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コルレオーネの手に渡ったレーザー銃

 謎の男たちに占拠されたロレンツォ教会。

 ここに詰めていたレイさんの配下の者たちは、皆殺しにされていた。

 そして、レイさんの配下の者たちを皆殺した男たちは、同士討ちとあすかの攻撃で、これまた皆殺しとなった。幸い、レイさんもさくらも無事ではあったが、死の恐怖が影響したのか、それとも多くの死を目の当たりにしたからか、さくらは奥の部屋で塞ぎこんでいる。


 この二つ戦いで轟いた銃撃音は、当然教会の外にも漏れていた。

 とは言え、マフィアのベルッチファミリーとつながりのあるこの教会だ。そんな事があったとしても、誰も見て見ぬふりをするだろうし、たとえ警察に通報が行ったとしても、警察は動かない。はずだった。

 だと言うのに、前回の不法移民探しの時と同じく、警察は動いたのだ。


「警察だ!」


 武装した多くの警官が扉を開け、聖堂の中になだれ込んできた。


「フリオさんはいるか?」


 警官の中の一人が言った。が、ここの番人であるフリオさんは、ここを占拠していた謎の男たちに殺されていた。正確には、ここに詰めていたレイさんの配下は皆殺しになっていた。


「残念だが、彼は殺された」


 レイさんが言った。


「そうですか。

 それはお気の毒な」

「で、何の用だ。

 また、不法移民か?」

「あの時とは別件ですよ。

 今回は別の力」


 警官が囁くようにレイさんに言った言葉に、レイさんの表情が歪んだ。

 警官の言葉の意味は俺にも分かった。

 別の力とは別のマフィアの圧力と言う事だ。それに応じたと言う事は、ベルッチよりも力のあるファミリーの圧力と言う事だ。まあ、ここのところヒューマノイドの力で勢いに乗ってはいたが、ベルッチファミリーは元々それほど力のあるファミリーではないから、警察に圧力をかけれるファミリーは多々ありそうだが。


「これだ。

 これを見てくれ」


 警官が一枚の写真を差し出した。

 それはセルジオが撮ったレーザー銃を構えるあすかの写真だった。


「この女はここにいるのか? そして、この女が使ったこの武器は何だ?」


 レイさんはその問いには答えず、警官に視線を向け、この捜査の目的をたずねた。


「今回の目的は何だ?」

「この女がこの店を損壊したことによる捜査ですよ。この女とこの武器をここに出してもらいましょうか」

「と言う事は、この娘を実力で逮捕する自信があると?」


 マフィアを狩る少女。世間でそう知れ渡っているあすかである。その言葉は誰が発したとしても、相手を威圧するに十分な言葉であったであろう上に、元々マフィアの幹部であるレイさんの表情には凄味があった。

 その凄みに押され、一度警官は一歩引き下がったが、真っ赤な顔をして、再びレイさんに迫った。


「こちらにも引けない事情があるんだ!

 まずはこの武器だ。令状はあるんだ。中を捜索させてもらいましょうか」


 その警官の言葉に、背後に控えていた警官たちに緊張が走った。誰もあすかを相手にしたくはない。中に入るとなると力での衝突となるのは火を見るより明らかだ。

 そんな時、教会の奥に通じる扉が静かに開き、あすかが姿を現わした。

 あすかを実力で逮捕できるのかと言われている状況で姿を現わしたあすかに、警官たちは彼女に襲われると言う恐怖にかられ、逃げ出せる体勢にみなが入った。

 警官たちが恐怖の面持ちで見つめるあすかに続いて、あすかが使っていたレーザー銃を手にしたサングラスの神父が現れた。


「これですか?」


 サングラスの神父は警官たち近寄ると、手にしているレーザー銃を差し出しながら言った。


「そ、そ、それだ! こちらに渡せ」


 声を上ずらせながら、サングラスの神父に向かって命令した。


「どうぞ、お受け取りください」


 サングラスの神父は警官たちに歩み寄りながら、レーザー銃を差し出した。

 警官はそれを受け取ると、続く要求を出した。


「よし。次はあの女だ。

 逮捕する」

「残念ですが、ここにあの子はいません」

「そこにいるだろ!」

「なら、やはり実力で連れて行かれますか?」


 サングラスの神父がずいっと一歩前に出ながら言った。

 はっきり言って、恫喝だ。


「いない。そうだ、いないな。

 分かった。ここにはいない。戻って来る事があったら、警察に出頭するよう伝えておいてくれ」


 警官たちはその言葉を残し、身体を反転させた。その表情には安堵が浮かび上がっていた。

 とりあえず、レーザー銃を得た事で、かられの面子も立った。これ以上の危険に首を突っ込むのは止めたようだった。


 警官たち全員が教会からいなくなると、レイさんがサングラスの神父に言った。


「よかったのですか? あれを渡して」


 その言葉に、たずねられたサングラスの神父が鼻で笑うような仕草をした。


「かまいませんよ。

 コピーしようと分解しても、できないばかりか、そこで壊してしまうでしょうし。彼らも手土産なしには引き返せないでしょう。

 何しろ、外で待っているのはコルレオーネの幹部のようですから」

 

 どうやら、この二人はセレンの残骸を完全に破壊しながら、血の匂いが立ち込め、レイさんの配下たちの死体が転がる地下のセキュリティルームで、外の様子を見ていたらしい。


「なら一層、その銃口が我々に向かう可能性もあって、危ないのでは?」

「あすかがあれを使って、モニカを倒したことが明らかになってしまいましたからね。奴らはベルッチと戦うためにどうしても欲しいのでしょう。

 あ、それにあの子の盗聴器も仕込んでおきましたしね」


 そう言い残すと、サングラスの神父はドアの向こうに消えて行った。


 レーザー銃を手にしたコルレオーネは、きっとレーザー銃があれば、彼らがその事を知っているのかどうかは分からないが、ベルッチファミリーのヒューマノイドと戦えると思っているに違いない。

 

 コルレオーネとベルッチの戦いは新たな局面に入った。そして、その状況はさくらがいつもやっていたように、盗聴する事で、こちらに筒抜けになる。

 俺はそう感じていた。

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