけど、かわいいでしょ?

 ねっ!」


 さくらはそう言うと、俺を見た。


「あ、ああ。

 そうだな」


 かわいいかと女の子に聞かれて、肯定以外の返事を待ち合わせていない俺は、反射的にそう答えてしまい、そもそものボスの質問への答えを言いそびれてしまった。


「分かった。

 君たちを信じよう。だが、まだ持っているとか言う事はないか?」

「あるよ」


 ボスの言葉に、さくらはそう答えたかと思うと、ポケットの中に手を突っ込んで、中の物を一握りしながら、ボスの机の前に進み出た。

 ジャラリ。

 握りしめていた手を開くと、さっきボスが机の上に置いた盗聴器と同じ物が机の上で山積みになった。


「そんなに持っていたの?」


 驚く俺に、さくらは振り返ってにこりと微笑んだ。


「だって、一個百円だよ」

「マジで、マジなの?」


 いくらなんでも、こんなものが百均に並んでいるなんて想像できないが、この数から言って、高価な物とは思えない。


「これはもらっていいかな?」


 ボスの言葉はていねいだが、ほぼ没収の意味だ。さくらはそこを理解しているのか?

 ちょっと不安だったが、それは杞憂だった。


「いいよ」


 軽くさくらは言った。


「あっ、でも」


 何を言う気だ? お金払えとか言わないよな?

 再びさくらの言葉が気になった。


「これ、同じ周波数? とかなんとかだから、近くの場所にはいくつも置けないから」

「なるほど。で、ここにも仕掛けているとか言う事は?」

「ありませんよ」


 これまたにこやかな表情でボスに答えた。どちらかと言うと、査問に近い状況だが、さくらはその事に気づいていなさそうなところが、幸せ者かも知れない。


「この周波数とかなんとかで、電波が出ているかどうかを調べたらすぐ分かりますよぅ」


 山積みになっている盗聴器の中から、小さく折りたたまれた紙を取り出しながらさくらが言った。取説なんだろう。


「分かった。

 とりあえず、君の活躍に礼を言っておく。

 下がりたまえ」


 完全にボスがさくらを信じ切ったかどうかは怪しいが、とりあえず俺たちは解放された。



 ロベルトさんの屋敷に向かう車の中、俺は少しほっとした気分だったが、さくらはそもそも緊張などしていなさそうで、車に乗り込むなり、ヘッドフォンを付けた。


「盗聴器で何か聞いているんじゃないだろうな」


 半分冗談、半分本気で聞いてみた。


「ふふっ」


 俺の問いにさくらから返って来たのは、よく分からない微笑みだけだった。

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