セーラ服姿のさくら
警官たちが撤退し、静けさを取り戻した夜。
警官たちが押し寄せて来た時、あすかたちは、やはりヒューマノイド開発室の跡に身を隠していたらしい。そして、ロレンツォ教会と通じるトンネルを封じる仕掛けを発動したのは、サングラスの神父だった。
トンネルを封鎖しているその間に、サングラスの神父とあすかは自分たちの身を隠すだけでなく、持ち帰ったモニカの処分も済ませていた。モニカの腕に仕込まれたレーザー銃は取り外され、レーザー銃に改造され、その他の部分はレーザーにて熔解していた。
もはや、モニカからヒューマノイドの技術を得る事はできやしない。
「しかし、レーザー銃が二つと言う事は、二丁拳銃のようだな」
素直に思った事を口にしながら、あすかの脚に目を向けた。
彼女はあそこにレーザー銃を隠し持っていた。とすると、あそこに二丁。
「えぇーっと、目つき、いやらしくない?」
そう言ったのは、さくらだ。俺の視線が、あすかのスカートの辺りに向けられている事に気づいたらしい。
「いや、レーザー銃が二丁だろ」
「あんな大きなもの、二つも脚に隠せる訳ないじゃない」
「やっぱり見たいの?」
さくらの真っ当な意見に、あすかがかぶせて来た。
「見たくない男はいないだろ。
言っておくが、見たいのはレーザー銃じゃないからな!
お前のスカートの中だ!」
前回と同じ轍は踏まない。はっきり、きっぱりと言った。
「私も見たい!」
なぜだか、さくらが俺の応援に回った。
「なんで、お前が?」
「だったら、自分のを見たらいいんじゃないの?
そのついでに、スカートの中を見せてやればいいじゃない」
「あ、ごめん。
私のスカートじゃあ、レーザー銃隠せないしぃ」
「あの子が見たいのはレーザー銃じゃないんだから、そんな心配は要らないと思うんだけど」
「あっ!
あすかちゃんの服、貸してくれるのなら」
「へぇー。あの子にセーラー服姿を見せたいんだぁ」
「まあ、そう言う事で」
そう言うとさくらは積極的にあすかの手を持って、奥に引っ込んで行った。そんなにセーラー服を着たかったのか? そんな疑問と、セーラー服姿のさくらを想像しながら、二人が戻って来るのを待つ。
最初に戻って来たのは、セーラー服姿のさくらだった。
「どうかな?」
身長差から、腕の裾も、スカートの丈もかなり長めだ。が、意外な事に、ダボッとした感がないのは、あすかの体が細身なんだろう。
「サイズ的にもっと無理があるかと思ったんだが」
「でしょ。
だってね、あすかちゃんの体形って、日本人っぽくないんだもん。
締まるところは締まっていて」
「あなたは、締まるところも締まってないけど、出る所も出ていないよね」
遅れてやってきたあすかが、冷たく言った。
どんな服装で出てくるのかと思ったら、あすかはやっぱりセーラ服姿だった。
「替えのセーラー服があるのなら、最初から、それをさくらに貸せばよかったんじゃないのか?」
「何がしたかったのか知らないけど、私の服を脱がせたかったみたい。
だって、私の事まじまじと見つめてたから」
どうやら、替えの服はさくらが拒否したらしい。どうせなら、着ている服より、洗濯済みの方がいいと思うのだが。
「あなたも、私の脱ぎたての生暖かい服、着てみたい?」
突然のあすかの発言に、ちょっとしたむらむらとした妄想がこみ上げてくる。
暖かさと甘い香りが残るあすかの服。着るよりも、頬ずりしてすりすりしたい。
「今、いやらしい事考えてなかった?」
さくらが突っ込んできた。
もしかして、こいつは俺の心の中にも盗聴器をしかけてるんじゃないかと思ってしまう。
「いやらしい事考えていたそいつに、スカートの中、見せてあげないの?」
「見せるなんて言ってないよぅ」
「いや、そう言う話の展開だったと思っているんだが」
「だからぁ。そう言うのは、結婚してから!」
「さくらって、いつの時代の人間だよ」
なんて、言い合っている最中に、新たな訪問者が現れた。
「男が一人、近づいてきます。
夜のため、人物の特定はできていませんが、武装はしていません」
来訪者に対する警告がセキュリティルームから発せられた。
特に危険な人物と言う風ではなかったが、俺たちは奥に引き下がり、ドアの隙間から様子をうかがっていると、聖堂のドアを開けて現れたのはスーツ姿の男だった。
「すみません」
丁寧な口調の男だったが、今日の今日だけに、スーツ姿の男には警戒感を抱かずにはいられなかった。




