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渦巻く策謀

 ボスの死後、後継のボスを決められず、オッタビア、サンドロ、チェーザレの三人が連携することなく、お互いが支配域を個別に拡張しようとしていたベルッチファミリーのボス後継候補たち。お互いが連携する事を避けると言う策はうまくいき、サンドロのヒューマノイド モニカの破壊までは成功した。

 が、この状況を好ましく思っていない者がいた。

 この国最強のファミリー コネレオーネファミリーの力を削ぎたいコッポラファミリーだ。


 ヒューマノイド モニカを失い、ガンビーナファミリーの反攻に手を焼いている先代ボスの長男であるサンドロに、コッポラファミリーのボスは、裏で密かに先代ボスの弟であるオッタビアを後継と認めるよう働きかけた。劣勢に立たされていたサンドロは、その話に乗った。

 次男のチェーザレは、自身の支配域拡大を快調に進めてはいたが、長男であるサンドロがオッタビアのボス襲名を受け入れた以上、それを認めない訳にはいかない事を理解しており、ここにベルッチファミリーの後継ボスが決定された。


 元々、常に先代ボスをサポートし続け、器量を持った男だっただけに、オッタビアの動きは早かった。チェーザレとの戦いで、すでに力を失っていたカタラーニファミリーは緩衝地帯として利用するため、抗争を終結させ、サンドロを苦しめていたガンビーナには、チェーザレのヒューマノイド セレンを送り、ガンビーナファミリーのボスの首をとった。

 再び勢いを取り戻しそうなベルッチファミリーに対し、コミッションは共同して対応する事が決定され、ベルッチの支配域での抗争が激化しつつあった。



「状況を教えてもらって来た」


 そう言って、聖堂に姿を現われたのはレイさんだ。

 レイさんの目的、ベルッチファミリーの壊滅を図るため、レイさんはロベルトさんの妹の嫁ぎ先であるユリアーノファミリーに、コミッションの情報を聞き出しに行っていたのだった。


「まず、五大ファミリー全てとベルッチファミリーは抗争状態となってはいるが、明らかに被害を出しているのは、コルレオーネらしい。

 当然だが、コッポラとベルッチの戦いは、出来レースでしかない。

 ユリアーノファミリーとしては、利害が対立するコッポラファミリーがコルレオーネに取って代わられる事態はどうしても避けたいそうだ。

 そこでだ。ユリアーノファミリーは、コルレオーネを利用して、ベルッチファミリーを一気に片付ける策を立てた」


 レイさんがそれから語った策は、コルレオーネ主導下で多くのファミリーを巻き込むものだった。


 そして、それはこれ以上ベルッチとの戦いでソルジャーたちを失いたくないコルレオーネの手で、すぐに実行に移された。




「と言う訳で、あなたたちとの停戦を守ろうとしている我らに、コルレオーネが攻撃をかけて来ているのです。

 すでに我らには戦力と呼べるほどのものはなく、このままでは我々の支配域はコルレオーネのものとなってしまいます」


 ヘッドフォンから聞こえてくるのは、カタラーニファミリーからベルッチファミリーに救援要請に向かった者が密かに持つさくらの盗聴器が拾っている音声だ。


「コルレオーネが、攻めてきている事は知っている。

 ここにも書かれている」


 バサッ!


 オッタビアの声に続いて、何か紙の束が投げられたような音がした。

 ガンビーナと関りのある記者セルジオ。彼にコルレオーネがカタラーニとの間で、ベルッチ/コミッション間の代理戦争始まると言う記事を書かせている。きっと、その音はオッタビアがセルジオの記事が載った新聞を投げた音に違いない。実際の所、カタラーニはコルレオーネに通じ、この両ファミリーの戦いも出来レースなのだ。


「コルレオーネはわれらが敵でもある。

 チェーザレ、カタラーニを攻めてくるコルレオーネのソルジャーたちを葬ってくれないか」


 オッタビアの声だ。


「分かりました」


 オッタビアがボスとなった今、チェーザレも従順な態度だ。



「これで、カタラーニのところに出てくるのは、チェーザレのようだな」

「あすかちゃんを出すんでしょ?

 私も見に行きたいなぁ」


 さくらが言った。危険な事だと理解していないんじゃないかとしか思えない。


「危ないんだぞ」

「あすかちゃんの活躍、見たいんだもん」


 危機感無し。不満そうに口先を尖らせているさくらを見ていると、そうとしか思えない。


「来たいんなら、来たらいいんじゃない」


 あすかが加わって来た。


「でも、流れ弾が当たっても知んないよ」


 そう付け加えながら、手で銃の形を作り、その銃口の先をさくらに向けた。


「バァン!」


 あすかが引き金を引く素振りをした。あすかの態度のはただの冗談だと思うが、不穏当としか思えない。


「でも、守ってくれるんでしょ」


 さくらはさくらで、能天気な笑顔をあすかに向けている。

 この二人、何かお互い思うものがあるんじゃないのか?

 そんな事を感じずにいられなかった。




 そして、俺達はカタラーニの支配域にある繁華街を貫く通りの片隅にやって来た。

 ここは繁華街だけあって、いくつもの店舗が道に沿って並んではいるが、店の中に人の気配はない。コルレオーネの度重なる襲撃で、店舗のショーウインドウは破壊され、オーナーたちはすでに修復を諦めたのか、店内は照明も点いていなければ、商品も見られない。

 店舗が無ければ、この道をショッピングで歩く者たちもいない。それ以上に、コルレオーネの襲撃の巻き添えを避けようと、この道を使う事さえ避けているのだろう、通りにも人の姿は無かった。


 そんな人気のない通りに停車した車の中で、コルレオーネとベルッチのソルジャーたちの戦いが始まるのを俺たちは待っていた。

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