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なぜに警察が?

 俺はロレンツォ教会に向かう車内で、ヒューマノイドとの戦いについて、あすかから少し情報を得た。

 ヒューマノイドの装甲は厚く、あのレーザー銃で撃ち抜くには、同じ場所を十秒ほど照射する必要があるらしい。動きが素早いヒューマノイドに対して、そんな事はほぼ不可能だ。だけど、装甲がほとんどなされていない場所があって、それが腹部と言う事だ。

 狙う場所は腹部。

 とすぐに思ったが、あすかに即否定された。


「そんな簡単に倒せるのなら、遠くからレーザー銃で狙えば済むじゃない」

「じゃあ、どうやって倒すんだ?」

「なんで、私があなたにそんな事を教えなきゃいけないのよ!」


 あすかは教える気はないらしい。が、今の話から言って、ヒューマノイドを倒すには、接近戦が必要と言う事だろう。


 俺があすかとヒューマノイドの話をしている内に、車はロレンツォ教会にたどり着いた。そして、ちょうど、その頃気を失っていたルチアーナが目を覚ました。


「ルチアーナ!」


 ロレンツォ教会のドアを開けて、カテリーナが飛び出して来た。セキュリティルームから、俺達が到着した連絡が入ったんだろう。


「お母さん!」


 見知らぬ俺たちと車に乗っている事に戸惑い、半分恐怖しながら、近づいてくる母親に助けを求めるように叫んだかと思うと、勝手にドアを開けて、飛び出して行った。


「無事だった?」

「お母さん」


 二人は俺達の車のすぐ前で抱き合っていたが、車から俺達が降りると、カテリーナは一旦、娘から離れ、俺達に感謝の言葉を述べた。



 二人が引き揚げると、あすかは俺が車の所まで運び、彼女がトランクに詰め込んだモニカを降ろし、ロレンツォ教会に運び込んだ。


「ヒューマノイドを一体、やっつけたんだね!」


 そう言って、最初に飛び出して来たのは、さくらだった。

 あすかはそんなさくらを無視して、モニカを引きずって行こうとしているが、さくらはさくらで、まじまじとモニカを観察している。

 俺と同じで、どうやって、ヒューマノイドを倒したのか知りたいのに違いない。


「ねぇ。これはどうするの?」


 モニカをどう処理するのかと言うさくらの問いかけに、やっぱりあすかは無視したままだ。そして、あの地下室に通じる階段に消えて行った。おそらく、ヒューマノイド開発室に運び込むのだろう。


 運び込んで何をするのか?

 興味があったが、彼女はすぐに戻って来た。ただ、置いて来た。そんな感じだ。


「あのヒューマノイドはどうするの?」


 戻って来たあすかにさくらが再びたずねた。よほど、ヒューマノイドに興味があるらしい。


「破壊するに決まってるでしょ」


 ようやく、あすかが冷たい口調で言った。そのあすかの返答に、さくらは不満げだが、ヒューマノイドの破壊を目的としている彼らの事を考えれば、それは当然予想できることだ。


 俺的には、それよりも別の事が気になってしかたなかった。

 それはあすかが平然としている事だ。あの店から、ルチアーナを担ぎ、モニカを引きずって来た時もそうだが、今も息を全く乱していない。

 ほんの少しの距離、モニカを引きずっただけで、俺は息が上がったと言うのにだ。

 もう一度、あすかの肢体に目を向けて、確かめる。どう見ても、そんな力があるとは思えやしない。とすれば、答えは一つ。彼女は人間じゃない。

 それを確かめたくて、近づいて行く。


「なに?」


 前に立った俺に、あすかが怪訝な顔つきで言った。

 ヒューマノイドの装甲に関してはよく分からないが、モニカの腕を掴んだ感触から言って、柔らかさはあったが、冷たいものだった。もし、あすかがヒューマノイドなら、冷たいはずだ。そして、きっと鼓動をうっていないに違いない。

 ぎゅっと一気にあすかを抱きしめた。

 柔らかな胸が押し付けられた感触が俺の胸に伝わって来た。

 そして、ぎょっとしたのは、その温かさだった。

 もしかして、人? いや、そんなはずはない。ヒューマノイドのはずだ。

 でなければ、女性にこんな事を突然してしまえば、大問題だ。

 自分が行っている事が問題な事でないと信じたくて、ヒューマノイド説に固執し、全身で彼女の鼓動を感じようとしてみた。正確には、鼓動が無い事を。


 ドクッ、ドクッ。

 触れ合っている俺の皮膚を通じて、俺のじゃない鼓動が伝わって来る。

 まずい! 人だったのか?

 そう思った時、あすかの声がした。


「一体全体、なんのつもりなの?

 私の事が好きなら、抱きつく前にそう言いなさいよ!」

「ご、ご、ごめん」


 慌ててあすかから離れて、頭を下げる。そんな事で、許してもらえないだろうが。


「好きって言わないところを見ると、ただの興味なの?」


 どう言い訳していいのか分からないでいるところに、今度はさくらの声がした。


「どうして、そんな事したの?

 私にはしてくれないじゃない!」

「いや、そもそも、させてくれないだろ?」

「さくらちゃんがさせてくれないから、好きでもない、私に欲望をぶつけて来たって訳?」


 さくらが入って来た事で、話がややこしくなってきた。


「確かに、胸無いよね。その子」


 ややこしくなっていたところに、あすかがさらに問題発言をすると、むっとした表情で、さくらが自分の胸を手で覆い隠すようにしながら、言った。


「知らないんだから!」


 さくらは、俺達に背を向け、すたすたと聖堂の扉に向かうと、外に飛び出して行った。

 外は危険で、追いかけたい。だが、失礼な事をしたあすかとの話の決着をつけないで行く訳にも行かない。


「あの子の事、追いかけなくていいの?

 私の事は好きではないんでしょ?」

「好きとか嫌いとかじゃなくて」

「胸だけが好きなの?」

「なんでそうなるんだよ!」


 返す言葉を見つけられないでいる内に、さくらは戻って来た。


「まだイチャイチャしてるんだ」


 そして、まだ向かい合って話を続けている俺たちに、さくらはふくれっ面で、そう言い捨てると奥に向かって行った。危険な外から戻って来た事は安心だ。

 なんて思っている内に、セキュリティルームから連絡が入った。


「パトカーが続々と集結中です」


 なんで、警察が?

 そんなことを思っている内に、あすかは奥に消えていた。

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