謎の男たち
俺たちはコッポラファミリーを使って、ヒューマノイド セレンをおびき出し倒した。
サングラスの神父とあすかの目的は、ベルッチファミリーが所有している戦闘ヒューマノイドの破壊。当然、セレンの残骸を置き去りにはしない。
俺たちの拠点であるロレンツォ教会に戻る車のトランクの中に、それは置かれている。
「ヒューマノイドに勝てる場所があるって聞いているけど、それはどこなんだ?」
後部座席の俺の横で、車に揺られているあすかに聞いてみた。
「それを知ってどうするの?
あなたが、戦うって言うの」
横目で俺を見ながら、冷たい口調であすかが言った。
「さすがにそれは」
それ以上の言葉を発する事などできなかった。
そして、俺達はロレンツォ教会に到着した。
教会の前にレイさんが車を止めると、あすかはさっさと車を降りトランクを開け、あらかじめトランクの中に置いてあったブルーシートにセレンを包んで持ち上げた。
「げっ!」
ドアを開け、車から降りようとしていた俺は、目に飛び込んできたその光景に驚きの声を上げずにいられなかった。かつてモニカの残骸を持ったことがあったが、かなりの重量だったし、あすかもいつも引きずっていた。
「そう言えば、トランクに乗せるところを見た事がなかった」
思わず心のつぶやきが口から出た。
いつも引きずっていたが、どうやら彼女はヒューマノイドの残骸を一人で持ち上げれるほどの力があるらしい。
そんな彼女のため、教会の扉を開こうと運転席から降りたレイさんが、速足で教会に向かって行く。
一旦、持ち上げていたセレンを地面に下ろす、あすかは再びそれを引き摺り始めた。
ドスッ!
ズッ、ズッ、ズッ!
セレンの残骸が発する音が、その重さを物語っている。
「それ、一体何キロなんだ?」
「私が知る訳無いでしょ」
俺の自然な疑問に、彼女は素っ気なく答えた。
「引き摺ったり、持ち上げたりしているんだから、感触くらいあるだろ?」
「じゃあ、あなたが持ったらどうなの?」
「そ、そ、そうだな。
じゃあ」
そう言って、セレンの残骸を包んだブルーシートに手を伸ばそうとした時、あすかが立ち止まり、教会に目を向けた。
その行動に不自然さを感じた俺も、教会に視線を向けた。
そこには、銃口をこめかみに当てられたレイさんの姿があった。
その銃を持つ手は扉の向こうから伸びており、相手の顔を見る事はできない。
そもそもロレンツォ教会はレイさんの配下の者たちが詰めており、レイさんに銃口を向けるような輩がその中にいるなんて予想外だ。
「あすか!」
サングラスの神父が、彼女の横までやって来た。
二人が頷き合い、ゆっくりと教会の扉に向かい始めた時、レイさんは教会の中に引きずり込まれるように姿をその中に消した。
ズッ、ズッ、ズッ!
セレンの残骸の重さなど気にならないかのような普通の足取りで、あすかかがセレンの残骸を引き摺りながら進んで行く。
ギッ、ギッ、ギー。
サングラスの神父が扉を開くと、やはり銃口を持つ手が伸びて来た。
が、今度はレイさんの時とは違っていた。
その腕をあすかが掴み、捩じ上げた。
「ぐあっ」
男が苦痛の声を上げたその時、教会の奥から別の声がした。
「そこまでだ」
二人の後ろ姿の向こうに見える教会の中。
聖堂の中は、マシンガンを構えた男たちで満ち満ちていた。
そして、聖堂の中央に飾られた十字架の前には、こめかみに銃口を向けられたさくらの姿があった。
「入って来てもらおうか」
状況を察したあすかが男の手を離し、サングラスの神父と共に教会の中に入って行く。
「お前もだ」
中から姿を現わしたいかにも怪しげな男が、俺に銃口を向けながら言った。
教会の聖堂の中は、予想以上の状況だった。
外から見えていた正面だけでなく、四方の壁全てがマシンガンで武装した怪しげな男たちで満たされていた。
「どこの者だ?」
レイさんが言ったが、男たちは何も答えない。
「ねぇ。ヒューマノイドを倒して来たんでしょ?
そのブルーシートに包まれているんでしょ?」
さくらが震える声で叫ぶように言った。
どうやら、こいつらの目的はセレンの残骸らしい。
「だったら?」
あすかが言った。その口調には、怯んだ様子がないばかりか、挑発的でさえある。この状況で男たちを挑発すれば、さくらが危険な目に遭うと言う事を理解しているのか? と文句を言いたくなる。
「この男たちは、それが欲しいらしいの。
渡してあげて!」
さくらが懇願するようにあすかに言った。
男たちの一人が、あすかが右手で引きずって来たセレンの残骸を受け取ろうと、手を伸ばした。
「ぐぁっ!」
あすかはその手をまた捩じ上げた。
「あすか!」
さくらを危険にさらすようなあすかの行動を制止しようとした俺の声とほぼ同時に、男たちがマシンガンの銃口をあすかに向けた。
チャッ!
「まだこの状況が分かっていないようだな」
さくらにのこめかみに銃口を向けている男が言った。
どうやら、こいつがこの男たちのリーダーらしい。
「状況と言えば、私のかわいい部下たちはどうした?」
レイさんが言った。
そこに関しては、嫌な予感がしている。閉じた空間である聖堂の中に微かに漂う硝煙の香りと、血の臭い。落ち着いて見ると、壁の所々に銃撃の痕がある。
「そんな事、分かり切っているだろう」
不敵な笑みを浮かべて、リーダーらしき男が言った。
殺された者がいるかどうかは分からないが、力で制圧したと言う事だけは確かなようだった。




