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写真に撮られたレーザー銃

 あすかとベルッチのソルジャーたちとの戦いの中に、なぜだか銃を構えて飛び込んで行ったさくらに向けて、ベルッチのソルジャーがマシンガンの銃口を向けた。

 火を噴く銃口。

 銃口の向きから言って、このままではさくらは無事では済まない。

 さくらを弾道から遠ざけようと、さくらに突進した。

 さくらにタックル! の瞬間、さくらが俺をかわし、俺は一人地面に倒れ込んだ。


「大丈夫?」


 倒れ込んだ俺を見下ろして、さくらが言った。


「無事だったのか?」


 地面に突っ伏したまま、さくらを見上げて言った時、爆音と熱風が俺を襲った。


「きゃあっ!」


 熱風はさくらにも襲い掛かり、さくらは顔を腕で覆った。

 何が起きたのか確認しようと、体を起こした時、ベルッチのソルジャーたちを乗せた車の一台、さっきさくらに向けて発砲したソルジャーたちが盾にしていた車が、爆発していた。

 その車を盾にして、あすかやさくらに銃口を向けていたソルジャーたちは爆発に巻き込まれ、数m車から離れたところで、炎に包まれ地面を転がりまわっている。


「何が起きたんだ?」


 あすかに目を向けた時、そこにはレーザー銃を抜き放っているあすかの姿を見た。

 対ヒューマノイド用の最終秘密兵器。モニカを倒す際に使ったはずだが、それを目にした者は存在せず、その存在すら誰も知ってはいなかった。


「なんで?」

「うーん。たぶんだけど、ほらっ!」


 さくらが対向車線の向こうに並ぶ建物を差した。


「なに?」


 さくらが何を差しているのか、俺には分からない。


「よく見て。うっすらとした黒い線」

「あれは?」


 細く黒い線が外壁に描かれている。しかも、注視してみると、所々から煙がかすかだが立ち上っているようにも見える。


「レーザー銃で焼け焦げてるんだよ」

「なんで、あんなところに?」


 あすかの位置から、その焼け焦げた壁までの軸線状に、ベルッチのソルジャーたちはいない。


「たぶんだけど、私を狙った銃弾をすべて、レーザー銃で熔解させたんじゃないかな?」

「はぁ?」


 ちょっと怒気が混じってしまった。


「そもそもだな。

 なんで、あんな無茶したんだ」

「銃を撃ってみたかったからかな?」


 なぜに疑問形。しかも、小首傾げて、可愛げを出して。


「いい加減にしてよね!」


 ベルッチのソルジャーたち全てを片付けたらしいあすかがやって来て、お怒り気味の口調で言った。


「だって、助けてくれるって信じてたんだもん。

 でも、すごいよね。

 飛んでいる銃弾を狙えるなんて」


 さくらがへらへらした顔で言っているが、もしそうだとしたら、とんでもない事だ。


「そうなのか?」

「地面に這いつくばってる男の子の質問に答える必要なんて、感じないんだけど」


 起き上がる事を忘れ、道路に転がったままだった。


「すまなかった」


 そう言って立ち上がった俺は、あすかが俺の問いに答えてくれることを期待していたが、彼女は何も言わず、ぷいと横を向いて俺から離れて行った。


 揺れる黒髪。ほっそりとして腕や脚にくびれた腰、華奢な体形にしか見えない後ろ姿。

 この少女のどこに、並外れたパワーが潜んでいるのか?

 そんな事を考えながら、あすかの後ろ姿を見つめる俺の前に、突然さくらがにっこりとした笑顔で飛び込んできた。


「今、あの子の事、まじまじと見てなかった?

 いやらしいんだからぁ」

「それは誤解だ」

「知らないんだからっ!」


 そう言うと、さくらまでがぷいっと横を向いて、俺から離れて行った。




 そんな日の次の日の事だった。

 またあすかの姿が「謎の兵器でベルッチファミリーを狩る少女」と言う見出しで、新聞に載った。

 銃よりも大きな口径のレーザー銃を手にしたあすか。

 そして、そんなにはっきりと写るはずもないレーザーの軌跡が、彼女が手にした武器の銃口の先から赤く、細い線で描き出されていて、その先にある建物の壁からは炎と煙が吹き上がっている。明らかな修正もので、誰にでもそれがレーザーだと思わせるに十分な仕上がりだ。


「これはどう言う事だ」


 レーザー銃の存在を暴きつつ、ベルッチファミリーを挑発し続ける記事。これを書いたのはガンビーナファミリーとつながりのあるセルジオであり、背後でうごめいているのはコルレオーネファミリーである。

 打倒ベルッチファミリーで結束し、今は仲間のはずのコルレオーネが、どうしてあすかのレーザー銃を写真付きで載せるのか?

 今後の戦いが不利になるじゃないか!

 俺と同じ思いなんだろう。レイさんが怒鳴った。


「まあ、いいじゃないですか。

 クラウディアたちとあすかをぶつけたいのでしょう」


 そう言ったのは、サングラスの神父だった。


「それは我々も望むところでもありますし、彼らも彼らなりの単独の行動を取っているのなら、我々も単独の行動を織り交ぜればいいのですよ」

「なるほど。

 確かにこれで、奴らもヒューマノイドをさっさと出してくるかも知れない。

とすれば、案外早く決着をつけられるな」


 サングラスの神父の言葉をレイさんが受けた。

 が、俺はかえって事態は悪くなるんじゃないかと思わずにいられなかった。


 今ベルッチファミリーを率いるオッタビアは馬鹿じゃない。

 相手が強いと分かれば、戦力を小出しにする訳もなく、全力で一気に叩き潰そうとするに違い無いのだ。


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